見出し画像

作ろう!TRPGのソロシナリオ!(GM・KPレスシナリオの作り方)

はじめに

とあるディスコードサーバーで、「TRPGのソロシナリオってどう作るんだろ?」というお話があがり、自分の知見を纏めたら6000文字を超え始めたので、これはnoteに上げないとな、と思って公開します。

システム問わず利用できる方法なので、たぶん役立つはず。
基本的には普通のTRPGのシナリオメイクの応用だったりします。
人によってやり方が色々あるので、ほかにもTRPG勢が居たら「俺ならこうしてる」とかはある あくまで「オレ工法」なのでよろしくです。

とりあえず「TRPGなんも知らんけどとりあえず作れる」を目標に、ちょっと書いてみました。

(i):目的を決める

例えば、ファンタジーなら「宝を取ってくる」とか、サイバーパンク系なら「企業重役を始末する」とか、ホラーなら「脱出する」とか。

だいたいが「差し迫った危機」か、「やると確実に利益がわかる」ものを決めると良い。なぜならプレイヤーが基本一人で遊んで貰う為に作るので、
頭のどこかに目的を置いていても頭のメモリを食わないからだ。つまり分かりやすければ分かりやすいほど良い。
たぶんこの辺は

  • 取ってこい

  • 逃げろ

  • 倒せ

のどれかに分類される(はず)。方法はともあれ。

で、今自分が作ってるのは新クトゥルフ神話TRPG(いわゆるCoC7th)向けなので、無難に「脱出する」とした。生き残るってのは最大の動機だ。


(ii):敵を決める

この敵というのは、大まかに「大ボス」「中ボス」「ステージ」のこと。
やはりファンタジーの例で行くと、
「大ボス:ホブゴブリン」「中ボス:巨大狼」「ステージ:廃墟の砦」という感じ。
こうして節目となる敵を決めることで、ザコとか謎とかを考えやすくなる。

たとえば、大ボスにはゴブリンがたくさん、巨大狼には狼の群れが付いてる感じがするという感じだ。

あと、なんでここでステージを決めておくかというと、単純にストーリーを決める時に「これは登場しないだろう」という線引きが容易になるのと、単純にステージギミック決めのためだ。
例えば廃墟の砦なら、すぐに想像できて、話に組み込める脅威として「見張り台」とか「罠の扉」だとかを思い浮かべやすくなる。
逆に、廃墟の砦に「古代エルフの喋る木」とかは登場させるのに一工夫いるよね、みたいな。

こうして、「どこに何がいるか」を最初に置いとくと、あとあと楽になるわけ。(手を抜く準備をするとも言う)

ちなみにこの中ボスというのは別に「強すぎるエリア」でも良い。ダークソウルで言うと、道中の方がキツいステージがそれにあたる。

そういう時でも、とりあえずゴールにブチのめすべき目標を置いておけば、とにかくスッキリと作りやすい。なんであれ、強敵を打ち負かしたときの爽快感に勝るものはない。

というわけで、ファンタジーならもうこれで「ゴブリン軍団がお宝を盗んだから、廃墟の砦に向かい取り返せ」というクエストが発生する。
ね、簡単でしょ?)

で、俺が今作っているホラーシナリオで決めたのは、

「大ボス:お前を生贄にしようとするゴシック魔女(インパクトが欲しいので、タッパも良くて自称200歳というキャラ付けをした)」
「中ボス:魔空間(死のデス・ダンジョン)」
「ステージ:嵐の中の汚い四畳半(魔女の部屋なので内側から扉は開かない)」

……中々に味が濃いなぁ。

これと上で決めた目標を組み合わせると、
「魔法使いのお姉さんの部屋に来てしまったお前は、台風の退屈しのぎにお姉さんが繰り出す死のデス・ダンジョン空間を潜り抜け、なんとか魔女を出し抜き、逃げねばならない」という風になる。

まあ、この辺はガチャガチャやってるうちに見えてきたりする。

大体でOKとおもいます(投げやり)


(iii):遭遇を組み立てる

ここが一番面白い所。
つまり、ゲームの中身を詰めていく。

遭遇というのは、別にモンスターと出会う必要は無くて、罠の解決とか、手掛かりの入手とか、プレイヤーが技能判定を介して行う事象全てのことを自分は遭遇と呼んでいる。
ようするに、どのタイミングでどういう出来事を仕込むか? どういう分岐を作るか? 頭を捻る時間だ。

