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谷さんの観劇日記2021年5月(全2回)その1

谷さんの観劇日記2021年5月(全2回)その1

【山下】皆さんこんにちは。

【谷】こんにちは。

【山下】TFCポッドキャスト『BRAIN DRAIN』のお時間です。みんなで語る小劇場演劇の新企画、4月から始まりましたけど、今日も「谷さんの観劇日記」ということで、新企画の2回目。

【谷】5月ですね。

【山下】2021年5月に谷さんが見た……今月は11本?

【谷】そうです。

【山下】11本見たらしいんですけど……ちょっとこのパワーポイントがあるのでスイッチングしてもらいますね。こういうのがあるんですけど……11本。実は、本当は11本+4本見たかったんですか?

【谷】はい、そうなんですよ。

【山下】これはあれですか……?

【谷】緊急事態宣言で、一番最初の『マームとジプシー』は5月1日予定だったんですけど、これは初日だったんですけど、初日から5日間の興業が全部流れました。

【山下】全バラし。・・・。

【谷】はい。

【山下】ああ……。

【谷】次のナカゴーとほりぶんというのは、『北とぴあ』という北区の施設なんですけど、区がやってるので即……。

【山下】北区だから。・・・。

【谷】これも4月29日から5月5日までの興業で、これは最終日を取ってたんですけど、二本立てで見ようと思ってたんですけど中止。ナカゴー、ほりぶんと、昼夜組んで、同じ鎌田順也(かまた・としや)さんが演出している劇団とそのユニットなので……。

【山下】両方とも鎌田さん、鎌田さんなんですね。

【谷】そうですね。それでこれ、去年も同じゴールデンウィークでやる予定だったんですけど流れちゃったんです。

【山下】ナカゴー、ほりぶん、2年連続で流れちゃったんですか?

【谷】2年連続、全く同じで流れちゃったという、悲しい作品です。

【山下】これは残念だね……。これは、キャストはナカゴーとほりぶんでは違うんですか?

【谷】違いますね。ほりぶんは川上友里さんが、いつもキャストに入ってるんですけど、その他もろもろ。ナカゴーは本チャン公演で劇団公演だったので、久しぶりに劇団公演だったのですごく残念がっていましたね。ただ、たぶんセットは一緒なので、どういうやり方をしたのか見たかったですね、本当に。

【山下】同じなんですね、なるほど。じゃあ、来年こそできると思いますが……ワクチンの接種もだいぶきましたけど。

【谷】本当は5月に『マームとジプシー』が予定されていたので、今日は『マームとジプシー』のTシャツを着てきたんですけど……(笑)。

【山下】『マームとジプシー』……それはどういう……。

【谷】背中にちゃんと……。

【山下】ちょっと後ろに……ちょっとこれ、谷さんのやつを……。

【谷】わかんないでしょう?

【山下】「dots and lines」……? 「ドットと線」。「点と線」か。

【谷】「点と点」。

【山下】「点と線」?

【谷】「点と点を結ぶ線からなる立体。その中に詰まっているいくつもの異なった世界、および光について」というのがタイトルなんです。

【山下】その哲学的なタイトルが英語になっているということですね。

【谷】そうです、そうです。

【山下】それをビジュアル化するとこうなるわけだ。

【谷】そうらしいです。

【山下】へぇ~。ものすごい難しいですね。

【谷】そうなんです。

【山下】でもおしゃれじゃないですか。

【谷】はい。

【山下】これは『マームとジプシー』の公演のときに買ったんですか?

