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【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの演出家:日澤雄介さんに聞いてみた(全2回)その2

【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの演出家:日澤雄介さんに聞いてみた(全2回)その2

【山下】あっ、そうですね。あのサラエヴォのやつか。

【日澤】そうですね。

【山下】これは第一次世界大戦が始まる『サラエヴォの黒い手』2014年、駅前劇場。

【日澤】そうです、これあれですね。その前に駅前で『治天ノ君』って。

【山下】あっ、そうだ、失礼しました、『治天ノ君』を言うのを忘れました。

【日澤】あれでね、賞をいただいてて。

【山下】そうだ、これは素晴らしかったですね。

【日澤】ありがとうございます。

【山下】松本紀保さん。

【日澤】そうだねえ、良かったですね。

【山下】そうですよね。

【日澤】でもそれも、たまたまうちの芝居を見に来ていただけていて。で、古川君が『治天ノ君』っていうこの、皇室というか、天皇の話をやるっていう時に、皇后さん誰だろうなということになって、これ紀保さんだとなって。

【山下】いや、無茶苦茶はまり役だと思う。
あのスッとした立ち姿と、発声。あの凛とした感じは、いやー本当に大正天皇の皇后さん、こんな人だったんじゃないかっていうふうに思わせてくれた。

【日澤】素晴らしいですよね。あれもうご自身のなんだろう、もう、血なのかなんなのか、もう、演出とかではなく、あれはもう本当に。

【山下】そうなんですよね。

【日澤】稽古の初日からスッといらっしゃって。

【山下】いやあ、素晴らしかったですね。

【日澤】あれは凄かったですね。

【山下】駅前劇場、私も観に行ったんですけど。もう濃密じゃないですか、狭いから。もうすぐそこで、紀保さんとかが座られて、西尾さんが大正天皇だったかな。だんだんちょっと体調が悪くなるっていうんでね、時間軸で描かれてて。まあこの『治天ノ君』はもう本当に世間的に大きな評価をされた。

【日澤】あーもうこれは、いやあ一番じゃない? やっぱりうちの劇団では一番、まあ転機というか、本当に一番見ていただけてますし、まあ3回再演してますし。世に出るきっかけにもなった作品でもありますね。

【山下】毎回でも発見があって面白いです『治天ノ君』。

【日澤】何回も再演やっているんですけれども、やっぱりその初演のあの駅前劇場の感じを知ってる方は。

【山下】あれは濃密ですから。

【日澤】あれがっていうのは言っていただけるんですけれども。あの濃密さを大きい劇場で出せたら、僕はもうどこ行っても仕事できるようになるんだろうなって思いますね。

【山下】あれですか。日澤さんはあれ演出する時に、どういうふうにしてやってらっしゃるんですか。あの演出を付ける時。

【日澤】でも僕、結構みんなの力を借りる派の演出なので、もう自分の考えはこうだからこうしてくれっていうよりは、こういう感じにしたいんだけど、ちょっと取り合えず動いてみてもらっていいですかとか、照明さんとか音響さんに、ここが上手くいかないんだけど、とか聞いたりだとかはしますね。

【山下】なるほど。じゃあ割とそこはスタッフとか俳優さんとか対話を重ねながら作っていく感じ。

【日澤】それはそうですね。まあ俳優さんもそうですし、逆に言うとそんなに決め込まない方が、いい作品になるのかなと思ってるというか。自分の頭よりは、たくさんの頭、勿論決めるところは決めるんですけれども。
で、出てきたものに対してどうこう選択していくかみたいな。

