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生贄羊と獣の檻(第三回逆噴射小説大賞素振りにして予告)

線を入れる。俺の嫌いな羊葉の肌に。真っ白な首に。ゆっくりと、バターを切る様に丁寧に。

赤くうねる檻の中での死闘は、いよいよ終わりを迎えようとしている。

「………ぅッ」
「眠れ!俺の手の中で!眠れ!この乾いた大地で!」

俺は力を緩めない。
描いた線が頸動脈にぶち当たる、彼女にイノチは残されていない。
そして、痛みを感じるのは俺じゃない。

ぶかぶかのスタジャンに染み込む奴の血。彼女の肉の牢獄から、全部引き摺り出してやる。

彼女が逃げて、俺がこうして妖術師。何の因果。

「生贄はお前だ、悪魔でも女神でもなく俺の為に!」

漸く終わる。彼女の夜のような藍色の目から生気がなくなる。

ここに来るのに、様々なものを犠牲にした。まず数分前に剃刀で切った俺の手首。不思議なもので、まだ失血死しない。

血と言えば、処刑台となったスクランブル交差点で俺は軽く100人を殺した。女子高生にサラリーマン、とにかく通行人。全部俺の生贄だ。
血を操るこの力。毎日誰かの血を吸いたい衝動は、全部この日の為にあったのだ。裏社会を束ねる『魔王』を倒したという恨めしき羊葉も、血の檻地獄には歯が立たないのだ。ホント、彼女の代わりに実験体になってよかった。

この後はどうしよう。魔王はいないし、俺が今いる夜灯とビルが見下ろす灰色の街を、裏から操ってもみようか。どうせ俺は無敵なのだから。

「……ない」

「ああ?」

「……彼らには関係ない」

彼ら?生贄のことか。

「黙れ。俺がこんな魔法を覚えて血の海作ってンのも、お前を殺すためだったんだよ!つまり完全にお前の仕業だ!」

「悪いけど……心当たり……ない!」

アッパーが顎を抉る。どうしてだ。血の池に倒れる俺。

「もう一つ」

彼女は立って、勢い付けて俺の方へと向かってくる!

「……あと30秒。私が死ぬまでの時間」

ようやく分かった。

彼女が魔王を倒した理由だ。

こいつ、気合で向かってくる。まるで狂った山羊じゃないか。

地獄の鐘の音が聞こえる。

【続くしこれは予告編】

Q:これは何?
A:
俺のブラザーに三題噺のネタを貰って書いているものを逆噴射小説大賞レギュレーションに照らし合わせて予告編として抽出したものです。本篇が素振り扱いなのは単に自分が書いているシリーズ「B&O」にめちゃくちゃ近いというかモロB&Oだからだ。つまるところ応募レギュ違反!

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