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【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの作家:古川健さん・演出:日澤雄介さんに芝居と劇団のことを聞いてみた(全2回)その1

【PODCAST書き起こし】劇団チョコレートケーキの作家:古川健さん・演出:日澤雄介さんに芝居と劇団のことを聞いてみた(全2回)その1

【山下】はい、皆さん、こんにちは。

【谷】こんにちは。

【山下】東北新社のPodcast『BRAIN DRAIN』のお時間です。『みんなで語る小劇場演劇』ということで、今日は4人いますが、私、ポッドキャストのMCを務める山下です。で、うちの社員のポッドキャスターの谷です。

【谷】谷です。よろしくお願いします。

【山下】で、今日先ほどお話を1人ずつさせていただきましたけど、劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんと古川健さんです。

【日澤】劇団チョコレートケーキ・日澤雄介です。よろしくお願いします。

【古川】古川健です。よろしくお願いします。

【山下】はい、よろしくお願いします。
というわけで、やっとこれで4人でお話をしたいと思いますが、私と谷が一緒にチョコレートケーキを観てることがすごく分かりまして、これが、谷が作ったリストがあってこんなに見ているというあれなんですけど。

【日澤】ありがとうございます。

【山下】ちょっと谷さんのほうで何か印象に残ってるやつとかあります?

【谷】そういう意味では、先ほど最後に出た『帰還不能点』ですが。
劇中劇の作り方がすごくうまいなあと思って。

【山下】居酒屋のね。

【谷】ええ、すごく感心しちゃいました。ほんとにね、素晴らしかったですね。

【山下】居酒屋でやろうっていうのはもう戯曲の設定であったんですか。

【日澤】そうだよね。そもそもあったよね。

【古川】そもそもがあれで。

【山下】はー、でも急にあそこで演技をするわけじゃないですか、パッと変わるじゃないですか。あれ、結構演出とか難しいんじゃないですか。

【日澤】ああ、そうですね。ルール作りじゃないですけれども、俳優さんと「じゃあこれ、なんで話し出すの?」みたいな。

【山下】そうそう、だから急に変わってるところと地のところの差が、戯曲はそうやって書けるけど、演出のとき結構難しいなと思うんですよ。

【日澤】そうですね、だからやっぱり裏設定というか前段のところの、みんながどういうモチベーションであそこに集まるのかとか、今、山崎っていう亡くなった元日銀総裁役の彼をしのんで集まるんですけれども、じゃ、しのんで集まっていきなりああいう劇中劇って普通に考えたらやらないよねみたいなのがあるので。

【山下】いやいや、新しいですよね、うん。

【日澤】そこを嘘つかないようにするっていうんですかね。脚本に書いてあるからそうやるんじゃなくて、必然としてそうなってしまうような流れみたいなのは俳優さんと共有しましたね。

【山下】あれですか。逆に古川さんは自分で書いててあれですけど、その劇中に俳優の役が突然、変わるタイミングとか見ててどんな感じだったんですか。

【古川】他のスタッフさんにも「よくこんなむちゃぶりをするなあ」って言われたんですけど、そのむちゃぶりにチーム一丸となって応えてくれてるので「すごく嬉しいな、ありがたいな」と思った次第です。

【山下】さすがホームグラウンドの。いやいや新しい劇団チョコレートケーキの取り組みっていう感じがね、しましたよね。

【谷】すごく面白かったんですよ、とにかく。

【山下】いやいや、面白かったね。

【谷】構造がね。

【山下】そう、ある意味コメディにもなってたしね。だからそこがすごく面白かったですよね。

【谷】僕は、演劇を観だしたのがそんなに長くないんですよ、もともと。で、2015年ぐらいからたくさん観だして、その中の一つが『ライン(国境)の向こう』だったんですね。

【山下】はいはいはい、バンダ・ラ・コンチャンのね。

【谷】ええ、そうです。

【山下】近藤芳正さんのね。

【谷】そこから欠かさずチョコレートケーキさんは全部行かせていただいておりまして。

【日澤・古川】ありがとうございます。

【谷】唯一観られなかったのは『熱狂』と『あの記憶の記録』が同時でやってましたよね、同じシアターウエスト。

【日澤】やってました。

【山下】ああ、やってた、やってた、うん。

【谷】それで、ちょっとどうしても日程が合わなくて『あの記憶の記録』だけ観れなかったんですけども。

【山下】そうだ、2本立て公演でした。

【谷】なんと私、横浜の鶴見に住んでまして、あのときゲネが鶴見のサルビアホールってすごい金かけたとこがあるんですよ。

【古川】ありましたね。

【谷】確か2千円だったかと思うんですけど。

【山下】へえー、ゲネを公開してたの?