【山下】まあそこね、選ぶのがね、演出家の仕事ですもんね。

【日澤】そうですね。そこら辺考えてますね。

【山下】いや、でも僕、演出家の人偉いなと思うのは、選ぶのがすごい大変じゃないですか。

【日澤】そうですね、それは。

【山下】プロデューサーやってるのは、選ぶのがすごく苦手だからっていう。

【日澤】あー、なるほどね。

【山下】どっちでもいいよー、どっちがいいって聞くんですだから。
こっちが絶対いいっていうふうに思えないんですね、自分の中で。

【日澤】でもそれは僕も演出をやっていて、たとえばですけど、AプランBプランがあって、どちらでもいいっていうか、どちらも同じくらい素晴らしかったら、俳優さんにやり心地どっちって聞きますね。やり心地としてどっちがいいですかっていうことを聞きますね。

【山下】そしたらやっぱりやり心地がいい方を選択するみたいな。

【日澤】そうですね。うーん。

【山下】なるほど。

【日澤】もちろん、やり心地がいいけど、こっちの方が絶対いいと思ったら、ごめん、ちょっと頑張ってこっちやってとは言うんですけれども。

【山下】なるほど。多分、僕この2013年かな、からずっと9年ぐらい、ずっと見続けさせていただいてるんですが、日澤さんの演出のトーンが、どんどん研ぎ澄まされてる感じがしてるんですけど。

【日澤】あっ、そうですか。ありがとうございます。

【山下】自分でなんかそういうの、あります?

【日澤】あーでも本当に、我流も我流で始めた演出なので、僕、だからその俳優の時に演出をしていただいた演出家さん何人かのやり方とか、考え方とか、稽古場での言葉の選
択の仕方とかっていうのを参考にして演出を始めているので。

【山下】あーなるほど。

【日澤】本当にわからないし、なんか俳優目線で演出をする方が多かったんですね。それがやっぱり徐々にこう、回数を重ねていくうちに、外からの視点というか俳優のやりやすさだけじゃなくて、そのバランスだとか、音響照明の効果であるとか、感情の流し方だとかっていうところに言及してきてるってのは、間違いなくあるとは思うので。まあ、慣れてきたといいますか。なんか武器が増えてきたのかなとは思いますね。

【山下】そうですね、だからそこが上手く研ぎ澄まされていったのかもしれないですね。

【日澤】そうであればいいなと思いますね。

【山下】あと俳優さんもやっぱ長くやってるから、どんどんそこもあるんじゃないですか。チョコレートケーキの俳優さん。

【日澤】そうですね、やっぱり劇団員はじめ、常連客さんもやっぱり共通の言語がありますから。古川君の本ってやっぱり、なんていうんですかね、楽しく、楽しいだけでやれる本ではないし、すごく言葉も難しいし、世界観も難しいので、そこをやっぱり体現していただくにはやっぱり時間は必要だよなとは思いますね。

【山下】あのー、ちょっと飛びますけど、この28回公演の『60’sエレジー』これ、またサンモールスタジオですけど、これも古川・日澤コンビですよね。

【日澤】そうですね、これも。

【山下】で、実はこれって、そのハードのね、社会的なものとまた全然違う話じゃないですか。

【日澤】そうですねえ。

【山下】だから古川さんってその二つあるのかなと思っていて。これは古川さんに聞こうと思うんですが、割と社会的にすごい資料を調べてハードにやるものと、60年代とか昭和のなんか、あったかい時の、映画でいうと『ALWAYS三丁目の夕日』的な、なんか日本のね、家族制度が普通に活きていた頃の、あったかく描こうというか、なんか全然違うものだなっていうふうに認識してるんですよ。