【谷】いや、これは通販で買いました。

【山下】イーコマースですね。今はやりの。

【谷】ええ、イーコマースで買いました。そうでもしないと、たぶん劇団がやっていけないんじゃないですかね。

【山下】応援ですね。

【谷】ええ。それで、もう1つ流れちゃったのが……。

【山下】『東京ゴッドファーザーズ』。

【谷】はい。これは、チラシはたまたまあったんですけど、これは『妄想代理人』とかで有名な方で、今敏(こん さとし)さん……。

【山下】ああ! 知ってます、今さん。

【谷】今敏さんの原作を舞台化するという。

【山下】今さんって、アニメのディレクションとかをしていますよね。

【谷】そうです、そうです。

【山下】『パプリカ』って今さんですよね。

【谷】そうです。『パプリカ』もそうですね。この舞台はTOKIOの松岡昌宏さんが主演だったんです。

【山下】すごいですね。

【谷】僕も取ってて……これは新国立の小劇場でセンターステージで……対面ですよね。

【山下】じゃあ周り取り囲んで。

【谷】だったんですけど……なので、けっこういい値段なので、僕はあえてB席の2階のセンターを取ったんですよ。それですごく楽しみにしてたんですね。

【山下】囲むからわりと近くから見れるんですね。

【谷】そうなんです。でも残念ながら……。これは9日予定だったので……10日まで中止だったんですね、劇場って。なのでギリギリアウト。それで、そのあとは30日まで、実際は東京ではやってましたし、そのあとは全国公演回ってましたので、見ようと思えばどこかで見れたんでしょうけど……。

【山下】それは、振替をしますというのは……。

【谷】それは、彼のスケジュールとかを考えると無理なんじゃないですか?

【山下】ああ……。谷さんが取っていたチケットはもう払い戻し。

【谷】払い戻しで戻ってきました、これは。これは「人を思うちから」というシリーズで、先月話しました『斬られの仙太』。

【山下】この前テレビでやってましたね。録画しました。

【谷】あれの第2弾だったんですね。そうだったんですけど、残念ながら……ということで、ここまでは、見れなかった作品ということです。

【山下】連休中がわりと見れなかったという感じですね。

【谷】そういうことです(苦笑)

【山下】なるほど。せっかくお休みで楽しみにしてたのに。私は、連休は静岡までキャンピングカーをレンタカーで借りてSPACの公演を見に行ったんですけど、屋外劇なので密も避けて……そしたら、寒すぎたというのがあって本当に寒くて大変だったんですけれども。

【谷】キャンピングカーだったんですか?

【山下】キャンピングカーをレンタカーで借りたんですよ。これからキャンピングカー……来てるし乗ってみたいなと思って。

【谷】なるほど。よく借りられましたね。

【山下】そうなんですよ。「カーステイ」っていうサービスがあって、横浜に住んでいる人の家に行って、その人から借りたんです。

【谷】そういうかたちなんですね。

【山下】使い方を聞いて、「わかりました」って言って……カセットコンロとかも使わせてもらってありがとうございました(笑)。
当日、ものすごい雨が降って……それで大変だったんですけど。

【谷】ゴールデンウィークもちょっと荒れてましたからね。もう、行く気力はなかったですね。そこから取ろうという。

【山下】いやいや……静岡まで2時間くらいかかるから、意外と遠いなっていう感じで。

【谷】そうですね。

【山下】昔はバスが出ていて、SPACの公演に。

【谷】新宿から出ていましたよね。

【山下】そうなんですよ。……というのがあって、谷さんも残念ながら今年の連休はあまり見れなかったんですけど……。

【谷】全部駄目でしたね。

【山下】そのあと1カ月で11本見ている。

【谷】何とか見れました。

【山下】ということで、やっていきたいと思いますが……まず最初、TEAM NACSの『マスターピース~傑作を君に~』。

【谷】いいですか? これで。

【山下】これですね、これがチラシだそうです。

【谷】これ、なかなか手に入らなくて、ちょっと貴重品なんですよね(笑)。

【山下】こんなチラシ初めて見たなぁ。

【谷】TEAM NACSって、今、日本一チケットの取れない劇団なんですよね。

【山下】大人計画より取れないんだ。

【谷】いや、全然! 比にならない。まず、ファンがすごいんですよね。ファンが優先で……。

【山下】じゃあ、ファンクラブに入ってないと取れない。

【谷】ファンクラブに入っている人が、たまたま僕の知り合いにいて、その人は自分で2回押さえて、「お余りあるんですけど行きます?」って言って誘ってくれてなんとか行けた。

