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読書録

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読んだ本の感想などです。
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#一度は行きたいあの場所

読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房) 書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。 本書はそんな一冊だ。 結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。 人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。 野

祈りと社会的処方箋

先日、Instagramに投稿した通りアート・ミックス・ジャパン2024を見るべく新潟市民芸術文化会館、りゅーとぴあを訪ねた。 僕は法相宗大本山 薬師寺の「修二会花会式」を見たくて事前にチケットを購入していた。 花会式とは、意識・無意識のうちに犯している過ちを僧侶が国民に代わって懺悔し、国家繁栄・万民豊楽・天下泰平・風雨順次・五穀豊穣・病気平癒を薬師三尊様に祈願する、8世紀から続く日本の重要な法会である。 御本尊に10種類の造花を供えることから花会式と呼ばれる。 開演

秘密の部屋

タイトルから某ファンタジー超大作をイメージしてしまいますが、素敵なノンフィクションです。 これは北海道大学の卒業生でも知らない物語である。 農学部の農業経済学図書室で勉強していた僕は、司書のYさんから不思議な話を聞いた。 この図書室には戦時中に大本営として活用するために作られた秘密の部屋につながる扉があります。 竹内さんは新潟のお土産を下さったり、いつもよくしてくれるので特別にその扉を教えますね~。 とYさんは書庫の中を案内してくれた。 書庫の奥、第三層を進むと。