【日澤】なるほど、これでも本当に三丁目の夕日の暗い版だなみたいな感じでは作ったみたいなんですよ。

【山下】蚊帳の、蚊帳の工場のなんですよね

【日澤】そうです、そうです。
確か、古川君が、そのこの当時に、オリンピックがね、開催が決定したんですよ。東京五輪の。

【山下】あー、それでか。

【日澤】それに着想得て、高度経済成長、オリンピック、ただ確かエレジーの頃もオリンピックの。

【山下】1964年がそうですよね。

【日澤】そう、あの三宅、三宅とか言ってたんで。確かその時に、みんなはこう、好景気でいろいろと発展していく中で、廃れていく産業もあったはずだと。

【山下】まあ、蚊帳屋はまさに。

【日澤】蚊帳屋は。で、そこをなんかこの光と影であれば、影の部分をちょっと描き出したいという視点で、確か書いた本だとは思いますね。

【山下】なるほど、ただですね、そのなんか読後感が、こう、ほわっとしてる感じなんですけど、それは何か、演出で狙ったんですか?
これ、全然違う感じになってます。

【日澤】あー、でもどうだろう。

【山下】『治天ノ君』のシャープな感じと、『60’sエレジー』のなんかほんわりしたね、なんかあったかいなーっていう、暗いけどあったかいのはあって。そこはなんか、この作品によって……。

【日澤】そうねえ。でも僕『エレジー』の最後はちょっとエンディングに付け足しかなんかして、その感じは出して渡したんですよね。

【山下】やっぱり。成功してますよ。

【日澤】それがどうなのかっていうのが、あれなんですけれども。これ最後ちょっと、やさしく終わりたいなっていうのは、あったはあったんですね。で、『治天ノ君』はやっぱりこれは、やさしく終わっちゃだめでしょっていうのは。

【山下】そうですね、まあ壮絶な生き様を生きた男の話でもありますからね。

【日澤】ですので、『エレジー』はだからそういう意味ではちょっと、ちょっと風変わりというか、これも僕、好きな作品なんですけれども。

【山下】いや、面白い。いや僕ね、これはだからこの二つの流れがなんか面白いなと思っていて。

【日澤】だから古川君の中に、果たしてその二つの流れという認識があるかどうか、ちょっとわからないんですけど。

【山下】じゃ、これ後で。

【日澤】そうですね。

【山下】ただ演出はその空気の、少し違うものだから、やっぱり少し変えていらっしゃる。

【日澤】あの『エレジー』に関してはやっぱ時代感、っていうんですかね

【山下】それはやっぱり意識されましたか。60年代の。

【日澤】んー、なんか、頑固親父じゃないけども、なんか……。

【山下】『寺内貫太郎一家』的な。

【日澤】んーなんかげんこつがあってみたいな。そういう印象はありましたね。

【山下】なるほどねえ。いやあ、なんかこれはねえ、今日来てる、谷さんと一緒に見に行って、近くに「家屋」(かや)っていう居酒屋があるんですね。そこで飲んでて「良かったねー」って、「蚊帳」の話をずっとしてたんです。

【日澤】ありがとうございます。

【山下】もうすごく覚えてますけど。ここはだから『治天』とか『熱狂』とかとは違う、また『エレジー』は。

【日澤】あんまりこうスーツを着ない作品が少ないんですけど、これ『エレジー』はほとんどスーツ着ないです。

【山下】そうですよね、あのもう家のちゃぶ台みたいなね、ところみたいな話ですよね

【日澤】そうですね。

【山下】それはすごく、覚えてます。で、この後ですね、ちょっと私もすごく本をたくさん読んだんですけど。この『ドキュメンタリー』から『遺産』、いわゆる石井731部隊、の話をこう楽園でやって、隅田パークサイドでやりました。で僕も森村誠一の本を初めてちゃんと読んだんですけど。で、結構読みました石井731部隊関連本を。で、これなんでこのやつをやろうというふうに、これもあれですか、決めたんですか? そしてなんで分けようとしたんですか? これ『ドキュメンタリー』と。

【日澤】これは、どうだったかな。まああの、ここら辺の時期は、はじめの方は企画会議というか、台本会議みたいなのでどうしようかみたいなのあったんですけども、もうここら辺のちょっと前あたりから、もう古川君がこういうのを書きたい、こういうのどうだろうかっていうのの基本提示が。