この段階では別に詰める必要なくて、「ただこういうステージがあると面白い」くらいで十分。

何となくだけど、俺はこういう風に組み立ててる:
「スタート」「遭遇1」「遭遇2」「遭遇3」「中ボス」「遭遇4」「遭遇5」「遭遇6」「大ボス」「ゴール」

見たらわかる通り(?)、小説のプロットとあまり変わらなかったり。
小説のプロット組みに関しては、逆噴射先生のこの記事が詳しい。

別に遭遇の数は「6個がベスト」というわけではなく、ただ解りやすいので6個にしているだけで、例えばニンジャのソロアドベンチャーなら通しで遊べば8個くらいはあったりした記憶。
ちなみにメモに「遭遇1」とかは書いても書かなくてもいい。脳内で練ることができるなら、それで十分かも。

このとき、「遭遇ごとの小さい目標」を立てると、非常に作りやすかったりする。

これは大目標と若干共通するところがあって、
例えば、

  • 見つける

  • 逃げる

  • 戦う
    それと、

  • 観察する

  • 追いかける

あたりが大まかな要素。まあやればわかると思う。だいたいこういうところに落ち着く(気がする)。

で、(ii)で決めたものに沿うように、大体頭の中でもメモでもいいから決めるとこうなる

(ファンタジー編)
「スタート:依頼を受ける」
・大臣と取引
・任務説明

「遭遇1:砦への道」
・待ち伏せのある大通りか
・危険な小道か

「遭遇2:砦の外で」
・よじ登る? 
・突っ込む? 
・変装する?

「遭遇3:敵襲!」
・ゴブリンと戦闘
・潜入状況により簡単にする
・逆に、戦闘マンには歯ごたえを提供

「中ボス:狼が出たぞ!」
・遭遇3からシームレスに
・身をひそめるのも視野に入るようにする

「遭遇4:少し落ち着けるな」
・全滅させるか、隠れるかでちょっと中身を変える
・いずれにせよ、戦利品と回復の時間

「遭遇5:罠の道」
・罠が設置してあるから、超えさせる

「遭遇6:親玉の部屋の前」
・罠のある扉を潜り奇襲するか
・捕虜のふりをするか
・潜んで弱点を探るか

「大ボス:ホブゴブリン軍曹」
ザコが飛び出してくるので、いなしながら戦え

「ゴール:お宝発見!」
・やったぜ!

この分岐の量によって、実のところ遭遇は増えたり減ったりするんだけれど、基本的にステージの中を分かれ道を辿りながらゴールへと突き進むという作り方をすると、とても作りやすい。

「ゴール一緒じゃん!つまんねーの!」と思うかもしれないが、実のところ分岐で辿る道によって、想像の中でやってる事も違うし、ゴールについた後の事は「宝を奪って逃げる」なんてひねりを加えても全然面白くなる。
(ぶっちゃけソロゲーなのでその辺はご愛嬌である)

さて、今自分が書いているのはどうしているか?

「スタート:お前は女の部屋にいる」
理由を提示する。肝試しか、第三者に行けと言われたか、女に用があるか、など。

「遭遇1:魔女と自己紹介」
・怪しさと、危険さを重視。「なんだこいつ!」と思ってもらう

「遭遇2:魔女にインタビューと、この部屋を調べてみる」
ヘタをこくと指を折られる
・この部屋やべえよ!感を出す

「中ボス1:魔空間沼地編」
・魔空間へ招待される 雰囲気出しのため、地の文を魔女っぽくする
恐怖の沼地を歩いて行く
・化け物もいるので上手くかわす

「遭遇3:魔女が居ない……今がチャンスだ(謎を解くタイム)」
・謎解きタイム
・遭遇2で得た情報と、中ボスで得た手掛かりを基に、部屋を出ようとする

「遭遇4:部屋の謎は解けた!」
しかし脱出はできない。
・その代わり、魔女の所業や正体に迫る、凄い手掛かりを見つける! 
・どう使う……?

「遭遇5:秘密の地下室へ行け」
・謎を解けた段階で、地下室の鍵みたいなのを見つける
・2階建ての四畳半で、その2階部分なのに地下室!
・お前は恐怖体験をする!