【谷】ええ。ほぼゲネじゃないですよね。でき上がってる。

【日澤】そうですね、公開してるので、しっかり作ったものをっていう、お客さん入ってる。

【谷】それで観させていただいて、それで取りあえず『ライン(国境)の向こう』以降は全てつながってる状態です。

【古川】ありがとうございます。

【山下】なるほど。

【日澤】あれは確か『あの記憶の記録』だけ地方公演が決まっていて。

【谷】そうでしたよね。

【山下】あ、それで。それもあって。

【日澤】その関係で公開ゲネプロだけを東京のほうでやって。

【谷】なんで、鶴見でやるのかなと不思議に思いつつ。不思議だったんですよ。
確か平日の夕方だったかな。早退しましてね、わざわざ。妻と一緒に行きまして。

【山下】そうだったんですね。

【谷】だいたい一緒に妻と行ってるんですよ。

【山下】そうそう、奥さんも。

【谷】大好きなんですよ、チョコレートケーキさんがです。
で「今日会う」っつったら「なんで会うの? なんで会うの?」っていう話に。

【山下】お呼びしたかった。ねえ、公演前にすみません、ほんとに。

【谷】で、行くとね、だいたいチラシが入ってるじゃないですか。そうするとチラシはチラシでまた古川さんが脚本書かれてるとか、日澤さんとか名前が出てると、トム・プロジェクトさんに行ったりとか。

【古川】ありがとうございます。

【谷】そういうかたちで観させていただいております。

【山下】谷さん、たぶん、うちの会社で、いま、一番演劇を観ているんで。

【谷】いえいえ、そんなことないです。

【山下】月15本ぐらい観てますから。

【日澤】すごい!

【山下】だからこのポッドキャストのシリーズで『今月の谷さんの観劇日記』とうのを毎月やっています。

【古川】ああー!

【日澤】ああ、はいはいはい、やってますね。

【山下】やれるようにしたんです、4月から。

【日澤】ああ、それは。

【古川】なるほど、なるほど。

【谷】結構苦痛なんですけどね、思い出すのが。

【山下】毎月12、13本観てるので、僕も観てないときあるからすごく面白い。勉強になるんですけどね。

【谷】アゴラ会員に入ってるので、アゴラさんだとだいたい3本は観れちゃうんですよ。

【山下】3本観れるのかな。

【谷】ええ、やるんですよね。なので、いろんな出合いもあるんで、普段自分で行かないじゃないですか。アゴラさん会員だから行ってみようっていうことになるんで。まあ、ただだからっていうのもあるんですけどね。

【山下】なるほどね。
ちょっとこの谷さんが初めて観たやつ、チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン、これ、近藤芳正さんから「一緒にやろうよ」っていう話があって始まったんですか?

【日澤】そうですね。近藤さんがうちの舞台を観ていただけてて「あ、面白いね」って言っていただけてて。で、近藤さんも元小劇場でやってらっしゃった方なので。
自分でバンダ・ラ・コンチャンっていう団体を持ってらっしゃったので、まあ、合同公演やらないかっていう感じだよね。

【古川】そうですね。

【山下】なんか珍しいですね。合同公演って割と。

【日澤】初めてです。

【山下】ですよね。

【日澤】だから近藤さんにお声がけいただけたので、じゃあ、やってみようっていうことで。

【山下】へえー。こういうのがね、やっぱりどんどん広がってくんだな。あと、ちょっとチョコレートケーキじゃないんですけど、このトム・プロジェクトさんは割と定期的にされてるんですか。