【山下】じゃテーマが事前に、基本はあったと。

【日澤】なので、これは731部隊に手を出してみようと思うっていうのは、古川君からの発信だったと思います。で、連作にしたのは……。

【山下】これは、すごい面白いなと思った。こんな試みは。

【日澤】なんかこうお客さんをどういうふうにこう、なんだろうな、誘導していくかというか、動員をこうやっていくかという時に、劇団員だけの公演をやろうよって話があったんですよ。で、もうこれドキュメンタリーって方が、ミドリ十字の話なんですけれども、これも古川君がやっぱり持ってきていて、だったら連作にして、『遺産』の公演にお客さんを繋げていけるような1年のこう、番組というか、流れを作ってみたらどうだろうかみたいな話になったのか、古川君が言ったのか。
で、だったらそのミドリ十字があって、731があるから、その流れで行けるんじゃないっていうのの、連作だったと思います。

【山下】でも小劇場楽園ってすごい小さい小屋じゃないですか。で隅田パークスタジオってでかい倉庫、そこの差があるっていうんですけど、そこはやっぱり演出として、こういうふうにやろうとか、出てる俳優さんも同じじゃないですか。

【日澤】そうですね、特に隅田パークスタジオの方は、あんまりその、なんだろう、あれ倉庫なので、あの躯体むき出しでいきたいなって言うのはもともとあって。まあ731ですし、そういう感じのちょっと無機質な感じがいいなっていうのと、あと、楽園なので、久々にそれがやってみたかったってのは、その近密な、そのお客さんとすごく近い……。

【山下】無茶苦茶近いですね、あそこは、ほんとに。

【日澤】昔というか、その熱気をどう伝えていくみたいなところを頑張って、だからすごく『遺産』の方はミザンス、ワイドを使ったミザンスだとか、転換の速さだとか、シーンの移り変わりだとかっていうのをすごく大切にして。
(※ミザンスとは、演出全般を指す言葉だが、日本では特に「舞台上における役者の立ち位置」をあらわす。 もともとはフランス語で、映画批評用語として輸入されて、この20年くらいで「舞台用語」として当たり前に使われるようになった。)
『ドキュメンタリー』は一幕ものなので、どう会話を聞かせていく、見せていくか、人間関係を見せていくかみたいな、で、細かいところでどう影響し合えるかみたいなのを、すごく頑張った記憶があります。

【山下】なるほど。この同じ731部隊を扱ったやつで、パラドックス定数の野木萌葱
さんが、なんでしたっけ。

【日澤】面白かったです。

【山下】あっ、ご覧になりました? それで私と谷さんもですね、あのシアター風姿花伝とか見に行ったりして。

【日澤】僕も、風姿花伝行ってます。

【山下】だからその頃我々は、731部隊がブームみたいになってて、どういう部隊
だったんだろうってね。で、まあそこからミドリ十字にいきますけれども、野木さんも書かれていましたけど。なんかそこが、すごい繋がってて面白かったんですよ、その頃。

【日澤】そうですね、僕もこれ演出する前に野木さんの舞台拝見してて、ま、野木さんのその配役というかが、まあ面白いと、僕には絶対できないような。キャスティングですね、俳優というかキャスティングですね。あの、アヒルなんちゃらの、えー誰だ、名前が出てこない、あの作演出家さんが出てらっしゃって、あの人の狂気っぷりというか、たまらなかったですね。
あの感じはね、なんか逆にこう、できる俳優さんだと多分出せなくて。
(※ 多分 あひるなんちゃらの「関村 俊介」さんだと思われる。)

【山下】あー、なるほど。そこはやっぱそういうキャスティングを。

【日澤】いやあ、あれはキャスティングだと思います。

【山下】日澤さんもあれですか、やっぱその客演の人とかを選ぶ時に、あのやっぱりその作品でどういうキャスティングを、キャスティングが上手くいくと、大抵演出家の人は、俺あんまりやんなくても、何にもやんなくても大丈夫だからと、よくおっしゃるんですけど、本当なんですか?

