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【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの作家:古川健さん・演出:日澤雄介さんに芝居と劇団のことを聞いてみた(全2回)その2

【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの作家:古川健さん・演出:日澤雄介さんに芝居と劇団のことを聞いてみた(全2回)その2

【山下】でもやっぱり、そのあと賞をとることによってなんか少し周りの関係は変わってきてます?

【日澤】変わりましたよお。

【山下】どんな感じですか? いいですねえ。やっぱ、いいですねえ。

【日澤】これはねえ、まあまずもって見ていただけるお客さんの数が増えたとか、新聞社に取り上げていただける数も多くなりましたし、まあ何よりやっぱり「チョコレートケーキ」っていう名前がね。

【山下】ブランドになった。

【日澤】というかもう。初めにつけたのが、ああいういきさつでつけたので。で、古川くんの本になってからは、ほんとにそのギャップがすごくて。

【山下】いや、ほんとですよね。まあ、そこが良かったかもしれないけどね、今思うと。

【日澤】うん。でも当時はやっぱり「名前はなんで変えないの」っていうのが。

【山下】ああ、言われますよね。

【日澤】すごく言われた時期だったので。

【山下】硬派な劇団だからね。

【古川】先輩方のね。親切心で言ってくださるんですよ。ははは。

【山下】ああ、そうか。先輩がね。

【古川】「君ら名前を変えなさい」っつって。

【山下】なるほどお。

【日澤】「出たいんだったら名前を変えなさい」って。

【山下】あ、そっか。それは言われるんですねえ。

【日澤】言われましたねえ。

【古川】それは言われなくなったのは、やっぱりこれはきっかけは……。

【日澤】そうですね。

【山下】それは、やっぱり読売演劇大賞があるから言わなくなったと。

【古川】さすがに言われなくなりましたね。

【山下】なるほど。あとなんか変化は、ほかにはありますか?

【日澤】ああ、そうですねえ。

【山下】やっぱり、マスコミの人が見に行きたいんですけどとか、なんかこれ記事にしていいですかとか。

【日澤】あ、それはもちろん、新しく公演やるときには。まあもちろんリリースもこっちから出すようになったんですけれども、でも、やっぱり取り上げていただける回数増えましたし、まあ僕とか古川くんとかは個人的なね。

【古川】そうですね。

【日澤】うん、仕事が……。

【古川】外からの仕事が入ってくるようになるきっかけ。

【山下】あ、そうですよね、増えますよね。

【日澤】まあ、もちろん俳優さんもやっぱり外部に出る。

【山下】客演でね。

【日澤】そうですね、うん。その小劇場のというよりは、ちょっとこう違うプロデュース団体さんとかからもお声をかけていただけるようになったっていうのは大きいですね。まあ、ほんと直後ってわけじゃないですけど。このあと何年か経ってっていう感じではあるんですけれども。

【古川】だから、たぶん見てくれるようになって、で、そっからオファーにつながるっていうきっかけにはなったんじゃないかなっていうふうに思いますね。

【山下】外部の演出とか本を書いたりとかしてるのと、チョコレートケーキとのなんかこう区分けとかはされてるんですか?

【日澤】うーん……。やっぱり、劇団だと気の遣い方は違うと言いますか。

【山下】逆に家族みたいな感じがあるからってこと?

【日澤】そうですね、気兼ねな……気兼ねなく言うというか、やっぱり……。

【山下】腹は割れるし、バンと。

【日澤】うん。自分の団体だし、やっぱこっちの方向……こっちの方向でというか、作品づくりの一から関わるので、やはりちょっと違うけれども。外部に行くとやっぱり、そこの団体さんの色とか意向とか、その作品、まあやっぱり古川くんの作品じゃないっていうのもあるし、そういうときにはやっぱりなんか別に意見を曲げてるわけではないけれども、そこにはまるような感じにはしたりとかはしますよね。

【山下】なるほどね、まあそうですよね。僕たちもクライアントさんによってトーンを変えたりとかと同じですね、CMで。

【日澤】まあでもやっぱり外だと団体背負って外に行くので、下手はできないなっていう印象はありますね。

【山下】団体っていうのは、チョコレートケーキのブランドの団体ということですね?

