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残るは食欲/阿川佐和子

幼い頃から食べることが好きだった。母手作りの素朴な家庭料理を、家族で囲んだ温かな食卓──。大人になった今は一人で作って一人で食べて「私は天才かっ」と一人で叫ぶ。

季節外れのローストチキン。深夜に食したホヤ。カビの生えたパンだってちょいちょいと削れば、あらおいしい。少し孤独。

けれど食欲全開、今日も幸せ。雑誌「クロワッサン」の連載をまとめた極上の食エッセイ。

残るは食欲より

自分は全く料理をしないけれど、料理本を読んだり、料理番組を観たりする。それは、作っている所を見ると出された料理だけを見る以上に、その料理が美味しく感じられるから。

阿川さんのエッセイは、料理本の様に写真や文章で伝える事を文章だけで書いているのに美味しそうに感じる。それは、阿川さんの文章の上手さもあるけれど、本人が楽しそうに料理しているからだと思う。

本人が食べた料理の描写も素晴らしい。併せて、美味しくない時はハッキリとマズイというその潔さも好きだ。

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