2025年度用SAPIX偏差値一覧表を眺めて@女子編

 SAPIXの2025年度用の偏差値表のVol.1が手に入ったので、それについての雑感を書き記したいと思います。男子校編は、こちらになります。

視点などの基本的なことは男子校編に記しております。併せてご参照ください。なお、この記事も2020年度の偏差値表と比較して考察しております。


【1日午前】

[フェリス女学院という基準]

 フェリスの序列が、洗足学園、吉祥女子、広尾学園よりも後ろになりました。5年前は、前に女子御三家と渋谷教育学園渋谷、早稲田実業しかいませんでした。

 偏差値56→53に下がっています。だからと言って、フェリスが入りやすくなったかというと、そういうわけではないと考えています。男子校編の栄光学園で言及したように、フェリスの難易度は変わっておらず、SAPIX生の実力が全体的に上がったことが原因だと考えています。
 フェリスは合格者最低点を公表していませんが、公表されている受験者平均点が大きく下がったというわけではないことから考えて、入りやすくなっているわけではないと考えるのが妥当です。また、問題の難易度も簡単になったという感じはしないので、受験者平均点から想像される合格者最低点を考えると、相当な実力が無いと合格しないと思います。そう考えれば、中学受験の難化が、フェリスの偏差値の低下に表れているのではないでしょうか。

[頌栄女子学院の過小評価]

 頌栄が偏差値49というのは、ちょっと納得がいきません。

 偏差値46→50と上げている中央大学附属横浜に逆転されています。横浜方面の校舎で勤務していたとき、中央大学横浜にはお世話になっているので良い学校だと思ってますし、中央大学横浜を下げようという意図はないのですが、さすがに入試問題の難易度や大学の合格実績を考えると、頌栄女子学院の方が格上感があります。「大学付属人気」という時代なんだろうとは思うのですが、頌栄女子学院は、もっと世の中に評価されても良いと思う学校の一つです。

[香蘭女学校の急上昇]

 香蘭は、偏差値39→48という急上昇を見せています。

 やはり解せないのは、香蘭が偏差値48で、頌栄が偏差値49ということです。入試問題の難易度は明らかに頌栄の方が難しいです。その2校が偏差値表で上下していることに違和感を感じざるをえません。ここまで序列が上がるとは夢にも思いませんでした。正直に言えば、もう2日午後の入試はやめてほしいです。香蘭には、第一志望の子を大切にする学校であってほしいです。2日午後に定員を分散した方が偏差値が上がるのはわかりますが、香蘭ほどの魅力のある学校は、それを信じて1日に受験してくれる受験生を大切にしてほしいです。

[横浜共立学園の苦戦]

 横浜共立は偏差値44→40と、いよいよ偏差値40台の土俵際まで追い詰められております。

3日の日程も偏差値56→52と下げています。東京から見て横浜駅の先にある学校は軒並み苦戦をしておりますが、横浜共立が田園調布学園と同じに位置になるというのは、想像もしていませんでした。田園調布を押さえにして横浜共立を受験する時代があったと言っても、今は信じてもらえないのかもしれません。以前、横浜雙葉について記事を書きましたが、横浜共立も入試問題が劇的に簡単になったとかいう話はなく、著しく合格者最低点が下がったというわけではないので、10年前の中学受験と今の中学受験の決定的な時代の変化を象徴する学校だと感じています。

【1日午後】

[恵泉女学園の難化]

 恵泉女学園は、偏差値42→47となっています。

 数年前に、大手学習塾時代の同僚に「恵泉が入りづらくなった」という話を聞きました。その言葉が、この5年の変化に表れていると思います。恵泉は、1日午前に受験日を設けていない学校なのですが、そろそろ1日午前にも始めてほしい難易度になってきた気がします。熱望している家庭もいるので、もう少し第一志望に優しい学校になってくれることを期待しています。

[実践女子学園という選択肢]