【日澤】だし、なめられたくないしみたいな。で、逆に劇団は劇団でやっぱりここはちゃんと一番いい作品を、一番いい作品って変ですけど、やんなきゃいけないから。

【山下】新しいことをやろうとか。

【日澤】うん。

【山下】まあ芸術家としてのね、やっぱりあれですよね。矜持?

【日澤】は、ありますけど。うん。

【山下】対して古川さんはどうですか? 外部の脚本。

【古川】そうですね。まあやっぱりある種、外でやるっていうのは、どういうことを要求されてるのかなっていうところを考えて、こういうことなのかなっていう、そのすり合わせていくっていうことがあると思うんですね。

【山下】そこはやっぱり発注されるところと、お話し合いをされるんですね。

【古川】はい、それはもう向こうのプロデューサーであったりとか演出家であったりとかっていうのと話し合って、どういう作品にしていきたいのかっていう話をしてから着手しますので。そう考えると、劇団でやるときと比べるとやっぱり自由度はないというか。

【山下】まあ、そうですよね。

【古川】うん。

【山下】書く制約は絶対ありますもんね。

【古川】その要求に応えていくっていうところで、ある種、楽でもあるんですよね。それは。

【山下】ああ、なるほど。

【古川】そういう意味で言うと、まず一番苦しいのは自分の劇団だろうなというふうに思います。

【山下】なるほどね。
あの、外部に書き下ろす場合はですね、なんか稽古初日に半分ぐらいしか書けてないとかっていうのはあるんですか?

【古川】あの、それは僕は天才じゃないので、絶対初日までには上げようというふうに思ってます。

【山下】おお、すごい。

【古川】だいたいほぼ、90%ぐらいは、95%ぐらいはもう要求された締め切りを守ってます。

【山下】そこは、じゃあプロデューサーは嬉しいですね。

【古川】そうですね、はい。

【山下】尊敬する井上ひさしさんと大きな違いは、そこかもしれませんね(笑)。

【古川】そこはね、そこまねしてもしょうがないと思ってるので、はい(笑)。

【山下】なるほど。じゃあまあ稽古初日に間に合うのは。
チョコレートケーキも、もう基本的にはあれですか? まあプロットのところがあるけど、稽古の日が決まってると?

【日澤】ああ、出ます、出ます。

【山下】もう今は上げてくれてる。

【日澤】あの、もう二稿ぐらいになりますね。

【山下】あ、第二稿が上がってきてる。すばらしい。

【日澤】だから当日が締め切りじゃなくて、その前で2・3週間前くらいには上げてくれて、で、まあ修正入るときにはそこから修正入ってという感じですね。

【山下】なるほど。逆に日澤さんが外部で演出してるときに、全然上がってないよっていうのはありますか?

【日澤】僕ね、あれなんですよ。新作ってあんまやらないんですよね。

【山下】ああ、じゃあもうできてるものがもうあると。

【日澤】そうなんです、そうなんです。僕、そんなに言うても外部演出ってやってなくて。

【山下】あ、そうですか。

【日澤】うん。今までも何本かなんですけれども。だいたい、えーとまあ先ほど話に出た『まほろば』にしても再演ですし。

【山下】あ、そっか、そっか。蓬莱さんのね。

【日澤】うん。なので、その新作書き下ろしっていうのは、あれか。結構前だけど、鐘下さんに『新・殺人狂時代』は、うん、だったけど、あれも鐘下さん、書き上げてきていただけたので。

【山下】あ、そうですか。

【日澤】うん。たぶんないんじゃないかな。だからその、本がないから、うーっていうのは僕、経験ないかも。あ、それはちょっと一回経験……したくはないけど。どうなんだろう。そうだ、それないなあ。僕、全部ありものですね。

