シン・仮面ライダーの衣装描写について考えた※ネタバレ
※ネタバレしかない
※記憶あやふや
※あらすじ説明・感想ほぼなし
ショッカーは、情報漏洩防止のため死ぬと泡となって消える。
何も後悔していないと真っ直ぐに一文字を見つめる本郷の眼差しは、何度見てもグッとくる。
本郷の赤いマフラーも、泡になってこの世界から消えてしまった。
しかしここでひとつ気になったことがある。
ハチオーグが死んだとき、彼女の羽織はその場に残っていた。
消えた赤いマフラーと、消えなかったハチオーグの羽織の違いはいったいどこにあるのか。
彼女の羽織には、ハチオーグのマークが背中に印されている。
ハチオーグの幸せは、人々を従属させること。自分の幸せと相容れず決裂したルリ子を、泣かせること。
しかし彼女は最期に「ルリルリに殺してほしかったのに」と残した。
これはハチオーグとしての言葉ではない。
彼女は「ヒロミ」として死んでいったのだ。
ヒロミにとって、ハチオーグのマークがついた羽織はただの身に纏う布にしか過ぎず、自分と一体のものではない。
では赤いマフラーにはどんな意味があるのか。
ルリ子が本郷に巻くときに言った台詞。赤は正義の印。(台詞をそのまま書き写したいけれど正確なところが思い出せないあのシーン父親が少し笑うところも含めて好きなんだが…)
人々の幸せのため、自分を犠牲にして戦い抜いた本郷は、まさに正義のヒーローだった。
彼は正義の味方「仮面ライダー」として最期を迎えたのだ。
正義の象徴であり、仮面ライダーには欠かせない赤いマフラー。それは本郷猛と一体といえるもの。
だから本郷と共に消えていった。
衣装について、イチローとルリ子についても気になることがあった。
ふたりが精神世界で語るシーンが3回ある。
1度目は、イチローがチョウオーグとして羽化した直後。(イチローのみ登場)
2度目は、イチローとルリ子が対面し、ハビタット世界について意見を争わせるとき。
3度目は、イチローが死の間際、仮面ライダー1号のマスクに残っていたルリ子の魂と語り合うとき。
このうち3度目以外は、イチローはライダースーツに白いマフラー。ルリ子は白衣姿だ。
イチロー登場の時点で羽化しているのに、何故過去の格好なのか。
この服は、ふたりが一緒に写っている写真のものと同じだ。
まだルリ子がショッカーを抜ける前。ふたり一緒にいたときのもの。
イチローは、ハビタット世界について意見を変えてしまったルリ子に戻ってほしいと思い、ルリ子は兄に変わってほしいと願っている。
あのときから分岐してしまったけれど、どうにかまた同じ道を歩みたい。一緒にいたあの頃に戻りたい。その思いが、精神世界の衣服にも反映されているのではないだろうか。
イチローは仮面ライダーと戦い、ルリ子の「今」の思いを受け入れる。
互いに理解し合えたために、もう過去に戻りたいとの叶わない願いを抱く必要はない。
だからふたりは、ありのままの、現在の姿になっているのではないかと考える。
衣装といった細かい点にも、登場人物の心の機微が描かれているように思う。
数度見てようやく「この描写の意味ってこういうことかな」と考えられる余裕が出てきた。見返せばまた新たな発見がありそうだ。
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