【日澤】えーとね、間違いじゃないかもしれないですね。

【山下】間違いじゃない。

【日澤】あのうちの場合、劇団公演の場合は、10人のキャスティングであれば、えーと、たとえば『治天ノ君』だったら、9人かな、8人だったかな? 1人が女性で、あとが男性。

【山下】あーそうですね。

【日澤】だから女性はもう決まっちゃうんですけど、男性の配役って、キャスティングしてから読み合わせで決めさせてもらってるんですよ。

【山下】そしたら役は、あ、こっちがいいかな? と。

【日澤】そうですそうです。だからその、この俳優さんは、そのこの役に合うからで呼ぶんじゃなくて、この俳優さんは魅力的だと。

【山下】あっ、なるほど。魅力的だというところが。

【日澤】そう、そこで。この俳優さんと一緒にやりたいと。

【山下】あー、いいですね。

【日澤】古川君が、この俳優さん呼びたいとか、劇団員の俳優さんたちがこの人と共演したいとか、そういう感じで呼ぶんですね。

【山下】なるほどー。

【日澤】呼んで、集まったところから読み合わせを。

【山下】じゃあ、本読みしてみようみたいな

【日澤】そうそうそう。で、キャスティングをするので、そういう意味ではね、すごく有難い時間使わせてもらっています。

【山下】じゃあ、俳優さん呼ぶ時、「俺、何するんですか?」っていう感じで最初はやるわけですか?

【日澤】そうですね。だからあの、お声掛けする時に、配役に関しては読み合わせを重ねてからしますので、今は決まっておりませんと。

【山下】なるほど、そこは正直に。

【日澤】そういうことで呼ぶんじゃなくて、あなたが魅力的だから、一緒にやりたいから出ていただくんですっていう感じの声のかけ方ですね。

【山下】いいですね、そういうふうにして口説くわけですね。なるほど、なるほど。でもすごく面白かった、そういう話も。

【日澤】あまりね、そういうことを外では出来ないので、劇団くらいはね。

【山下】いやいや。でも、あとで劇団のね、運営の話は古川さんと谷さん入れて4人でしたいと思いますけど。やっぱり20年以上、続けてきたっていうのはなんか思うところありますか?

【日澤】あの、そうですね、ありますよ。やっぱさすがに。

【山下】20年ですからね。

【日澤】半分くらい劇団やってますからね、人生の。

【山下】人生の、そうですよね、ほんとですね。

【日澤】なので、僕……その、古川君が本を書き出して、こういうふうに皆に観てもらえるようになったんですけれども、そうなる前に僕、多分この劇団が無くなったら俳優辞めるかもなとは思ってたんです。

【山下】あーなるほど。

【日澤】だから逆に言うと、この劇団の、たとえば古川君とか岡本君とかがみんな辞めてって、一人になるまでは劇団続けようと。誰かが一緒にいるうちはやっていこうと思ってはいたので、やっぱり思い入れは大きいですね。

【山下】でもね、それである時期、パンとブレイクして、みんなが観るようになって、ちょっとコロナで大変な時もありますけどまだ、高いレベルのやつを毎回見せていただいていて本当に、すごく楽しみなんですけど。
今後、また次回公演の話は後でお伝えしますけれど、演出家として主宰としてですね、なんかこういうことを考えてる、こういうことをしたいとかっていう日澤さんの立場からあれば。