【山下】コントとかでもねえ、本が全然上がってこないとかっていうのがあったりするし。

【日澤】そういう演劇作品もありますもんね。「本が来ない、本が来ない」って言って右往左往する。

【山下】そう、大丈夫かなあみたいな。

【日澤】ないですね。僕全部……。

【山下】それは、たまたま良かったですね。

【日澤】いやあ、恵まれてるのかもしれない。

【山下】まあでもこれからね、また何が起きるか分かりませんので。

【日澤】そうですね。

【古川】まあ、そうですね。

【山下】へえ。

【日澤】逆にどうしてるんだろう。その本がないときの現場って。

【古川】うーん。ごまかしごまかしやるんじゃないですか?

【日澤】ごまかしごまかしやるのかあ。

【古川】ちょっとずつは出てくんじゃないの?

【日澤】そっかあ。

【古川】だから、そのちょっとの部分をなんか延ばしてやるんでしょ、きっと。

【日澤】そっかあ。

【山下】戯曲を書くのって、やっぱ頭から書いてって、だんだんこう下に終わりに近づいてく書き方なんですか?

【古川】僕はそうですね。いろんなタイプの方がいらっしゃるのかなと思うんですけど、でもだいたい頭から書いて、おしりに行くんじゃないかなとは思いますね。

【山下】おしりから書く人は、いないでしょうから。

【日澤】終わりは決めてるの? 終わり方とか。

【古川】終わり方決まってるときもあるし、決まってないときもある。

【山下】あれですか? 書いてるとき、上演時間とか意識されないんですか?

【古川】意識してるつもりです。

【山下】あははははは。

【日澤】これはあれよね、お互い進歩したところではあるかもしれないですね。やっぱり、2時間みたいなものをベースにっていうのは僕も守れないんだけれども、2時間を目指して作品をつくっていこうみたいなのは。昔はすごく長かった。本が。古川くんの本は長かった。

【山下】あれですか? 古川さんの本を少し縮めたりしてたんですか? じゃあ現場で。

【古川】少しどころじゃない。

【日澤】うん、少しどころじゃない。だから、今やってるこの『一九一一年』っていう作品は。

【山下】これは初演は何時間?

【日澤】初演は、え、何時間というか、えーと戯曲のページ数で言うと86ページあったんですね。

【山下】1ページって何時間、何分くらいなんですか?

【日澤】だいたい2から3分ですね、古川くんの本だと。

【古川】そうなんですよね。

【山下】すごく長いじゃないですか。

【日澤】だから3時間とかになっちゃうんですけど、それを上演台本で60何ページにしてるんで20ページぐらいはカットしてます。

【山下】なるほど。

【古川】もっとひどいときは、100ページ超えたこともありますので、そう考えるとまあ、うん。

【山下】でも今の話、面白いですね。それは、昔はだから古川さんの戯曲を日澤さんとか演出家として「ここ削っていこうぜ」とかっていうのあったんですか?

【日澤】初め2人で。

【古川】最初はそうだったね。

【日澤】最初2人で削ってました。

【古川】海外だと、ドラマツルグっていう人がいるじゃないですか。総合プロデューサーみたいな人が。それでおっきな話の面白さとか長さとかをなんか決めたりするらしいんですけど、それを2人でやってたっていうことなんでしょうか?

【日澤】そうですねえ。

【山下】逆に言うと。

【日澤】うん。とにかく古川くん、何も考えずに書いてくれっていうスタンスだったので。

【山下】逆にね、あえてね。

【日澤】うん。で、「古川くん、古川くん。古川くん、すごく長いよ」っていう。

【古川】何も考えなすぎだよって話で。

【山下】最初はそっから始まるのか。

【日澤】今でも笑い話なのが、『治天ノ君』の初演の稽古で、じゃあ初めて通しましょうっていうときに、だいたい10時まで、稽古があるので。

【山下】夜のね。

【日澤】だいたい7時ぐらいから通し開始するんですけど、その稽古の終わりまでで半分いかなかったですね。

【山下】あ、10時で?