【山下】なるほど。それがあったから行けたと。

【谷】とにかく平日の夜じゃないと取れないと思ったので、平日の夜に六本木のEX THEATERって、ロックのライブとかもやっている所なんですけど、そこでやった作品で。

【山下】『マスターピース』。何の話なんですか? これは。

【谷】「マスターピース」って……。

【山下】「傑作」。

【谷】「傑作」。まさに「傑作」なんですよ。「傑作を君に」っていう副題があるんですけど、作は喜安浩平さんで、今はブルドッキングヘッドロック。ナイロンにもおられるんですよね。

【山下】ナイロンです。喜安さん、脚本うまいよね。

【谷】演出はマギーさん。

【山下】ああ、マギーさんが演出したんだ。

【谷】出演はTEAM NACSの森崎、安田、戸次、大泉洋、音尾琢真。

【山下】あ、みんなで演出するんですか?

【谷】いやいや、出演。

【山下】あ、出演ね。

【谷】出演はこの5人だけ。

【山下】マギーさんは出ないけど演出だけする。

【谷】そうそう。マギーさん、何回かやってますね。前にも見たことがありますけど……僕はTEAM NACS3回目なんですけど。
これは、珍しく純和風の話で、昭和27年の真冬の話。

【山下】戦後すぐだ。

【谷】熱海の温泉宿での、シナリオライターが3人……。

【山下】1955年。なんか、小津安二郎と野田高梧みたいじゃないですか。

【谷】アハハ! ……ちょっとこの先がありましてね……。

【山下】あるんですね……。

【谷】新作映画の脚本を執筆のために泊まり込みで、要は傑作“マスターピース”を求めるという感じのやつで……。

【山下】50年代の日本映画! いいねぇ~、面白そう。

【谷】南から上がってきたのかな、このTEAM NACSは。九州のほうから始まって、ずっと北上公演で。

【山下】全国公演なんですね。

【谷】そうです。それで最後が北海道。

【山下】地元のね。

【谷】たぶんできたと思います。札幌……期間3日。北斗市でもやっていますね。
旅館の一室の話なんですけど、昭和27年の……実際に黒澤明が橋本忍 さんたちと、熱海の旅館で『七人の侍』を書いていたらしいんです。

【山下】そのエピソードがベースになってるんですか?

【谷】そう。それを劇中に入れ込んで、「はなれに、黒澤たちがいるよ」とかそういう話で……(笑)。

【山下】面白いじゃないですか~。『七人の侍』の前か。

【谷】それで、この5人は全員一人二役で、女中さん役になったりするわけですよ(笑)。全員早着替えで出たり入ったり、出たり入ったりで……。

【山下】それは演劇ならではの……うけますよね。

【谷】安田顕さんがすごい特徴のある女中さんを……。

【山下】ああ、わかる、わかる。そういう感じですからね。

【谷】声も、あの人の声ってなかなか特徴がありますよね。まあ、面白い系ですよ。

【山下】それは、映画の脚本を書き上げるまでをやるんですか?

【谷】結局、どこまでできたのかよくわかんないんですけどね(笑)。

【山下】アハハ! なるほど。

【谷】そんなもんですよ。

【山下】昔は、50年代は……さっき、小津安二郎と野田高梧って言ったけど、みんな旅館に泊まり込んで書くって言って、夕方になったら酒を買ってきて飲むみたいな、本当に豊かな時代だったと思いますけど。

【谷】そうですね。でも、なかなか書けないっていうので、進まなかったというのは確かだったみたいですよ、このチームはね。TEAM NACSはね。

【山下】なるほど~。

【谷】それが第1本目でした、5月の。

【山下】これが1本目で……これは見た順番になってるんですか?

