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読書録

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2024年2月の記事一覧

読書録 最大のライバルは自分自身

月刊武道2023年12月号 巻頭リレーエッセイ203 坂東眞理子「己に克つ」 武道もオリンピックや国体の種目に取り入れられているので、勝負は重要である。勝つことを目指して練習を重ね、体を鍛える。勝つために手段を択ばず何でもありではなく、ルールにのっとり、チームのメンバーと協力して堂々と戦う。それでも力及ばず敗れることもあり、人生を知る良い経験になる。 多くのスポーツもトップに近づくと技や体を鍛えるだけでなく、集中力などの精神力が重要になってくる。中でも武道は他のスポーツに

スキナー「動機、意図およびテクストの解釈」の再構成レポート

経済学部一年 竹内 康司  解釈に際して著者の動機や意図を考慮すべきではないと主張する批評家は、「動機」と「意図」を知る目的について混同した議論をしているとスキナーは指摘した。そこで、スキナーは、まず意図と動機を知る目的についてそれぞれ区別して議論を進める。  著者の動機について知ることは、特定の言語行為を促すきっかけを知ることである。著者の動機は作品の出現に先行し、作品との結びつきは偶然的なものと見なされる。したがって、「動機」はテクストとは無関係であることを彼は認めて

社会学レポート課題

【論文タイトル】 田中 善紀,2010,「グローバリゼーションへの対応:シンガポールにおける外国人労働者問題と市民社会(西口清勝教授退任記念論文集)」『立命館經濟学』58(5/6), 992-1008 【要約】 シンガポールのように人口が少なく、労働資源が重要な国にとっては、外国人労働者の導入は重要である。実際、外国人労働者は労働人口の30.3%を占め、シンガポール経済は著しく外国人労働者に依存している。また政府の外国人労働者(移住労働者)政策はシンガポール政府のグローバリ

暴君殺しについての一考察

経済学部一年 竹内 康司 1人の偉大な政治指導者を殺害する個人的暴力は、いかにして正当化されるのか。この問題を考えるにあたって、参考資料を踏まえ、二つの側面からアプローチする。一つは古代ローマの著作物における「暴君誅殺」の合法性と、もう一つは「偉大な指導者」が「暴君」となりうる経緯についてだ。 まず、前者では、古代ギリシャ、ローマの著作家たちは、「暴君誅殺」は善きこと、「国王暗殺」は悪しきこと、と見なしていた。その背景には個人の権力濫用を抑制する目的がある。これは自由主義者

思想史とは何か。学期末レポート

(1)リチャード・ローティの議論を踏まえて、丸山眞男「思想史の考え方について―類型・範囲・対象―」を検討する。 リチャード・ローティは「哲学史」の記述法として、合理的再構成・歴史的再構成・精神史・学説史の4つのジャンルを提示している。 大雑把に捉えれば、ローティの説く合理的再構成は、現代に、歴史的再構成は過去に軸足を置くものだ。「哲学史」を記述する際、合理的再構成の支持者は、「過去の人間が論じた諸問題に関する今日の最良の仕事」に照会して、過去の偉大な哲学者を見ることを強調す

秘密の部屋

タイトルから某ファンタジー超大作をイメージしてしまいますが、素敵なノンフィクションです。 これは北海道大学の卒業生でも知らない物語である。 農学部の農業経済学図書室で勉強していた僕は、司書のYさんから不思議な話を聞いた。 この図書室には戦時中に大本営として活用するために作られた秘密の部屋につながる扉があります。 竹内さんは新潟のお土産を下さったり、いつもよくしてくれるので特別にその扉を教えますね~。 とYさんは書庫の中を案内してくれた。 書庫の奥、第三層を進むと。