【日澤】うん、半分いかなくて、「今日はちょっと通しこれで終わります」って言って。

【古川】通せなかったんだよね。

【日澤】そう、通せなかった。で、「古川くん、古川くん。これはカット」。「カットするよ」じゃなくて(笑)。

【山下】古川さんも稽古場には行ってやってるんですか? 最初のころは。

【古川】そうですね。

【山下】で、これはちょっとカットしないと無理かなとか、いろいろ感じると。

【古川】まあ、そもそもカットするものだと思ってます。

【谷】ああ。

【山下】あ、なるほど。そういう前提で。それはあれですか? 外部に書き下ろしのやつも、そういうので、今はそうではなくなった。昔がそうであって、今はそうじゃない?

【古川】いや、今も別に。僕はやっぱりちょっと書きすぎる傾向にあるし、そんなにまあ昔よりはましになったと思いたいですけど。でもやっぱり、逆に、その現場で例えランタイムが長いままで構わなかったとしても、やっぱりもっとシャープにしたほうが良くなるシーンだったらそこは削るべきだと思うし、そこは現場の判断でやるべきことだと思ってるんで。だから、上演時間が2時間切っていたとしても、ここはいらないって演出家が判断したら、そこはどんどん切ってもらっていいと思うし、どんどんやってくださいっていうふうに、外に出すときでも言ってます。

【山下】なるほど。そうすると、自分のやつをもうそれを忠実にやってくれっていうことではない?

【古川】はい。だから、あくまで設計図なんで。

【山下】ああ、なるほど、なるほど。現場で変えていいよと。

【古川】お客様を立てることは現場にお任せしますよっていう。

【山下】現場の棟梁に任せるよと。あ、なるほど、なるほど。

【古川】はい、そういうスタンスです、僕は。

【日澤】古川くんは珍しいですよ。

【山下】あ、珍しい?

【日澤】ほんとに何やっても、何やってもなんにも言わないですもん。

【山下】それはじゃあ逆に、ほかの人はそうではないってことなんですね?

【日澤】いや……僕も何人。だから鐘下さんなんかも全然、逆にもっとやればいいのにっていう人なんですけど、人によってはダメな人ダメよね。

【古川】うん、そうですね。

【山下】もう戯曲に忠実にやってくださいっていう人、いらっしゃいますよね?

【古川】聞いた話だと、青木豪さんとか、もう「カット箇所だけは全部ちゃんと教えてくれ」とかっていうふうにおっしゃるらしいですね。

【山下】まあね、同一性保持権みたいな話になりますからね。絶対それは主張できますもんね。なるほど、なるほど。面白いな、でも。
あの、お二人は今あれですか? 演劇のところでバチっとやってらっしゃいますけど、演劇以外の例えば映画とかドラマとかっていうようなお話とかもあったりするんですか?

【日澤】僕はないです。ないですね。

【古川】演出家がドラマで何するんだっていう話になりますよね。

【日澤】そうそうそうそう。僕はたぶんないし、できないし。

【山下】えー、そんなことないと思いますけどね。古川さんはなんかあります?

【古川】僕、今年1本書きましたね、ドラマ。

【山下】あ、テレビドラマ?

【古川】はい、NHKの。

【山下】あ、NHKさん。NHKさんって劇作家になんか依頼する率が高くないですか?

【古川】あ、なんか、そんな印象ありますね。

【山下】なんか長田さんも。

【古川】長田さんもやってますもんね。

【山下】やってて、この前、再放送かなんか『流行感冒』があったんですけど。なんかみんな。そういう人たちってあれですか? NHKの人はみんなチョコレートケーキを観てオファーをしてるっていう。

【古川】そうですね。今回の今年やった仕事に関しては、もともと……もともと演劇をやってらしたNHKの方が、あの……。

【山下】それは、NHKの職員だけど演劇を学生時代やってたってこと?

【古川】そうですね。

【山下】あ、そういうことか。

【古川】学生時代にやっててっていう。で、そのプロデューサーさんと共通の知り合いの俳優がいて、その紹介で。

【山下】じゃあ、その俳優さんが出る?