【谷】はい、見た順番です。

【山下】じゃあ2番目にいきたいと思いますけど……2番目は『家族のはなしPART1 2021』。

【谷】これはチラシがないんですけど……草彅剛くんの舞台で、その2年前、2019年5月に、京都の劇場で上演された『家族のはなしPART1』という……。

【山下】あ! これ、あれですよね。満劇の中治さんが演出を……。
(※ 満劇:正しくは「満員劇場御礼座」大阪を中心に公演をし数年に1回東京でも公演をされていました)

【谷】そうそう! 中治さんが……淀川フーヨーハイさんという名前で作・演出で、もう1人、あべの金欠さんという、2話構成なんですよ。

【山下】それも満劇の人ですね。

【谷】そうです。満劇というのは、作家が所属するサラリーマン劇団。

【山下】元電通関西の人たちが中心メンバーですね。『満員劇場御礼座』っていってたんですけど。

【谷】そうですね。それの草彅剛版で上演して……。

【山下】ええ~、満劇の2人がこれを書いたってすごいなぁ。

【谷】そうなんですよ、すごいでしょ、よく考えると。

【山下】そうだ、京都でやってたやつ思い出しました。

【谷】それで京都でやって、本当は池袋のBrillia HALLでやる予定がコロナで中止になって。だから今年は横浜版しかやらなくて……これは事前告知がほとんどなくて、1本e+かなんかで案内がきてるけど、無理だろうなと思って3階席をポッと入れたら取れたという感じで……(笑)。

【山下】草彅さんだからすぐ売れちゃう。

【谷】草彅ファンにはたまらない企画でしょう。

【山下】どんな話なんですか? 家族というか、草彅さんが……。

【谷】第1話は「わからない言葉」ということで、犬なんですよ。草彅さんが犬。

【山下】ペットなんだ。

【谷】ペット。第2話はご主人様なんですけど、犬は出てこないんですけど、「笑って忘れて」という話で、ほのぼのとした関西らしい話ですよね。

【山下】関西人情喜劇という感じはあると思いますね。

【谷】草彅くんが途中でギターを弾いたりして、けっこうファンとしてはたまらない演劇だったと思いますけど、それなりのいいお値段でございまして。

【山下】まあ、それはそうですよね。

【谷】それで3階というのもあったんですけどね(笑)。

【山下】これは満席だったんですか?50%ですか?

【谷】3階は半分にしてました。1階とかは確か満席でやってましたね。

【山下】じゃあ緊急事態の前に……。

【谷】売ってたからよかったということなんでしょうね。

【山下】それはOKなんですよね。

【谷】これが2話で……1話と2話の間で2時間5分くらいの作品でした。

【山下】中治さんがFacebookで書かれていたのを思い出しました。

【谷】そうですか。ご存じでしたね、さすがね。

【山下】いえいえ……。満劇は、去年コロナで芝居がうてないからというので、映画を作りたいと。それで『となりの肯定ペンギン』っていう映画なんですけど、中治さんがペンギンの着ぐるみに入って、それでクラウドファンディングをやるからというので、僕も3000円だけファンドに寄付させていただきました。

【谷】だけど満劇は関西でしかやってないんですか? 東京公演もある?

【山下】何年かに1回東京でやるんですね。ウッディシアター中目黒とかでやるんですけど。

【谷】じゃあ、今度ぜひ行きたいと思います。

【山下】ぜひ。面白いと思います。

【谷】コテコテですよね。関西風のにおいがプンプンしますよね。

【山下】そうですね。あべの金欠さんのは、まさにそうかな。

【谷】なるほどね。

【山下】それで、淀川フーヨーハイさんの、中治さんのは少しだけ洗練されている感じですけどね。

【谷】ちょっと草彅さんの話しかしなかったけど、一応、小西真奈美さんと羽場裕一さん、あと、これは劇団の人かな。畠中洋さんと小林きな子さん。その5人で全部やっていましたね。

