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BOXSPACE:夢現  0話 始まりの話

神の食卓にある卵。

「さて、これはゆで卵か、なま卵か」

しかし、答えるものは誰もいない。
では、ここで賭けをしよう。
神はそう言って目を閉じた。

「ゆで卵であったなら新しい命を……
 なま卵であったなら新しい世界を」

卵は神の手から離れ、床に叩きつけられた。
殻にヒビが入る小さな音が神の耳にも届いた。

神はしばらく床に転がる卵を見下ろしていた。
中からは何も出てこない。

「答は出たみたいだ。では何人の友を……」

神はその長い指先で卵に触れた。

「これは……」

卵は思ったよりも軽くそして温かかった。
神は静かにのぞき込み、息を止めた。
卵は空っぽ、しかしそこには光があった。

神は大声で笑った。
誰もいない宇宙に響く笑い声。
神は食卓に卵を置くとニッコリと笑って小さな息を吐いた。

「そのため息が世界を取り巻く風を……」
「笑って流した涙が海を作った」
「ひび割れた卵の穴には……」
「神の言葉が吹き込まれ時間を刻み始めた」
「13日の時が過ぎ」
「太陽と月が生まれ」
「私達の世界となった」

7人の王がそう言って、楽しげに食事をしている。

「しかし、その話には続きの話がある」

7人の王の前で8人目の王がそう言った。
皆初耳の様子で8人目の王に注目する。
8人目の王は笑顔で、

「私と賭けをしませんか?」

と、円卓にある卵を1つ手にした。

7人の王が彼を見る。
それぞれの意見を口にした7人の王は8人目の王を再び見る。

では、と、卵を円卓に叩きつける。
ヒビが入る卵。

8人の王はその卵を静かにのぞき込んだ。

そこにあったのは、今の私達に続く次の話で。

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