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トニ・モリスン『「他者」の起源』を読んだ

人は、差別主義者に生まれるのではなく、差別主義者になるのである。

アメリカの黒人女性作家、トニ•モリスンの言葉※1である。

元ネタはもちろんボーヴォワールの
「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」
である。

さて、この世にオギャーと生まれたその時から、「ファッキンコリアン ゴーアウト」などと言ったり思ったりしている人は、いない。

ではなぜ、人は差別主義者になるのか。


私がこの本を買った当時、帯には、 
<人はなぜ差別をやめられないのか>
とあった。


この公演でのトニ・モリスンによる話だと、人は、自分が誇れるようなイメージの自分を渇望している。

認識してはいないが、すでに知っている自分自身から自分を守りたいとすら、願っている。

そこで、ただ無作為に現れた人を、「自分の変型」とせず、「異なる種」として、認めたくない自分から逃れようとする。
その無作為に現れ記憶に残った人が、「他者」である。

ということらしい。

       

                           🔸


        

※ここから私の感想


私たちは、肌の色や性など、判りやすい材料で、「他者」を作り上げてきた。

私たちはしょっちゅう、侮蔑、あるいは的外れな敬意で、自分勝手な鏡に「他者」を写し、支配、管理したがる。

行き過ぎれば、「他者」への身体的あるいは精神的な暴力となる。

そうやって守られた自己愛や自尊心は、モロく危うく、虐待を続けなければ維持できず、終わりがない。

だから人は差別をやめられない。


私は彼女の著作を『青い眼がほしい』と『ビラウド』の2作品読んだことがある。

トニ・モリスンは一貫して小説の中で
差別という暴力との向き合い方を探り、彼女の筆致は白人の暴力を告発するというよりは、差別のある世の中で、どうやって自分を守るのか、の方に重点を置いているように思う。


おしまい



『「他者」の起源   』著者 トニ・モリスン
訳者 荒 このみ   2019年   集英社








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