【日澤】そうですね。うち、僕も古川もなんですけど、このトム・プロジェクトにマネージメントをしていただいてるんで。
その関係でトム・プロジェクト自体が演劇作品を作って地方公演をやってっていう事務所オーナー・マネージメントもやりつつ自分で作りつつっていうところなので、そこで作・演出で呼ばれたりとか。
僕がダメなときというか、古川君と小笠原響さんとやってたこともあって。

【古川】うん、小笠原さんと。

【山下】小笠原さんね、はいはいはいはい。
小笠原さんってのは『拝啓、衆議院議長様』って、あれは小笠原さんですね。

【古川】そうです。あれは小笠原さんです。

【山下】ああ、そうかそうか。これは外部から声がかかるときは、何かそういう人脈から声がけされるの? 全く「えー! 知らないけど、やってみます」みたいなのもあるんですか。

【日澤】どうだろう。これはたぶん、2人、入り口が違うからあれですけど、だいたい劇団の作品観ていただけて、で、そこから来るっていうのが僕は多いかな。

【谷】僕、日澤さんの演出ですごい印象あるのは『まほろば』なんですよね。
あれは僕、あの年でナンバーワンだったな。

【古川】ほー!

【山下】梅田芸術劇場なんだ。

【谷】うん。蓬莱竜太さんが。

【日澤】蓬莱さんが。

【山下】蓬莱さんの『まほろば』か。

【谷】そうそうそうそう。

【山下】これは梅田芸術劇場のプロデューサーさんからオファーが来るんですか。

【日澤】そうですね。これは、そうでしたね。実は今、梅田芸術劇場で『まほろば』のプロデュースしてた方が、以前うちで広報じゃないですけども、ちょっとかかわりのあった方で。

【山下】じゃあ、そこは人脈がなんとなくあって。

【日澤】そうですね。知り合いだったっていうのもあって、お声がけいただいたっていうのはありましたね。

【山下】はー、なるほどね。演劇業界もそんなに広くはないですからね。

【日澤】そうですね。

【山下】それは分かります。なるほど。
あとは、谷さんは何か印象に残ってるやつ、あります?

【谷】今日、いられるだけで十分なんで。

【古川】もうさんざん観てて。

【谷】お会いできたんで。もちろん『治天ノ君』もね、2回観てますし。

【山下】はいはい、素晴らしいですよね、ほんとに。
せっかく日澤さんと古川さんと一緒ですから、劇団チョコレートケーキで2人でやってるこれまでの印象に残ってることとか何かあります?

【日澤】印象に残ってることって、まあ、古川君とはもうほんとに、それこそ。

【山下】20年近くね、あれだから。

【古川】そうですね。

【日澤】20年だから旗揚げ前からなので、学生のときからだから。

【山下】どうですか。学生のときと全く変わってない、2人とも?

【日澤】いやあ、変わってますよ。

【谷】変わってる。

【日澤】僕は学生のときは古川君と呼んでなかったです。健、健ってずっと呼んでたから。

【山下】ああ、健。

【日澤】いつの間にか古川君になった。
僕って今、1人称僕っていってるんですけど、これもね、僕ね、前は俺だったんですよ。

【山下】俺が僕に変わったんですか、へえー。

【日澤】それ、たぶん、演出始めてからだと思うんですけど、だんだん丸くというか衰えているというか。だから、うん。

【山下】いえいえ、演出は尖ってきてるんだけど、人間が丸くなっている。(笑)

【日澤】いやあ、あんまり、あれだよね。演出だからかな。分かんないけど、なんか偉そうじゃないですか、俺って。

【山下】いやいや、まあ、俺がね。演出で俺って言うとね、怖い感じがするのかな。

【日澤】だから印象に残ってるのっていったら僕なんかだと『起て、飢えたる者よ』の初演なんかは2人も出てるし。

【山下】出演者で出てますもんね。

【日澤】それこそ作品の中でこういう、密度があるというか硬質なみたいなのに古川君が踏み込んだ初めての作品なのかなっていうのもあるし。

【古川】その辺はぜひ。

【山下】赤軍の話ですからね。

【日澤】本自体もすごくドラマチックというか独創的だから、すごく印象には残ってる。
ル・デコで2人先に死ぬんで、死んだあとルデコの裏で待機してるのがすごく寒くて、その印象が。あと音も立てられないし。