【日澤】あー、劇団としてですよね。

【山下】日澤さん個人でもいいですよ。演出家としてでも。

【日澤】なるほど、なるほど。個人としてはやっぱりその、いろいろな作品をやれる演出家になりたいというか、ならなきゃだめなんだろうな。

【山下】それはいろんな作品ってのは、全然トーンが違うものとかっていうことですか。

【日澤】そうですね、やっぱりその、いわゆる古川作品ってすごく硬質で、社会的でっていうのがありますけれども。

【山下】それはありますよね。

【日澤】そこをそういうものだけじゃないものにもチャレンジしていきたいし。

【山下】日澤さん、でも外部演出、結構されていますよね。

【日澤】まあ、してはいるんですけれど、やっぱりちょっとその要素を求められたりはするので。

【山下】ああ、なるほど。

【日澤】まあ、めちゃめちゃなコメディーがやりたいですとは思わないけれども、もし仕事が来た時には、引かずに受けていきたいとおもったりするんですけど。
団体としては、そのやっぱり、古川君の作品をいかにお客さんに届けるか。コロナなので今は、まあその映像配信であったりだとか、そのキャパシティの問題であったりだとかっていうところで、苦労はするんですけれども、逆にそれで得たノウハウであったりとか、経験もありますので、それを使ってだからその、映像配信しなくてもいいような状態になったら、映像配信を止めるではなくて、なんか付加価値が付いた映像配信。

【山下】ハイブリッドのやつですよね

【日澤】んー、というのを模索していきたい。で、見つからなかったらやめちゃうかもしんないですけど。でも地方のお客様とか、ここの劇場に来られないお客様とかが、やっぱり配信はすごく喜んでくれているので。

【山下】それはチャンスがね、見れるチャンスがありますよね。

【日澤】そう考えると、やっぱり映像の力ってすごいな、勿論舞台で、お芝居でっていう力も別の意味ですごい強いから、そっちはなくしたくないんだけれども、別のね、舞台の良さではない映像の良さを舞台作品で追及できるなら、それはチャレンジしていきたいなとは思いますね。

【山下】いいですね。あのうちも映像制作会社なのでとても勇気をもらえます。
実はですね、このPodcastのプロジェクトもコロナがあったから始まったんだろうと思っています。

【日澤】なるほど

【山下】夜にみんなが集まって、なんかやらない?みたいな。で、ポッドキャストやりたいって人がいて、それでじゃあほんとにやる?続ける?って、さっき日澤さんがね、俺がいる限り続けるって、そういう子がいたので始めたんです。

【日澤】なるほどねえ。

【山下】それでちゃんと続けていくということで、予算も会社から出るようになって、それでじゃあ山下もなんかやらないとっていうんで、じゃ僕、小劇場ぐらいしかできないけどって。でもそれだったら続けられるかもっていうので、始めさせてもらってっていうのあります。

【日澤】なるほど。やっぱね、コロナってすごく影響ありましたねー。
【山下】そう本当にいろんなことが。だからこれも配信用のスイッチャーなんですけど、こういうのも使うようになって、みたいなのもあって。

【日澤】劇団会議もそれまではやっぱりみんな顔付き合わせてやってたのが、もう今zoomですもんね。

【山下】だからそれのオンラインとオフラインのいいところをね、やっぱり繋ぎながら、オンラインの演劇でもお客さん入ってるやつはね、見てて面白いですよ。無観客だとね、なんとなくね、なんか違うなって、毎回ファンとして思うんですよね。

【日澤】なるほどね、そうか。うち無観客なんですよ。

【山下】あっ、そうか。僕は無観客のやつはだから見てないんですよね、だから。

【日澤】あっ、なるほど。うちは無観客にして、その客席の一番いいところにカメラ置いて、5カメぐらい入れて。

【山下】あっ、じゃあ今度ちょっと拝見します。

【日澤】あっ、是非是非。

【山下】あのいつも僕はチョコレートケーキ、もう劇場に行くもんだと決めつけてるので、それがだめなのかもしれない。

【日澤】そのスタンダード版の5カメ使ったやつと、あとGoProを頭に付けて俳優目線でその俳優目線の映像と、この俯瞰の映像を編集してやった、アクターカメラバージョンと2バージョン、今流してるんですよ。

【山下】それなんか、東北新社の映像技術を超えてるような。(笑)
凝ってますね、新しいじゃないですか。

【日澤】いやいや、そんなことない、そんなことはない。
いや、チラシのデザイナーさんがそういうのどうだい? って提案してくれて。あっ、それは面白い、見たことないなって。