【古川】出ないです(笑)。

【山下】あ、出ない。・・・・。なるほど、なるほど。

【古川】そういう。で、もともとはラジオドラマを一緒につくったんですね、何年か前に。

【山下】あ、そうなんですか。なるほど。

【古川】で、そのラジオドラマのテレビドラマ版をつくるっていうことなので、そのラジオドラマ書いた縁で僕にオファーが来たという感じです。

【山下】どんなドラマだったんですか?

【古川】あの、いわゆる8月にやる、あの……。

【山下】あ、終戦特番。

【古川】終戦特番の単発ドラマで、九州の九州大学の生体解剖事件。

【山下】あ、九大でそんなのがあったんですか。

【古川】はい、B29のパイロットが九州大学で生きたまま解剖されちゃうっていう事件があったんですけど、それをテーマにした作品です。

【山下】ああ、そうだったんですね。ああ、でも古川さんにそれをちょっと依頼したいと思うのはなんとなく分かりました。

【古川】うん、僕も自分で納得ですね。

【山下】いやいや、いろんな仕事が増えていって。これからチョコレートケーキは、どの方向に向かっていこうとか、みんなで話したりはするんですか?

【日澤】方向。

【山下】なんか、こういうのやろうよとか、中長期計画とかなんか立てたりしないんですか?

【日澤】中長期ではないですね。あの、まあ話に何回も出てますけど、やっぱり作品って古川くんからこういうのっていう発信が出てくるので、えっと……その団体として動いていくときに、いわゆる中長期ということであれば、例えば地方公演は力入れてやっていこうよとか、あとは年間に何本みたいなことであるとか、まあそれこそ助成金とかをどういうふうにやっていこうかとかっていうのとかは話すし。
まあ、あとはコロナ禍でいろいろやってたコメンタリーって、ZOOMを使ったお芝居を一緒に観て、で、それでその出演者だったり僕とか古川くんだったりとかがしゃべりながら解説つけながらやったりだとかっていうようなことはやっていくんですけれども。うん。まあ団体として今はうまく回ってるんですけれども、もうずっと続くとは思ってないので、何かこう新しいものは探しつつやっていけたらいいのかなとは思っています。

【山下】とはいえ、劇場って2・3年前から押さえるって聞いたんですけど。やっぱり、そうなんですか?

【日澤】まあ2・3年では。1年以上は前ですね。

【山下】そうすると、来年はここの劇場でこういうのやるよっていうのは、もう決めてるっていうことなんですよね?

【日澤】そうですね。

【古川】そういうことですね。

【日澤】そうですね、来年は。

【山下】そうすると、そこにケツがあるから、まあなんか昔の再演をするかもしれないけど、新作になるかもしれないと。

【日澤】うん、そうですね。そういうことは考えてる。来年度の話はもう劇団会議では上がるところですね。

【山下】それは、テレビコマーシャルとかだと、もう来月オンエアみたいなのが来るので、うわーってやんないといけないんですけど。そこは全然やっぱりスパンが違いますよね?

【日澤・古川】そうですねえ。

【古川】ちなみに、ドラマの仕事してみると、ドラマの仕事って案外時間がないというか、すぐオンエア。舞台と比べると、だいぶ関わってから放映までの時間が短いなって思いましたね。

【山下】まあ映像は割とそういうところあって、まあ手離れがいいっていう言い方もあるんですけどね。すぐ終わっちゃう。

【日澤】なるほどねえ。

【古川】だから、自分の劇団の俳優さんたち使ってほしかったんだけど、舞台のオファーがみんながっちり入ってるから出れなかったりするんですよね。

【山下】事前に、早いですもんね。なるほど。

【日澤】情報のリリースのタイミングなんかも、やっぱり劇場さんのほうの方針があるので、その劇場さんのほうの番組が決まってからじゃないとダメとかがあったりするので。

【山下】小屋のね。

【日澤】うん、そう。だから出せなかったりもするんですよ。だから、劇場の名前だけを伏せたりとかっていうのもあったりとかして。だからほんとに、ほんとだったらね、なんか宣伝だったら長いほうがいいんだけど、そういうわけにもいかなかったりだとか。

【山下】なるほど。
劇場はあれですか? この劇場でやろうとか東京芸術劇場でやろうとかトラムでやろうとか、そういうのはなんか、それは自分たちでお決めになるんですか?