【山下】5人劇なんですね。

【谷】5人劇です。

【山下】なるほど。『家族のはなしPART1』でしたね。

【谷】はい。

【山下】PART2を期待しつつですね。続いて、オフィスコットーネの『母 MATKA』……「MATKA」何て読むんだろう。

【谷】「マトカ」ですかね。『母 MATKA』。

【山下】吉祥寺シアターでやったやつ。オフィスコットーネは面白いのがいっぱいありますよね。

【谷】これはすごかったですね、よかったですね、本当に。

【山下】チラシこれですね。

【谷】増子倭文江さん青年座の方ですね。増子さんと、大谷亮介さんが旦那さんで、あと5人の子供が……米村、富岡……。

【山下】富岡晃一郎さんね。

【谷】阿佐ヶ谷スパイダースかな。

【山下】そうですね。富岡さんは。米村さんは元ポツドールにいらして。

【谷】そうですね。それで西尾……チョコレートケーキのね。あとは林さん、田中さんが5人で。
それで、母と子の、子供たちとの対立の話と、親が子を愛する気持ちとか、子が母親に持つ愛情とかを……要は戦争の話なんですよね。

【山下】「内戦が激しくなり」って書いてあるね。

【谷】もともとこれは、カレル・チャペックってチェコの作家さんで、『園芸家12カ月』っていう、けっこう有名な本があるんですよ。僕は、作家で園芸家であることは知ってたんだけど、戯曲を書いていることは知らなかった。

【山下】「園芸家」って、緑を育てる園芸?

【谷】そうです。けっこう有名な本です、これ。新書版で出てるかな。48歳で亡くなった年の最後の作品だそうです。

【山下】これをお書きになって。

【谷】これ、やっぱり何がすごいかというと、オフィスコットーネの綿貫凜さんというプロデューサーが、本当に上質な作品をセレクトしてくれるんですよね。

【山下】そうなんですよね~。本当に、綿貫さんはすごいですよね。

【谷】今年の1月に、下北の駅前劇場で『墓場なき死者』っていうのをやったんですけど、それもオフィスコットーネで、演出は同じ稲葉賀恵さん。

【山下】この人、僕知らない……文学座の人なんですね。

【谷】そうそう。この人の演出がなかなかよい。若い女性なんですけど、すごくよかったですね。終盤、母親の増子さんが……長いモノローグがあるんですけど、それがすごい心にしみるもので、それと、後ろに布が、ジョーゼットっていうんですか? ……があって、そこに光とか影、人の影とかがうまく演出されて、本当に作・演出がうまくできたやつだなぁと。それでこれ、たまたま……この時期にポストトークというか、アフタートークってないんですけど、僕が行ったときは……。

【山下】誰がいらっしゃったんですか?

【谷】5人の息子と、綿貫さんと稲葉さんで、そういう面子でやってくれてすごい価値あるトーク……すごい自由なんですって、稲葉さんの演出が。

【山下】そうなんですか。

【谷】何人かが、さっき言った『墓場なき死者』、1月の公演に出てたらしいんですけど、そのときと真逆の演出だって言ってましたね。そっちはもっと緊迫した……。

【山下】谷さんは墓場なきもご覧になったんですか?

【谷】見ました。

【山下】それも翻訳劇?