 実践女子学園は、偏差値30→42という急上昇です。2日午後も、偏差値30→41になっています。

今年、大手学習塾時代の同僚との情報交換で「実践女子は、午前から受けにいかないと落ちる学校になった」という話を聞いていたのですが、それがはっきりと偏差値に反映されています。今年は、学校も入試問題の難易度を上げると公言していて、実際に難易度が上がったと感じましたし、いよいよ実践女子も受験が難しい時代になったと感じています。この先数年は、評価が定まらないと思うので、併願パターンに組み込むときは、慎重になるべきだと考えます。

【2日午前】

「田園調布学園の危険性」

 2日の田園調布学園が、偏差値36→40と上がっています。4日も偏差値38→43と上げています。

 ここ2年、合格者最低点が全日程で200/320点を超えており、かなり厳しい戦いになっています。7割程度まで高騰することもあり、ちょっとしたミスが命取りになる危険性のある学校になっています。以前は、6割取れなくても合格する日程があったくらいで、比較的入りやすい学校だったという印象があるのですが、ここ数年で劇的に印象が変わりました。それが、SAPIXの偏差値表に反映されています。

[鎌倉女学院の凋落]

 鎌倉女学院は、偏差値45→38と大きく下がっています。

 10年前を知っている人間には、信じられない話です。ただ、鎌倉女学院に瑕疵があるというよりは、時代の変化が直撃しているだけだと考えています。東日本大震災以降、海側の学校は少し印象が悪くなったこと、何かがあった時に歩いて帰れる距離感の学校を志望する人が増えたこと、今は直接的な理由にはなっていないと思いますが、まだ無意識に影響しているところはあると思います。また、相鉄線のJR線や東急線との乗り入れは決定打になっていると思います。神奈川県中部からの都心への受験生の流入は、神大付属や中大横浜の難化からも、はっきりとしていると言えるのではないでしょうか。
 とはいえ、鎌倉女学院が悪い学校になったというわけではないので、個人的には神奈川県南部に住んでいる人たちにとっては良い状況が生まれたと思っています。都心の価値観に疲れるのであれば、鎌倉女学院で穏やかに過す6年間には、それなりの価値があるはずです。今こそ、「買い」の学校だと思います。

【2日午後】

[山脇学園の躍進]

 2日午後の山脇学園が偏差値49になっています。

 5年前は、特殊な受験日程だったので単純比較はできませんが、山脇学園が偏差値50に近づく時代が来るとは思いませんでした。正直に言えば、山脇学園の偏差値は、受験日程を増やしたこと、英語受験が可能なこと、単科日程があることにあると思っています。実力者が集まっているというよりは、間違いが起こりやすい受験日程を組むことで成立している数値だと思います。教え子も通っていますし、悪い学校ではないと思うのですが、もう少し第一志望に優しい学校になってほしいというのが本音ではあります。

【3日】

[東京女学館の復権]

 3日午前の東京女学館は、偏差値37→44に上がっています。

 昔は、もう少し序列の高い学校だったと思うのですが、昨今は時代の流れに取り残された感がありました。3日午前は、競合する女子校が少なく、大妻も偏差値48まで上がった今、SAPIXの中堅勢が鉄板の押さえとして働かせるのが東京女学館になったのかもしれません。
 個人的には、とても良い学校だと思っているので、もっと人気が出ても不思議に思いません。

【4日以降】

と書きましたが、特に目に付く学校はありません。大手学習塾時代の同僚から話を聞くに、「女子は、3日までに決めないと厳しい」そうです。そこには、偏差値には現れない難しさもあると。5年前は、偏差値30台に田園調布学園や山脇学園がありましたが、今は偏差値43です。SAPIX生には、多少は安牌に見えるかもしれませんが、絶対に間違いが起こらないのは少し上のレベルの子達で、そこから流れてくる子のことを考えれば、アップセットを起こすのは容易ではありません。併願パターンを考えるときは、4日以降のことは考えずに3日までの受験と心得て、4日以降はおまけくらいで考えて良いと思います。

【まとめ】

 中学受験の世界は、5年も経てば大きく様変わりするものです。おそらく、さらに5年経てば今の勢力図も大きく変わるはずです。そう思えば、入学したときのその学校の偏差値的評価は、それほど重要な指標にはならないのではないでしょうか。

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