【山下】そうですよね。

【古川】すぐそこにお客さんいるんでね、ほんとに。

【山下】そうだ、そうだ。

【日澤】それとかは強いですね。古川君何かありますか。

【古川】昔話で言ったら、書いて出てたころは今思うとすごく大変だったなって。自分で書いて自分で出て、人の演出を受ける。で、ダメ出しをされる。

【山下】それ、面白いね。自分で書いたやつをダメ出しされるのってどんな感じなんですか。

【古川】まあ、もっともなことを言われるんで「そうそう、すみません」って思いますけど、内心「ん?」ってちょっとした疑問符が。それは、ダメ出しに納得していないということではなくて、ダメ出しには納得しているんだけれども、そもそもこの構造自体が変だなっていう。

【山下】構造が変。なるほど、なるほど。

【古川】それは今でもすごく印象に残ってますね。
だから、書きながら出てるから、で、今はもうできるだけ稽古の開始日には上げるようにしてるんですけど。

【山下】素晴らしいですね。

【古川】その当時はちょっと半分ぐらいは稽古しながら書いていたので。

【山下】演じながら。

【古川】本が全部ないのは申し訳ないなという状態で稽古をするっていう、それもあって。
だから僕、俳優をするのをやめたきっかけは子どもができたことなんですけど、子どもができたときに「あ、もうこれは自分の劇団に出るのはやめとこう」っていう決心がつきました。

【日澤】あっさり。

【山下】ああ、そうか。いいですね、それもね。きっかけができて。

【日澤】そうね。古川君、出てたんだもんね。

【古川】出てた。

【日澤】『サウイフモノニ…』っていう僕が初めて演出した作品では主役でしたから。
ちなみに、ここにある資料のこの背中があるじゃないですか、チラシの背中。これは古川君なんですよ。皆さん見えないんですけどね。

【山下】そうですね、じゃああとでホームページで。

【日澤】ホームページ見ていただければ。

【山下】古川さんと岡本さんは同級生なの?

【古川】そうです。学年は一緒なんですけど、学生時代の話で言っちゃうと、彼がARGOに入ってきたのが2年の春だったので。

【山下】あ、ちょっと遅れて入ってきた。後輩な感じ?

【古川】学年は一緒なんだけど、ちょっと後輩な感じ。

【山下】分かる、分かる。それはありますよね、そういうの。
あれですか。岡本さんは、今やすごい俳優さんになってますけど、どんな感じですか、2人から見て。

【日澤】岡本君って今の2年に入ってきたっていう話の続きで言うと、彼、1年次に部室の前までは来てるらしいんですよ。なんだけど、入れなかったみたいで。

【山下】なんでですか?

【日澤】なんか気おくれしたのかなって。で、1年、ARGOの公演観たりとかして、で、2年になって、やっぱりやりたいってなって来てる。

【山下】じゃあ公演は観に行ってたんですね。

【日澤】そう、だからね、別にナイーブってわけじゃないけど、すごく不思議な人でしたよ。で、どんどんどんどん我が強くはなってきてるんですけど、でもいろいろ自分で考えて、いろいろ持ち込んでくる俳優だなと思いますね。

【山下】持ち込んでくるってどういうことですか。

【日澤】自分で本を読んで、こうやりたい、ああやりたいっていうのを持ち込んでくるという意味で。

【山下】ああ、そういうことか。自分の中でイメージを持ってっていうことですね。

【日澤】すごくイメージを持ってやるタイプだし、いろんなお芝居も観たりとかしてるから、そういう意味で。あとは、演技メソッドとかもやっぱりすごく研究してるんで。
すげえ勉強家ですね。

【古川】努力家ではありますね。あれは、でも岡本君、もっちゃんって僕らは呼んでるんですけど、風貌的には20年くらい前からあんまり変わってないんで。

【山下】じゃあ、めちゃくちゃ渋い学生だったんですか?