【谷】翻訳劇です。だからサルトルです。

【山下】あ、サルトルか! なるほど、ジャン・ポール・サルトルの戯曲。

【谷】そう。ジャンポール・サルトルが戯曲を書いていたとは知らなかった。

【山下】そうだそうだ、書いていたんですよね。

【谷】そういう感じで、このオフィスコットーネプロデュースはけっこう……日本ものもありますし、海外ものもあるし、けっこうおすすめいたします。

【山下】綿貫さんが命を懸けてやってますよね。

【谷】ええ。

【山下】今度公演があったら行きます。

【谷】ぜひお願いいたします。

【山下】ラインもらってたので、行こうと思ってたんですけど、なかなか行けなくて。

【谷】これは本当におすすめだったんです(笑)。

【山下】続いて4つ目ですけど、演劇集団 Ring-Bong『みえないランドセル』。こまばアゴラ劇場。

【谷】これは、僕がアゴラ会員なので行ってきたんですけど、『みえないランドセル』っていうやつです。

【山下】山谷典子さん。

【谷】山谷典子(やまや のりこ)さんで、演出が藤井ごうさん。出演者はいっぱいおられます。

【山下】藤井ごうさんは、アカデミアでも講師で来ていらして、すごくいろんな演出をされてますね。

【谷】山谷さんが、自らが3歳のお子さまがいるらしいんですけど、育児ノイローゼというか、孤立感をもとに戯曲化した……。

【山下】だから『見えないランドセル』なんだ。

【谷】片や、この主人公はシングルマザーで赤ん坊と2人きりで、自粛も含めて家にこもったままで、心配した助産師さんがいるんですけど、その人がアパートを訪問したら……というところから始まる話で。

【山下】意味深な、意味ありげな感じですね。

【谷】その母親というのが、もともと自分も育児放棄されてしまった子供だったので、育て方がよくわからないというか、虐待が子供にも連鎖しちゃってるんですね。

【山下】それはよく言われますよね。

【谷】僕も初めて聞いたんですけど、「アタッチメント障害(愛育障害)」というんですって。というのを描いていまして、要は、人との出会いやふれあい不足から、このようなことが現実化しているのが現代だというのを、山谷さんは訴えたかった。

【山下】これは現代日本の話。

【谷】そうですね。まさにそうでしたね。これはけっこう長くて、換気休憩もあったんですけど2時間半の作品で、けっこう最初は重くて重くて……だけど最後のほうは……要はハッピーエンドで終わるので、これは晴れやかに帰れましたね。

【山下】演劇のいいところって、ものすごくひどいのを見せられても

【谷】救われるんですよね。

【山下】そう。ひどいのを見ても救われるっていうのが演劇の不思議なところで、ハッピーエンドを求めなくてもいいんじゃないかというのが、演劇をたくさん見ることによって僕はそれが培われましたね。
ハッピーエンドじゃないと駄目とか、ハッピーエンドじゃないと面白くないとかっていうのが以前はあったけど、決してそうじゃない。

【谷】そうじゃなくて、最後「あとはご想像にお任せします」で終わる終わり方もありますし。

【山下】今、映画もそういうのも増えてきましたけど、やっぱりそれは社会が成熟していったのかなという気がしますよね。

【谷】「ここからはご自身でお作りください」という感じありますよね。

【山下】そうですよね。考えるという、ポンと突き放すのも一つの芸術のやり方ですもんね……本当にそう思います。
そして……これは私も見たんですけど、今月見た中で、谷さんと唯一同じ作品を見たのはこれですね。コマツタイトウ……。

【谷】「小松台東(こまつだいひがし)」です。

【山下】失礼しました(笑)。

【谷】アハハ!

【山下】見てるのに、間違えました(笑)。小松台東『てげ最悪な男へ』。

【谷】三鷹市芸術文化センター 星のホール。前回、ゲストに来ていただいた森元さんがやられてる所ですね。

【山下】「小松台東」というのは、宮崎県に「小松台東」という地名があるらしいんですね。

【谷】「小松台」というのがあって……僕、調べたんですよ。森元さんに言われて。

【山下】アハハ!!

