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冬の東北・日本海紀行-雪景色を求めて

「冬なんだから、雪景色が見たいんだよねぇ。どうせなら、冬の荒れた日本海」……そんなことを思いながら旅程を思い描いていました。2月の3連休、そのうちの2日間をもらって行くことにしました。

3連休の初日は大変混むと予想され、案の定、予約サイトを見ると、乗ろうと思った列車はかなりの混雑です。ところが、連休中日を見ると一気に空席がありました。あまり大荒れになってしまうと運休になってしまいますが、どうやらそれもなさそうです。

というわけで、連休中日から、1泊2日の冬の東北・日本海への乗り鉄の旅に出発することにしました。
1日目は上越新幹線で新潟へ出て、そこから羽越本線を秋田へと向かい、角館へ行った後、秋田内陸縦貫鉄道に乗って鷹巣、宿泊地は大館という旅程。2日目は大館から東能代へと出て、五能線でぐるっと回って、新青森から新幹線で帰京するというプランです。羽越本線、五能線という冬の日本海を堪能するにはもってこいの絶景路線に加え、超絶豪雪地帯を走る秋田内陸線もまた楽しみのひとつです。

旅のお供は、10月の北海道旅行と同様、スマートフォン「Google Pixel 7a」です。一眼レフカメラは置いていきました。

まずは、始発列車で自宅最寄りの小手指駅を出発します。秋津駅から新秋津駅へと歩き、こちらも武蔵野線の始発列車で武蔵浦和へ。埼京線に乗り換えて大宮駅に着いたのは朝の6時前でした。

小手指駅に入線してくる始発列車
武蔵野線に乗り換え
武蔵浦和からは埼京線

大宮からは上越新幹線に乗りますが、びっくりしたのは、大宮駅の新幹線乗換口が開くのは朝6時であること。シャッターが下りた乗換口を見るのは貴重でした。

やがてシャッターが開き、6時33分発上越新幹線始発のとき301号に乗車します。上越新幹線も、いつの間にか、車両のほぼすべてがE7系になりました。コンセント付きというのは、やはりありがたいですね。

新幹線乗換口はまだシャッターが
6時33分発とき301号に乗車

上越新幹線は3連休中日とはいえ、それなりの混雑でしたが、そのほとんどが途中の越後湯沢で降りていきました。越後湯沢から先はガラガラ。今年は雪が少ないとは言いますが、上毛高原や越後湯沢、浦佐あたりではそれなりの雪景色も見ることができました。

越後湯沢駅付近の雪景色

そして列車は大宮からおよそ1時間半、8時10分に新潟駅に到着。いつの間にか雪はすっかりなくなっていました。
新潟では、10分少々の乗り換えで、特急いなほ1号秋田行に乗り継ぐことができます。新幹線ホームから階段の昇り降りなしで改札を抜けるとすぐ特急ホームがあり、本当に便利になりました。

新潟に到着。改札を挟んでホーム反対側が在来線
特急いなほ号はE653系で運転

大宮から新潟までは実キロ269.5kmありますが、そこをわずか1時間37分で駆けてきますが、ここから8時22分発特急いなほ1号秋田行に乗っていくと、終着秋田到着は3時間35分後の11時57分です。距離はだいたい大宮から新潟までと同じ273kmですが、3倍近い所要時間がかかります。新幹線恐るべし、ですね。

羽越本線の楽しみといえば、何といっても日本海です。日本海を存分に拝むなら、特急いなほ号はA席、それも秋田方面行の場合は奇数番号の席を予約すると、窓の桟にも掛からず楽しめます。

新潟県北部の笹川流れから始まり、山形県の鶴岡の手前まで、その後は山形と秋田県境付近、そして羽後本荘から秋田の手前にかけても日本海を拝むことができます。あいにくというか幸いというか、日本海はあまり荒れておらず、雪もほとんどありませんでしたが、晴れたかと思えばあっという間に灰色の雲が広がって荒涼とした風景になるなど、存分に風景を楽しみました。

羽越本線の車窓(晴れ間がのぞいていました)
羽越本線の車窓(一気に曇りました)