【古川】もうだから学生時代とかも、おじさんの役ばっかりやってて。

【山下】渋いですよね、ほんとに。

【古川】おじさんどころかおじいさんの役とかも、他にできる人がいないからっていう理由で当ててましたね。

【山下】貴重な俳優だと思います、ほんとに。
あと、俳優さんで言うと西尾さんもチョコレートケーキの俳優さん。

【日澤】そうですね。

【山下】西尾さんは結構あとに入られた方ですか。

【日澤】西尾君は17回公演『サウイフモノニ…』から客演で出ていただいて。
そうですね。

【山下】あ、客演だったんですか、最初。ああ、なるほど。

【日澤】そうです、初め、客演。

【谷】客演は大学は関係ないんですか。

【日澤】大学は関係ないんです。
それで、第20回公演『一九一一年』の初演が終わったところで劇団員になった感じですね。

【古川】そうですね。そうです。

【日澤】あと、もう1人いる浅井伸治っていうものも同じタイミングで。

【山下】浅井さんも同じタイミングで。なるほど。じゃあ、2010年代の初めに皆さん入られた。

【日澤】そうですね。

【山下】あとはあれですか。その方と、制作と俳優を兼ねてる菅野さん。

【日澤】菅野さんはもうちょい前だね。

【古川】まあ、僕はもともと客演だったのは同じなんですけど、だいぶ前ですよね、前の作・演時代。

【山下】ああ、そうなんですね、へえー。
じゃあ、もうほんとに皆さん10年以上一緒にやってる感じがするけど。

【日澤】そうですね。そうなりますね。

【山下】さっき客演の人は本読みしながら役を決めるとおっしゃったんですけど、劇団員は当て書きをされてるんですか。

【古川】僕は当て書きできなくて、残念ながら。たぶん、当て書きできたほうが楽なんで、当て書きできるようになりたかったんですけど、なんかね、無理なんですよ。
書きながらなんとなく、この辺は西尾君か、この辺は岡本君かみたいなことを考えながら書いたりはしますけども、彼らがやりやすいようにとかっていうのは一切ないですし、そこに当たらなかったとしても、なんとも思わないですね。

【山下】となると、さっき日澤さん言ったみたいに、みんなで本読んで、もう役を決めていくっていう。

【日澤】そうですね。劇団員も関係なく。

【山下】そうなんですね、なるほど。『治天ノ君』で松本紀保さんを起用するようになった既往は何かあったんですか。あれは、たまたま?

【日澤】たまたまっていうか、その前に紀保さんと面識が持てたってのは大きかったですね。
それでお知り合いになれたので。で、そのあとに『治天ノ君』をやるって話になったので、ちょっとダメもとで。

【山下】お声がけして。

【日澤】あの役をって考えてて、男性キャストの中の紅一点なので、ここはすごく印象深い役には間違いなくなるので、素敵な方を呼びたいなっていうのでお声がけさせてもらいましたね。

【山下】なるほど。キャスティングをお呼びするときのあれっていうのは、基本、日澤さんが主導して考えるんですか。

【日澤】いや、そんなことないです。これは劇団で。

【古川】これは結構劇団会議では一番もめるというか、時間を割いて話し合うところで。

【山下】古川さんもそうだけど、そもそも他の俳優さんも一堂に会してやるんですか。

【古川】はい。

【山下】なるほど。

【古川】むしろ僕はあんまり意見出さないほうで、岡本君とか西尾君とか、あと浅井君とかはやっぱりそれぞれがそれぞれにやりたい人がいるんで、結構積極的に意見出します。。

【山下】そうなんですね。俳優としてこの人と一緒にやってみたいってのがあるんですか。

【古川】そうだと思います。

【山下】なるほど。なんか意外ですよね。演出家が全部決めるものだと思ってました、僕。

【日澤】そうですよね。

【古川】普通はそうでしょうけどね。

【山下】劇団チョコレートケーキは違うんですか。

【古川】うちはちょっと特殊なのかもしれません。

【山下】いや、なんか面白いな、へえー。

【日澤】僕が俳優に興味がないってことは全然ないんですけれども、会議をやってるときってまだ本なんか形もないようなときにやっぱりプロットと、あと配役と、どういう感じの構成とみたいなぐらいのとこからスタートするので、そうなると何かピンとこないと言いますか。
あればいいんですけどね、何かね、この俳優っていうの。もちろん僕も言いますけど、この俳優やりたいっていうのは。そうですね。