【日澤】そうですね。劇団会議で。うん。ここ……まあ一応、制作があたりをつけてっていうのはあるんですけど。
【山下】公共劇場の場合って、結構いろいろ審査とかあるんですか? やっぱり、このブランドだったらいけるだろうみたいなのとか、なんかそういうのがあるんですか?

【日澤】ああ、あの、借り方によるのかなっていう。例えば、提携公演なのか共催公演なのか、それとも貸館で借りるのかっていうので、審査がかかってくるときもあれば、空いてれば借りれるときもあるっていうところですね。

【山下】それはでも、自分たちでなんかここでやりたいなっていうところをやっぱり押さえてるっていうことになるんですか?

【日澤】そうですね。今だと例えば僕の仕事がここは入ってるから、ここはごめんちょっと外してくれとか。まあ古川くんはね、そんなに本気で立て込んでなければ結構入れ替えて書いてくれたりするんですよ。「こっち。じゃ、こっち先書くわ」みたいな。

【山下】すごいですね、それ。頭が。切り替えてくんですか? それを。

【古川】いや、だからあの……同時並行は何回か試して失敗してるので、しないんで、単純に書き出してから終わるまでの間で途中でやめたりっていうことはしないんですけども、順番を変えるっていうのは大丈夫です。対応可能です。

【山下】じゃあ、A・Bって書こうと思ったけど、B・Aでやるんだったらオッケー?

【古川】それは全然大丈夫です。対応できます。

【山下】なるほど、なるほど。へえ。

【日澤】まあそういう意味でも、1年ぐらい先に予定が決まってるのっていうのは、まあいいっちゃいいんだよね。

【古川】まあ、そうだね。

【日澤】それはね。

【古川】それはたしかにやりやすい。うん。

【山下】あと、予定が決まってると古川さんがなんかこうテーマをやっぱり意識するじゃないですか。宿題がずっとあるみたいな感じで。

【古川】まあ、そうですね。

【山下】どうしようか、何書こうかなっていうのを、常に生きてるうち、なんか見たものとか聞いたもの、やっぱそれはずっと意識されてるんですか?

【古川】ああ、そうですね。あのでも、すごく意識してるって言われるとそうでもなくって。でもどっか頭の片隅でこれは面白いかもなみたいなトピックが見つかったら、それはちょっと頭の中にしまっとこうみたいなのはある。これ書きたいなって一瞬チラッとでも思ったら、ちょっとしまっとくっていう感じです。

【山下】なるほど、なるほど。それはじゃあ一応、アイデアの種としていくつか持ってらっしゃると。

【古川】そうですね。

【山下】なんか、そういうときってあれですか? 手帳かなんかにメモかなんかして?

【古川】あ、しないですね。それでもう忘れちゃうぐらいのものだったら、それは書かなくてもいいぐらいの、いっかと思います。

【山下】なるほどねえ。いやいや。
でも逆に今度は日澤さんにお伺いします。主宰として、劇団を運営してくというまあ社長的な立場の。それはどんな感じですか? この20年やってみて。

【日澤】ああ。でも、まあ20年と言っても初めの10年ぐらいは運営とかっていうことに関しては、そんなに何かをやってたというよりは、じゃあ次公演いつやろうかぐらいなことだったので。まあ、ここ何年ですよね。団体を法人化したりとかして対外的に信用つけたりだとか。で、地方行くときのためにいろいろ地方とのパイプつくったりだとかっていうのは、まあ基本的には制作がやってるんですけれども、まあもっと動いていこうよみたいなことはやるようにはしてるし、あとは金銭的な体力をどうつくっていくかみたいな。こういうコロナ禍とかがね。