【谷】そうしたら、「小松台」というのがあって、北と南はわからないけど、少なくとも東と西はありましたね。地図を見たらありました。

【山下】小松台東って、どんな所か行ってみたいですよね。

【谷】ええ。全編が宮崎弁で、ここで言う「てげ」というのは、「とても」とか……。

【山下】「超」みたいな。

【谷】「超最悪な男」。この松本哲也さんというのは、嫌われ者を演じさせたら日本一じゃないかっていう感じなんですけど、さらに松本さんよりも悪い奴がいるっていうのがありまして……。においがありまして。

【山下】戯曲には書かれてないんだけど、そこをにおわせてるっていう感じですね。

【谷】そうですね。これも休憩を入れて2幕構成で、もう忘れちゃってたんですけど……そのまんま東、東国原知事が宮崎県知事だったじゃないですか。その頃の2007年と、コロナ禍の今、2021年の2部構成。
主役が小園茉奈さんという、ナイロン100°Cの若手なんですけど、最初に松本さんからオファーされたときは、「出てくれる?」って言われて、「主役なんだけど」ってあとで聞かされたって(笑)。

【山下】それ、僕も読みました。

【谷】ということで、初の主役を演じさせられたと。

【山下】最初、彼女が2000何年かで高校生で……。

【谷】恋する乙女だったんですよね。

【山下】それで30何歳くらいになって……。

【谷】30過ぎの……前後半、高校生と30歳過ぎというのをやってるんですけど、ある意味の復讐劇なんですよね。

【山下】なのかなぁ?あとは地域共同体で、親戚関係から逃れられないのを描いてるから、これはやっぱり地方が舞台じゃないとああいうのは描けないなと。

【谷】狭い世界でね……描けないですね。面白かったですね。

【山下】あと、戯曲外にあるいろんな……「葬式に一緒に行ってくれ」とか、あれもたぶん反社会的な人の話だと思うんですけど、そういったことをうまくにおわせてやってるのが……多くを語らなくてもいいんだなということが、やっぱりこの小松台東のいいところじゃないかな。

【谷】最初のほうにトロフィーの話があったじゃないですか。あれがやたらと面白くて……(笑)。

【山下】「トロフィーを買ってあげました」っていうので、「俺はもらったことないけど、買ってあげたからもうもらったんだよ」とかっていうセリフが出てきてましたけど。

【谷】もらったことがある人と、あげたことがある人っていうことを説明してましたけど……ああ、そういう考え方ってあるなぁと思って。

【山下】面白いですよね、ものの見方が。あと、本当にしがらみから逃れられない人たちというのは、やっぱり我々の中に根っことしてありますよね。

【谷】松本さんというか、小松台東は、9月にスズナリで再演がありますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。私も行きます。

【山下】ということで、続いて6本目ですけど、玉田企画『サマー』小劇場B1 という、こういうチラシですけど、かわいい……。

【谷】小さいんです。

【山下】玉田マサヤ、シンヤ……?

【谷】玉田真也(たまだ しんや)さん。

【山下】玉田真也さんという、玉田企画というところの舞台なんですけど、これはどんな感じだったんですか?

【谷】これは小劇場B1でやったので……小劇場B1って難しい構造でL字型なので、どこで見るかというのをいつも悩むんですよ。

【山下】正面からか横からかという。

【谷】僕は整理番号が若い番号だったので、入口を入ってすぐの正面じゃないほうの一番下手側。要は中央辺りで、たまたま博報堂の某氏と会いまして、並んで見ました。

【山下】どうでした?『サマー』って夏の話?

【谷】いや……これ、僕よく考えてみると夏の話じゃないので、何で『サマー』なんだろうなぁ……と思って。

【山下】夏という意味じゃないんですか? これ。

【谷】たぶん……それで、僕も一応調べたんですよ、辞書で。「サマー」って、「盛り(さかり)」というのがあるから、「盛り」なのかなぁ……と思って。

【山下】「盛り場」の「盛り」?

【谷】要は、お盛んな「盛り」ですね。

【山下】なるほど!