【山下】なるほど。じゃあプロットだけじゃなくて本ができてたら、また違ったりするんですかね。どうなんでしょう。

【日澤】と、思いますけどね。さすがにそれはあるんじゃないかな。

【古川】たぶん、本できてたらそこに当てていくんじゃないかな。

【山下】だからそこのワークフローの作り方かもしれないね、もしかしたらね。

【日澤】あとは、もうちょっと例えば10年ぐらい前のときだと、だいたい登場人物が実年齢より全然上とかそういうことが多くて、小劇場界で渋い大人の俳優ってそんなにいない時期だったので。

【山下】はいはい、なかなか、ほんとそうだよね。

【日澤】そうなると頑張って我々子どもたちがなんとか演技でやってくしかないから。

【山下】分かります。学生劇団から発祥したとこはそういう問題がありますよね。

【日澤】そう、新劇さんとかはたぶん羨ましいというかね。

【山下】幅が広いですからね、年齢の。

【日澤】そうなると、この役をやってもらいたいときはこの俳優に出てもらいたいという、やっぱり選び方になっちゃうのかな。

【山下】なるほど、なるほど。キャスティングも面白いですね。
チョコレートケーキさんは『治天ノ君』が、一番最初に賞を取ったやつでしたっけ。

【日澤】劇団ではそうですね、『治天ノ君』。

【山下】そのとき、マスコミとか取材とか攻勢があったりしました?

【古川】取材はなかったよね。

【日澤】なかったです。僕がほんとに申し訳ないですけど読売演劇大賞というものを知らなくて。

【山下】読売新聞社の。あっ、ほんとですか。

【古川】僕もそうなんですよ。

【日澤】そう、この賞の電話がかかってきたときに。

【山下】劇団に。読売新聞から。

【日澤】僕の携帯が劇団携帯だったので、かかってきて、読売新聞ので「来たー!取材だ」と思って。
取材が来たと思って「あ、そうだった」みたいな感じしたら、なんか言ってるわけですよ。「何とかかんとかにノミネートされましたのでお受けいただけますか」って。

【山下】ああ、そうか、そうか。ノミネートから、まず連絡来るんですね。

【日澤】「お受けいただけますか」ってなんですかみたいな感じで。
で、そのときに西尾君も個人賞取ってるし。

【山下】そうかそうか、俳優のね。

【日澤】紀保さんも個人賞取ってるし。

【山下】すごいですね、『治天ノ君』は。

【日澤】そうなんですよ。で、僕も取ったのか。僕も取ってて。

【古川】うん、演出賞。

【山下】演出賞。

【日澤】だから、これも、これも、これもみたいになってて。

【山下】4賞取る、4賞。

【古川】4賞に入ってたよね。

【日澤】「あっ、はい、もちろん受けます」って言って、読売演劇大賞、読売演劇大賞って?「おー! これは」ってなって西尾君に電話して「西尾君、西尾君」。

【山下】西尾さん、知ってた?

【日澤】知ってた。

【山下】良かったですね、知ってる人がいて。

【日澤】知ってた。知って「その日1日何もできなかった」って言ってた。

【山下】やっぱり嬉しくて。

【日澤】でも、どうしても信じられないし。今思うと駅前劇場で取れるような賞じゃないから。

【山下】初演のね。びっくりしたんだ。

【日澤】みんなもう、何日か経つと実感がわいてきて。へえー! って。今思うとすごかったですね。

【山下】すごいですね。昔は朝日新聞もね、やってたんですけど。

【古川】らしいですね。それは、聞いたことありました。

【山下】そうなんですよ。やめちゃって、ちょっと予算の関係で。
今ね、新聞社でやってるの読売だけですもんね。

【谷】そうですね。

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

文字起こしの担当者:高橋倫花
コメント:このたびは、ご依頼いただき誠にありがとうございました。
例えば演劇のように夢中になれるものに出合えたことで、その人の本質がだんだん表れてくるのかもしれないと、今回のお話を聞いて思いました。
またのご依頼をお待ちしております。


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