さて、列車は定刻に秋田に到着。秋田市も雪がまったくありません。以前、真冬の秋田を訪れたことがありますが、その時はかなり積もっていた記憶があります。今年はやはり記録的な暖冬なのでしょう。

秋田らしい車両の並び

冬の日本海を楽しむなら、羽越本線、そして五能線です。実は秋田を午後に出る快速リゾートしらかみに乗れば、夕方すぎに新青森に着くことができて、その日のうちに東京へ戻れるのですが、それではあまりにもったいない。この機会に、豪雪地帯で知られる秋田内陸縦貫鉄道に乗っておこう。そう思って、秋田からは少し南へと下って、秋田新幹線こまちで角館へと行くことにします。

こまち24号に乗り込みます

3連休の中日の昼ですが、東京行の新幹線こまちはかなりの乗車率でした。スイッチバックする大曲駅まで後ろ向きに走ります。私はどうにもこの後ろ向きに走る風景を見るのは苦手です。大曲からは進行方向通りに進んでいきいささか安心します。秋田出発から40分で、秋田内陸線の乗換駅、角館に到着しました。

角館に到着

角館駅で目に付くのがこの「あきたびじょん」なる大きなポスターです。「よ」がものすごく小さく書かれていて、ぱっと見は「あきたびじん」に見えますね。写っている女性はいかにも秋田美人と思われる美しい方です。

この角館で1時間ほど時間があります。角館の駅前にはあまり飲食店はないのですが、JR東日本運営のホテルフォルクローロ角館の中にあるレストランはやっていました。ここで秋田名物、稲庭うどんをいただきました。

角館駅ホームにあるポスター
お昼をいただいたホテルフォルクローロ角館
美味しい稲庭うどんをいただきました

発車10分前になって秋田内陸線の改札が開きました。ほぼ1番乗りで乗り込み、西日もまぶしくない車両右側のボックス・窓側の席を確保できました。ボックスのテーブルにはかわいい路線図があり、そして車内には秋田犬の写真がいっぱい飾られています。

秋田内陸線に乗車
テーブルの路線図もかわいいです
車内には秋田犬の写真でいっぱい

やがて春節が始まったばかりの台湾の観光客が大量に乗車。車内は立ち客が出るほどの大混雑でしたが、ほとんどの皆さんが松草で降りられました。あっという間に車内は閑散とします。そうこうするうちに雪が激しく降ってきました。さすがは豪雪地帯を走る秋田内陸線。この雪景色はやっぱり一度は乗ってみておくべきですね。

雪が激しく降り出しました
前面展望も大迫力です
ボックスシートから眺める雪景色、最高です
途中阿仁合駅も激しい雪模様

阿仁合からは再び多くの乗客が乗り込みました。そして、角館から乗り続けること実に2時間半。16時22分に秋田内陸線の終点・鷹巣に着きました。
ここからは、今日の宿泊地、大館へJR線で向かいます。そういえば、秋田内陸線は鷹巣、JRは鷹ノ巣。なぜこの違いなんでしょうね。

鷹巣にはもう雪がありません
鷹ノ巣からは701系で大館へ

大館というと勝手に雪深いイメージを抱いていましたが、ほとんど雪はありませんでした。大館市ではちょうどこの3連休期間中に「大館アメッコ市」というイベントが開催されており、駅ホームにも、駅前にある忠犬ハチ公の銅像の前にもアメ飾りがありました。そういえば、忠犬ハチ公は、ここ大館の生まれなんですね。

大館駅に到着
特急つがるとアメ飾り
忠犬ハチ公の銅像

今日宿泊するのは大館駅から一番近いホテル、ロイヤルホテル大館です。このホテル、何と夜鳴きそば(ラーメン)があります。夜鳴きそばサービスというとホテルドーミーインの専売特許かと思っていたのですが違うようですね。しかもここは半ライス付き。美味しく頂戴しました。

宿泊したロイヤルホテル大館
夜鳴きそば(ラーメン)美味かったー!