「遭遇6:お前は一番恐ろしいものを見る」
・手掛かりと出口を求め、なんとか地下でサバイヴ
・酷いモノを目の当たりにする!
・いちばんヤバいものを盛る

「大ボス:魔女と対峙」
・舌戦をする
・地下室でかくれんぼをする
・それとも「スゴイ手掛かり」で退散させる

「ゴール:お前はひとまず逃げ出した……/お前は魔女に捧げられた……。」
ひとまず安全な場所に逃げ込んだ……(例のBGM)

……割とリニアな作りになるのが分かると思う。

とりあえずファンタジーとホラーで共通するのは、「大局的に見て、分岐に間違いはないが、行為に失敗すると危険につながる」という風に作ること。

なぜなら「扉の分岐をミスした瞬間、竹槍が飛んでくる」とかは完全にキャラシートを破り捨てるゲームになってしまうからだ。もしそういうことをするなら、
「しかし、君の開けようとした扉には、やけに奇麗なドアノブがある。だから君は捜査してもいいし、或いはバールで破壊してもいい」なんていう風に、
「警戒すれば死なないどころか得になる」罠に繋げると遊んでいて『攻略感』と『没入感』がありおいしくなる(と俺は信じている)。
こうしておけば、判定に失敗して無警戒で開けたんだ、って納得できるしね。
「お前アサーラックか?」を目指すと良いかもしれない。

※アサーラック:D&Dの名物デミリッチ。「あとちょっと気にしたり、逆に気にしすぎなかったら生き残れたのにな~~~人類って愚かだよな~~~やはり俺様の知恵に勝てる奴は居ないんだよな~~~ザーコザーコ」とかいう崇高なお考えをお持ちの強敵。
公式シナリオでは、激ムズダンジョンを自分で作り上げ、冒険者を誘い込み知恵比べを挑んでハメ殺すという愉快なボスキャラを演じている。
恐怖の墓所というシナリオで有名。

なお。ホラーの場合は死なない程度に痛めつけると「なんかコワー」ってなって良き。
(そこでも、『何かこの後、大事になりそうな裏があるんじゃないか』という、情報面のメリットを提示する事です。伏線を張りましょう)

そのへんの話は、lizardfolk氏のこの記事が非常に役立ちます(感謝!)。

ちなみに、プレイヤーキャラが介入する余地が多ければ多いほど当事者感が増すので面白いと思うんだけど、あまり自由度を高めたり、「俺ならこうするよな」的なことをたくさん入れると大量の分岐を書く必要が出るので、その辺は体力と相談してやると良いです。

介入度合いは、逆転裁判くらいの分量で多いくらい。

たぶんこの辺はニンジャスレイヤーのソロアドベンチャーを読むと割と取れる行動が少ないのに面白いという理由が分かる気がします。

(iv):遭遇の中身を詰める

要するに、読めるようにするということ。
これの書き方としては、基本的に2人称小説を書くような感じ。

唐突にニンジャの例を出すと、

「君はビル街をアクロバティックに飛び渡っている。前方ビル屋上に、暗殺者らしきクローンヤクザを発見した! 
【ワザマエ】で射撃判定を行え。難易度はHARDだ。」

こういう文章を作り、判定の結果を書く。ニンジャから再び引用。

「▶︎成功
「アバーッ!?」スリケンがクローンヤクザの頭に命中! 即死! 狙撃は防がれた。君は死体から【万札】2をゲットし、次の🚩合流ポイントへ!」
「▶︎失敗
スリケンは外れたが、クローンヤクザは射撃機会を逸し、車は守られた! 次の判定ポイントへ!」

つまり、(iii)で決めた遭遇の目的に沿うように、

1.「雰囲気を出す文章」と、
2.「プレイヤーが行うであろう動き」を決めて、
3.「それを行うのはどれくらい難しいか」を設定し、
4.「成功した場合の進行と、失敗した場合のデメリットor進行」を書く

という工程を行う。

たぶん、小説を書いたりしているなら、あまり難しくはないので、「ゲーム内のメッセージで、こういう風に言われたり、そういえば、ADVゲームでこういう展開だと面白いよな」という感じで書くと良いです。

このあたりは、コンピュータRPGとか、アドベンチャーゲームを遊ぶと何となくわかってきます。あるいは既成のゲームブックなども便利です。
参考程度に、自分の例を載せておく。これは「遭遇1」にあたる部分だ。

「問題の女は、ようやく喋りはじめる……。
「君は喉が渇いているよね。生憎……この部屋にはテキーラしか無くてねェ。それでもいいなら注ぐよ」
この言葉に関しては、女の言うとおりだった。
なぜ君の事情をこいつが知っているのか? 考え出すとキリがないが、少しドキリとするだろう。

