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【夢うつつ絵本2】夢の落下(悪夢) 4p

ある日の夢。

私は目の頭上に咲いた大きな花火に釘付けになっていた。
次々に開いては散っていく儚い光は、私の足元まで降ってきて音もなく弾けて消えた。

綺麗だな……。
しかし、それは遅れてやってくる。

地鳴りとなって伝わってきた音は私の鼓膜をバリバリと揺らした。
耳底で何度も何度も。
大太鼓を叩く様な音は消えず、それが不快で私は押さえた両耳を力の限り引っ張った。

ブチっという音と共に顔の側面が熱くなったのを感じた。

両手にはちぎれた左右の耳。

私は両耳をポケットの奥に突っ込んでうずくまった。
また怒られる……。

また?
どうやら耳を引きちぎったのはこれが初めてでは無かったようだ。



チョキン!

綺麗な刃音だけははっきりと聞こえた。
私は両耳を確認しに洗面所へと向かった。
あれ?左右の耳が逆についている。

こんな時は妙に冷静になる。
あぁ、まだ夢の中なんだ。
そんな事を思いながら、鏡に映った耳を交互に眺めた。

つづく

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