翌朝は細かな雪が降っていました。そういえば大館駅の駅舎、新しくなったのですね。調べてみたら、11月に竣工したばかりとのこと。駅前ロータリーはまだ絶賛工事中でした。

新しい大館駅舎

さて、大館駅7時05分発の列車でまずは東能代へ向かいます。もう少し遅い時間に列車があるとうれしいのですが、あいにく次の列車だと乗換に間に合いません。乗るのはオールロングシート、青春18きっぷユーザーからは忌み嫌われている701系ですが、雪景色の中で見るとなぜか暖かな雰囲気を感じます。

大館から2日目最初の列車に乗車

大館を出るとだんだんと雪が激しく降ってきました。40分ほど走って東能代に到着する頃には列車の背面にはびっしりと雪がこびりついていました。

雪でびっしりな後ろ姿

ここ東能代で快速リゾートしらかみに乗り換えます。たっぷり1時間半くらいの待ち時間。雪が激しく降ったかと思えば、急に晴れ間がのぞいたり、冬の時期らしい猫の目ぐるぐるな天気。東能代駅は乗換ターミナルなだけで、能代市の中心街は隣の能代駅にあります。駅前には喫茶店すらなく、駅の中の無人の売店があるくらいでした。ですが、ホームにはバスケの街らしく、バスケットゴールがあったほか、何とホーム待合室にはキハ58の運転台までありました。

東能代駅舎
バスケットゴールがホームにあります
ホーム待合室にはキハ58の運転台が

9時過ぎ、2日目のメインとなる五能線快速リゾートしらかみ1号がやってきました。充当されていたのは「くまげら」編成。第1編成の「青池」、第2編成の「橅(ぶな)」は既に2代目となるハイブリッド車両が投入されていますがこの「くまげら」編成は2006年導入当時のキハ40系がまだ使われています。

東能代にリゾートしらかみが入線

連休最終日ですが、車内は空いています。中国人観光客が何名かいらっしゃいますが、空席が多く静かなものです。
列車は八森を出る頃から海岸線を走るようになります。本当に波打ち際を走ることも多く、また、少し低いところを走りますので、昨日の羽越本線と比べると格段に迫力があります。

五能線は海岸線を走ります
深浦付近では有名な岩場沿いを走ります

沿線の中心的な駅である深浦駅(と言っても深浦町の人口は6,000人ちょっと)を過ぎると少し晴れ間ものぞいてきました。そして鯵ヶ沢駅からは津軽三味線の奏者が乗り込み、1号車で演奏をしてくれます。私も少しだけ見てきました。

鯵ヶ沢から五所川原まで津軽三味線が聴けます

鯵ヶ沢からは内陸に入り、川部でスイッチバックして、弘前へと寄って、終着青森へ向けラストスパート。13時21分、東能代からたっぷり4時間をかけて到着した新青森は晴れ間が広がっていました。

新青森に到着

13時を過ぎていますが、まだお昼ご飯を食べていません。新青森駅併設の商業施設へ行き、お土産とお昼を食べることにしました。
入ったのはラーメン屋さん。太宰治が好きだったといわれる根曲竹とわかめがたくさん入った「太宰らうめん」を注文しました。

注文した太宰らうめん

これがまた本当においしい。あっさりしていて、心があったまります。

ところが、食べていると、器の中から何か文字が見えてきました。何だろうと思いながら食べ終わって見えたのは「人間、失格 もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。」という文字。はい、ラーメンばっかり食べている私、人間失格です。いやいや、これは太宰治の代表作「人間失格」の一節ですね。

ラーメンばっかり食べていると人間失格です

新青森からは東北新幹線で帰ります。新青森駅構内にはねぷたのミニチュアなどがあって、青森感満載でした。臨時の新幹線はやぶさで帰路に。3連休最終日だけに仙台からは満席でしたが、窓側席を確保できたので帰りは爆睡して帰りました。

新青森駅構内
東北新幹線はやぶさで帰京

こうして、大満足の冬の東北、日本海を巡る旅が終わりました。今年は記録的な暖冬で雪は少なかったですが、それでも秋田内陸線の雪景色はよかったですし、羽越本線、五能線の日本海もきれいでした。そして何よりごはんが美味しい。特に最後のお昼の太宰らうめん。人間失格になるくらいの素晴らしいお味。また食べに来たいですね。

(掲載写真はすべて筆者撮影)

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