<正気度>ロールを行え。(0/1)

驚いていようと、驚いていまいと、返事は聞かれていないようだった。
女は何も言わず、君の目の前に、水垢で汚れているグラスが置いた。
そしてなみなみと酒を注ぐ。
いちおう、君が酒を調べるなら、こういうことが分かる:

・奇麗な琥珀色だ。
・香りは悪くない。だいぶ熟成されているのかもしれない。

また、君が酒に詳しいということが技能面で保障されていて、君が任意の技能でロールに成功した場合、さらにこのことが分かる:

・この酒はひどく酸化している。
・まずそうだ。
……

女は、君がこの酒を飲み干すのを待っている。

◆1:君がやれそうなことは、次のうち以下の通りだ。

1・テキーラを受けとる
→【CON】でロールする。
成功した場合、君は不味い酒で喉の渇きを誤魔化せる。報酬はないが、不利になることもない。
失敗した場合、君はひどく『酔っぱらう』。次の判定で、あらゆる動作にペナルティー・ダイスを受けるだろう。

2・テキーラを受け取らない
→<言いくるめ>あるいは<説得>もしくは<魅惑>でロールすることだ。
成功した場合、君は喉の渇きを我慢して、酒を飲む気分で無いと伝えられる。
失敗した場合、気まずい空気が流れる中、君は気分でないのに多量の酒を飲むことになるだろう。やはり、ひどく『酔っぱらう』。
次の判定で、あらゆる動作にペナルティー・ダイスを受けるだろう。

3・私は未成年だ
→こんな時間に出歩くとは、勇気があるな。
よろしい、テキーラを飲まなかったことにして進めろ。
ただし、ウソをついて誤魔化したかったり、「この酒を飲むことで自分に理があるのか」なんて聞きたいのなら、
難易度ハードで<言いくるめ>あるいは<説得>もしくは<魅惑>でロールすることだ。
なお、テキーラを飲むことの意味を聞き出すことに成功した場合、女は君の目の前で酒のボトルをラッパ飲みし始め、「これが答えだけれど、どうかな?」と言うだろう。

その後、彼女は何かを君に伝える。
それが何かは理解できなかったし、もう一度声に出す事すら不可能である。
君は<正気度>ロールを行え。(1/1D4)

この書き方は、実のところ「inscryption」に少々影響を受けていたり。
あれも良い教科書になるので、あそぶと吉ですよ。

(v):アイテムデータを入れる

別にこれはやらなくても良いんだけど、遭遇を組んでいると特殊なアイテムとか、謎解きとか作りたくなるから、それに伴う謎を決めたりする。

たとえば写真の裏を調べると「タタフータリタンタカタタザンタ」という謎の暗号があり、壁には「タヌキ」と書いてあった……というのは古典的だけど面白い例。

自分の例だと、それこそ写真裏のメモに2進数の英文を仕込むとかはやった。
だいたい、バイオハザードの謎解きくらいの難易度orググって分かる難易度なら、たぶんよほどのことが無い限り詰まることはない。それに、TRPGのソロアドベンチャーなんだから、
「プレイヤーが自力で解けたらそれでよし、分からないなら判定を行い、成功したら解けたことにして良い」なんてすると丸く収まる。(普通の卓でもそういう裁定はするしね)


(vi):(iii)と(iv)と(v)をくりかえす

なんでかというと、書いてるうちに分岐によって遭遇が増えたり、やっているうちになんか「こう いうネタを入れたい」とか出てくるからだ。
満足するまでやると吉。詰まったら、とりあえず適当に完成させて、じゃんじゃん遭遇を組むと良い。

あと適宜テストプレイして、「これは死ぬだろ」ってなりそうなら調整するというバグ取りの時間も待っている。
(特に、D&Dとかなら呪文スロットやHPが、CoCなら正気度を軽率に削りやすいリソースであるということがあり、通しで遊ぶと絶対死ぬみたいなことを防止するという工程)

おわりに

こうしてゴールまで組みあがったらおわりです。noteやpixivやTALTOで公開して、みんなで遊びましょう!

たぶん、この作り方を応用すれば、普通のシナリオの書き方にも使えるんだけど、TRPGのシナリオって、卓内でどうとでも化けるので、あまり深くは追求しなくていいかもしれない。
とにかく、ソロアドベンチャーに関しては、これで良いはずだ。

世界は君のシナリオを待っている! あと作ったら俺にもあとでこっそり教えてね。

(おわりです)


コインいっこいれる