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シミュレーションウォーゲームに感銘を受けた話

これは、ボードゲームに交わるエトセトラ Advent Calendar 2021の12月8日の記事です。

先日のゲムマ秋にて、以前から気になっていた「ドイツ戦車軍団」が少し安く出てたので購入した。で、やってみたところ自分が思った以上に良く、というか今年一番衝撃を受けたゲームと言ってもいいくらいだったので、どのように良かったか言語化しようと思う。

私は本格的な(ボードの)ウォーゲームはやったことがない。が、ファミコンウォーズシリーズや大戦略シリーズなど、デジタルのウォーゲームならそれなりに遊んだ。いや、遊びまくった。それらはどれもだいたい同じパターンで

  • 1つの敵を複数のユニットで取り囲み

  • 遠距離攻撃で一方的に攻撃

  • 弱らせたところを隣接攻撃で反撃を受けつつ攻撃する

  • そうやって敵のユニットを倒しながら少しずつ前進し

  • 最後は相手の本拠地を囲んでボコボコにする

というパターンだ。面白かったし熱中して遊んだが、戦略のようなものがあったかといえば疑問で「とにかく力で押す」という感じだった。ユニットの生産ができるのも特色で、倒しても倒しても(あるいは倒されても倒されても)工場で作れば何度でも出てくるので「戦争は経済力(=生産力)の強い方が勝つ」ということを教えられている感もあった。これらの経験は「面白かった」というイメージもあった一方、「またあのパターンかな…」といった若干のマイナスイメージも残った。本格的なウォーゲームも同様に、史実を再現するための細かいパラメータが多いだけでゲームの本質は変わらないのではないか?複雑さは増してもかえって計算がややこしいだけではないだろうか?みたいなイメージが自分の中に少しあった。


話を「ドイツ戦車軍団」に戻そう。
「ドイツ戦車軍団」は入門用のウォーゲームとして評価が高い作品で、1つの箱に4つのゲームが入っている。1つめのマップは「エル・アラメイン」。入門用ということでルールも少なくプレイ時間も30分ほど。説明書もそれぞれのゲームごとに分冊されていてわかりやすい。早速やってみる…と言っても1人2役のソロプレイなのだが、歴史要素のおかげで机上で歴史上の戦いを再現している、あるいは検証しているような感覚がありソロプレイでも虚しくない(笑)。

 結果はドイツ軍の圧勝に終わった。入門用だからかな?と一瞬思ったが、いや待てよ。本来は2人でプレイするものだから逆の立場だったらどうなんだ?と思い、今度は連合国の立場に気持ちを寄り添わせて再戦。しかしまたしてもドイツ軍が圧勝。点数はないけどダブルスコアぐらいの勢いで勝った。というのも、ドイツには移動力・攻撃力共に高い機甲部隊がいくつもあるのに対しイギリス軍は弱小。その上、守れなければ負けとなるエリアが広範囲に渡ってある。「なんかおかしいな…」と思い付属の解説書(これがすごく充実してて良い)を読むと、史実ではロンメル率いるドイツ軍がついに攻めきれず敗北している。そしてこのゲームにおいても連合軍側がやや有利なように作られていると書いてあるではないか。さらに指南書を読むと戦線を構築し敵を回り込ませないようにせよと書いてある。

 なるほど、そういうことか! このゲームでは攻撃が成功しても後ろに後退するだけで簡単には壊滅しない。包囲されていて逃げ場がない時やクリティカルヒットした時だけ壊滅し盤上から消える。逆に言うと包囲されなければ弱くても粘れるルールとなっている。またユニットの周囲1マスは支配地域(ZOC)と言って相手のZOCに踏み込んだら必ず立ち止まらなければならない。これを利用し味方同士が手を広げるように並び、ZOCの壁を築くことで相手ユニットの突撃を止めることができる。こうして時間を稼ぎ、4ターン凌げば、ドイツは燃料切れ連合軍は援軍が来る設定により勝利ということだ。

 つまり… 「のび太の壁」を作って殴られても殴られても倒れず後ずさりで踏みとどまりジャイアンを通さない。そして時が来るのを待つ。じっと耐えて待つ。とは言え簡単なことではない。強烈なパンチにめちゃくちゃ後ろに吹っ飛ぶこともあるし、倒されて退場することもある。そのたびに陣形を立て直し、代わりののび太君をどこかから補填し防衛ラインに穴が開かないよう修復しなければならない。ギリギリ守れるか守れないかの戦いだ。

 続く2つめのゲームは「ダンケルク」。これも圧倒的武力で一方的に攻めるドイツ軍と守る連合国という図式。が、ドイツ側は「相手の包囲」、連合国側は包囲されないよう「退路の確保」が目的となっていて、エル・アラメイン同様、ZOCによる戦線構築がカギとなっている。

 この「戦線を構築して守る」手法はどうやらウォーゲームの基本手筋らしい。なんとなくウォーゲームと言うと互いに殴り合い、力が強いほうが勝つみたいなイメージがあった。実際私がこれまでやったのは相手を取り囲んでボコボコにするものばかりだった。ところが今回やったゲームでは、守備側は殴らずグッと耐え続けるのだ。殴り合わないことが勝利につながる(時々殴るけどw)。ある意味、なんと平和的教訓に満ちたゲームだろうか!

他にも、3つめのゲーム「ハリコフ」ではマップが2倍の広さになり、敵味方共に援軍がドカドカやってきたり、高速移動できる線路も登場する。ヤバい、めっちゃ面白そう。さらに4つめのマップ「コンパス作戦」もある。

 元版は1982年発売と実に40年前のゲームなのだが、そんなわけでドイツ戦車軍団、個人的に今年一番と言っていいくらい衝撃を受けたのでした。


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