【谷】数組の男女2人の関係が、三角関係になったり……。

【山下】玉田さん、そういうの得意じゃないですか。

【谷】そうそう。

【山下】うまいですよね。

【山下】映画なんかもそれでやってますし。それが、最終的に全員が一堂に会して……会話劇なんですよ。それで、あるあるなんですけど……ないないって言ったらないないなのかもしれないけど、監督役が神谷さんって、テニスコートというお笑いの……。

【山下】知らないです。

【谷】そうですか。今度、渋谷コントセンターで玉田さんと一緒に出るんですよ。

【山下】だから、玉田さんコントやるんだあ。

【谷】そうそう。カメラマン役が玉田さんなんですけど、要は情熱大陸みたいな番組を撮ってるチームと、それの周辺の人たちの話なんです。それで、玉田さんが目黒川にメモリーを落としたというオチなんですけど……(笑)。

【山下】やばいじゃないですか、それ……ちょっともう、東北新社的には笑えないですよね。

【谷】収録の何カ月分が吹っ飛んだっていうやつで(笑)。

【谷】それは怖いなぁ。収録メディアは最も大切なものなので。

【谷】それで「バックアップ取ってるよね?」って……「取ってないっす」……(爆笑)。

【山下】アハハ!!! あるあるですね。いえいえ……ないですよ、あるあるじゃないですよ、本当。

【谷】いつまでかなぁ、2000円で配信やってますよ。面白いですよ、これすごく。

【山下】『情熱大陸』はうちも作っているじゃないですか、東北新社も。他人事じゃないですよ~。

【谷】『情熱大陸』とは語ってないですけど……。

【山下】ドキュメンタリーということですね。

【谷】そうそう。料理人の話を追いかけてずっとやって、最後打ち上げまでやって、玉田さんが来て「メモリーないっす」……(笑)。

【山下】というので終わるんだ。

【谷】そうそう、そんな感じですよ。

【山下】面白いですね。これは、谷さんもお好きなヌトミックとかロロの人も出てるんですね。

【谷】そうですね。深澤さんの……。

【山下】あとは森本さん。

【谷】そうですね、森本華さんがロロの方で。

【山下】玉田さんは、この前もドラマの脚本も書かれてましたけど。

【谷】そうですね。前に言ったのは『40万キロかなたの恋』ですけど、香取慎吾くんが出ていた『アノニマス』も書いてますし……。

【山下】ああ、あれも書いてたんですか!

【谷】あと映画で、スマッシュヒットだけど『僕の好きな女の子』って、この次に出て来る奈緒ちゃんが主人公。
あと、玉田さんは『東葛スポーツ』にも出て……ラップをやってますから、森本華さんとか、そこら辺はみんな……。

【山下】仲がいいんですね。

【谷】そうですよね。

【山下】玉田さん、今度はコントもされるっていうから……いろんなことに挑戦されていますね。

【谷】企画ができる人なんですよ。だから、本当はうちみたいな会社で……うまくこの人を捕まえて何か一緒にやればいいんですよね。

【山下】メモリーはこっちで保管しておけば大丈夫ですから。

【谷】そうそう(笑)。

【山下】そこだけちゃんとしてあげれば。

【谷】玉田さん自身はちゃんとした人ですからね、メモリーは失くさないと思います(笑)。

【山下】そうですよね。大変失礼しました。玉田さんの玉田企画でした。

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-《音源ここまで》・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/)

☆いつもご依頼をいただきありがとうございます。
映画、ドラマ、小説など、私はハッピーエンドのお話が好きなので、「演劇はひどいのを見ても救われる」という感覚がわからなくて、とても不思議に感じました。演劇はほとんど見ていないので、きっとたくさんの演劇作品を見ていると、この感覚がわかってくるのかもしれませんね。
『BRAIN DRAIN』をいくつかお聞きしていて、まだまだ知らないエンターテインメントがたくさんあって、新しい世界に少し触れることができてとても楽しいです。ありがとうございます。
引き続きのご依頼をお待ちしております!
ブラインドライターズ 担当:小林 直美 

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