【山下】それ見たことないですね。

【日澤】俳優さんの目線で舞台上にいるような、だからちょっとなんか、横の燈体とか、絶対見えないところが映り込んだりとか。

【山下】それ、いいですね。

【日澤】これがなかなか大変で、そのいわゆる小道具ってあるじゃないですか。うち結構書類とか、本とか出てくるんですけど、これ映り込んじゃうんですよ。

【山下】映り込みがちょっとややこしいことになったりするってことですね。

【日澤】そう、なんとなくこう真っ白でも、舞台上だったらいけたりとか、なんか適当に書いてあればいけたものが、映り込んじゃうから。

【山下】映像はリアルですからね、映し出しますからね。何を書かれているかとかわかりますからね。

【日澤】そうなんですよ。だからそれ、小道具製作がすごく大変になりました。

【山下】そうですね、逆にそれはね、ちゃんとしたものを作らないといけないってなると。

【日澤】そうなんです。

【山下】なるほど。

【日澤】今まではなんか俳優さんの想像力でね、カバーしてもらってたものが、ほんとに書いてあるようなものにしなきゃいけないってのは大変ですね。

【山下】でも、もしかしたら、『マンダレイ』っていうね、映画があったんですけど、それはもうセットが、スタジオが舞台みたいになってるていうのがあってですね。ラース・フォン・トリアーって人が作った映画なんですけれど、そういう引き算の映像の作り方もあるかもしれないなって、今聞いてて思いました。

【日澤】あー、なるほどねえ。

【山下】そうなんですよ。だからそこはもう真っ白でもいいじゃないですか。お客さんが想像するかもしんない演出の前提でやると、お客さんが逆にどう感じるのかなっていう。演劇ファンって割と自分で考えながら見るのが好きじゃないですか。

【日澤】あー、ここ何が書いてあるんだろうみたいなね。

【山下】そうなんですよ、想像力を信じてやってみるっていうのも、一つの演劇の映像化の答えかもしれないなっていう仮説が私の中で生まれました、今の聞いて。

【日澤】ああ、でもそれはありかもしれないですね。

【山下】ただGoProここにつけたやつもすごく面白そう。

【日澤】ありがとうございます。

【山下】VR用の360度カメラ置いてね、あれ、ヘッドセットマウントがないとダメなんですけど、ああゆうようなものに近い体験ですから。

【日澤】そう、VRもねえ。

【山下】そこまではまだやんなくていいです、大変だから。

【日澤】あっ、まだ。

【山下】あと画質があれなんで、あと2.3年後だと絶対VRくると思います。

【日澤】あー、あと2.3年後、はい、わかりました。

【山下】もう映像制作会社の知見から、なんかまたお手伝いできることがあれば。

【日澤】勿論です、はい、いろいろと。

【山下】とはいえコロナでね、いろいろとテクノロジーも使いながらやってらっしゃるのはよくわかりましたので、これからもオンラインとオフラインとですね、ちょっと続けてもらいながら、やってもらいたいと思いますが。
っていうことで、大体1時間くらいなので、1回ここで日澤さんと私のお話は終わりたいと思います。

【日澤】はい、ありがとうございました。

【山下】ありがとうございました。


===ここからコメント===
 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

担当者 : 伊藤ゆみ子

この度は、ご依頼いただきまして誠にありがとうございました。
劇団の演劇を見ていないのに、見たことがないのに、お話を聞いていくうちに舞台の熱気を感じました。何かすごいものに出会ってしまったとゾクゾクしました。今まで知らなかったけれど、演劇って人を魅了するパワーがとても大きいと思いました。
日澤さんの俳優さんのキャスティングの仕方で、この俳優さんが魅力的だから、一緒に仕事をしたいから呼ぶんですというところがありましたが、これは一般に仕事をする中でも、とても大切なことだと思いました。相手への尊敬や信頼があるから、良い仕事が出来上がっていくのだととても勉強になりました。ありがとうございました。
またのご依頼を心よりお待ちしております。



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