【山下】そうですよね。特に去年、今年はね。

【日澤】そうなんですよね。で、そこでとかいうのは。
あとは、劇場の話で言えば、例えば東京芸術劇場でやれるようになったっていうのは大きいですし、じゃあこれを継続させていくにはどうしたらいいんだろうかとか。あとは、お客さんが来てくれるようになって集客力がついてきたら、じゃあこれはこの大きさでやるには何週間必要だとかっていうような考え方であるとか、そういうところはまあ増えてきたのかあ。っていうのはありますね。

【山下】その課題がいくつかあるのを、やっぱり解決をしてより良くしていかないといけないと。

【日澤】そうですね。

【山下】そのときに、劇団員のみなさんで古川さんも含めて話し合いをなんか定期的にやられてるんですか?

【日澤】そうですね。今、公演中なのでやれてないですけど、だいたい月1ぐらいでやれるといいなっていうので。

【山下】じゃあ、月1に。今だとオンラインでなんか集まったりとか。

【日澤】そうですね。で、まあだいたい公演が例えば1年後に決まってる、半年後に決まってるっていうのがあれば、それについての話が基本的にはなるんですけれども。で、もう少し長いスパンでやりたいことがあったら、それを話したりだとか。
あとは例えば……うーん、例えば集客力をつけるためにはどうしたらいいのかとか、うちやっぱり硬いお芝居をやってるので、どうしても若い方々に観てもらえてないっていうのがずっとあるので、じゃあどうやったらこの若い人たちに観てもらえるようになるのかねとか。

【山下】なるほどね。

【日澤】うん。で、まあ、あとは今こういうことが起こってるぞみたいな、劇団内でみたいなこととか、今これがあるぞみたいなこととかっていうのを話したりとか。うん、してますね。

【山下】でもそれは会社の定例会議と似てますね。

【日澤】うん、かもしれないですね。

【山下】部署ごとの課題があってね。

【谷】そうですね。

【日澤】だからちょっとやっぱり、やることが大きくなってきたので、そういう意味ではみんなが俳優やって劇作演出やってっていうだけではちょっと回らなくはなってきてるので。だから、いろいろ仕事持ってもらって、本業のもの以外なことでちょっとやってもらうっていうのは増えてはきてますね。

【山下】組織のあれとして。
なんかプレッシャーとかもありますか? やっぱそれに対する。なんかこのブランドを維持していくことに。

【日澤】それはね、ありますね。

【山下】ある。

【日澤】あるよね?

【古川】……うん。

【日澤】あれ、ないの? ないの?

【山下・谷】ははははは(笑)。

【古川】あんまり気にしないようにしようと思って。

【日澤】あ、そうなのね。あ、そうなんだ。いや僕でもね、ぶっちゃけ古川くんの本って評価が高いから、これ演出するのってなかなかプレッシャーではあったりは、するはするんですよ。

【谷】たしかに。

【日澤】もうこけたらどうしようっていうのは常にやっぱり思ってるんで、まあこれはほかの現場でもそうですけど。特にね、劇団公演だと露骨にね、動員につながってくるし、うん。

【山下】まあ数字に出ますもんね、それは。

【日澤】うん、そうですね。まあたぶん、この次の公演とかに出てくるので。

【山下】ですよね。今はね、もう50%にしろとかいろいろいろんなこと言われてますから、本当に。

(起こし終わり)
 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)
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担当:田中 あや
いつもご依頼いただきありがとうございます。
小劇場演劇のお話の起こしは初めて担当させていただきましたが、こちらのシリーズも魅力が詰まったお話が多く楽しく起こしました。
今回のお話の中でZOOMを使った新しい演劇の楽しみ方が紹介されていましたが、視覚障害者でも楽しめるものなのではないかと思いました。裏話なんかを聞けたらとても楽しそうでワクワクします。
今回のシリーズも含め、また起こしを担当できる日を楽しみにしております。


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