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【小説】メンズエステのめぐみさん②

1話からの続編です。


2話目 めぐみさんと佐藤さん (2/5)


「おい。高城さぁ。お前今回が何度目の失敗だよ。いい加減にしろよ!
お前が石川に仕事教えたんだよな?石川の方がいい仕事しているよ!全く!・・・それに比べて!石川ちゃんはいいね〜!この調子でどんどん頑張れよ!」
彼の言葉には具体性が全くないので説得力がない。
「部長ありがとうございます!」
「お、そろそろ12時か。営業の進捗会議はこれにて終了!石川ちゃん、頑張ってるからご飯ごちそうしてあげるよ!じゃあ、高城君、片付けよろしく。」
本当ですか!?
新人の石川が喜んで犬のようについていく。
二人は12時のチャイムと同時に会議室を出ていく。
「高城、こっちにまで怒鳴り声が響いたけど大丈夫か?」
会議室にすっと企画部の加藤が入ってきた。
「ああ。大丈夫だ、いつものことだから。佐藤は本当にきもいな。あいつが部長になってから営業部がぐちゃぐちゃだよ。」
「企画部でも話題になってるよ。営業がヤバいって。社長も謎だよな。
真田部長が退職したからってさ、いくら人材不足だからと言っても、年功序列で部長を佐藤なんかにするなんて。
てか、お前はなんで怒られてたんだ?」
「お前営業部がA社とのメールでやらかしちゃったの知ってるか?」
「いや、知らない。」
「流石にエグすぎていくら情報通のお前にも回ってきてないか。絶対言うなよ?」
「わかった。」
「実は、秘密保持契約結んでるのに、CCに別の企業を追加してメールしちゃって。それでA社が激怒して契約解除。本当にまだ言うなよ?」
「わかった。言わないわ。じゃあお前がメールやらかしちゃったわけか?」
「ばか!俺がそんな高校生でもやんないようなミスすると思うか?佐藤だよ、佐藤。」
水を飲むと間髪入れずに話を再開する。
「お前は大型案件をするのはまだ早い。メールから俺にやらせろって。
あいつも部長になったから泊付けるために自分の手柄にしたかったのだろ?
そもそもメールしたら手柄になるって考えてるのがもうすでにばかなんだけどな。あほすぎるだろ?」
「あほとかじゃすまされないだろ。役職はく奪だよな普通!A社との契約の規模考えたら。売上の3割は占めてんだろ?」
「ああ、そんくらい占めてるな。普通だったら降格だよ。普通だったら。でも今回は特別なんだよ。残念なことに。」
「と言うと?」
「社長のメンツってやつだよ。
他が反対してたのに、社長が強引に佐藤を部長に推したから。それで、3ヶ月で役職はく奪なんてできないらしい。
さすがの社長も水面下で新しい役職作って営業から外そうとはしてるらしいけどな。」
「その前にもっと大事件を起こさなきゃいいけど、、、とりあえず、第三者として今日の罵声とかセクハラまがいのことは法務部にチクっといでやるよ。」
「すまんな、いつも。」
二人は大きなため息をつくと昼休憩の準備を始めた。

「石川ちゃん、何食べたい?」
下心を隠したつもりのその笑顔は十分に厭らしかった。
「え!そんな!部長と食べられるなら、、もう何でも嬉しいです!」
「部長も人間なんだからさぁ、そんなこと言われても嬉しくて困っちゃうな!なんでもいいから言ってよ!」
「えーと、じゃあ、天ぷらが食べたいです!」
目の前にあった天ぷら専門店を適当に答える。
正直ダダ飯であれば何でもよかったのだ。
「いや、うーん。天ぷらって気分じゃないな。
やっぱり蕎麦だ!蕎麦なら、天ぷらも食べれるし!安くて美味しいお蕎麦屋があるからそっちに行こう!」
「是非お願いします!」
希望は通じないのかい!リトル石川はツッコんだ。

「いらっしゃいませ!2名様でよろしいでしょうか?」
「うん。へー。君には2名以外に見えたんだ。幽霊見えるタイプ?君、面白いね。」
「あ、、失礼しました!あとから人が来られるケースもあるので、、、」
「うん。ならそう聞こっか。金髪にする暇があったら日本語もう少し習ったほうがいいよ。」
「失礼しました。ではこちらにご案内します!」
大学生だろうか?若い男性店員がひきつるのがわかる。
後から人が来る可能性もある。それも踏まえて聞いているのは誰が聞いても理解できるのに、、、
まあ、お昼代が浮くから、、そう自分に言い聞かせて石川は佐藤の後ろをついていく。
「こちらがメニューです。お冷をお持ちしますね。」
メニューを渡すとすぐにお冷をもって戻ってくる。
「こちらお冷です。」
「うん。見ればわかるよ。あとこういうのは上司から渡す方がいいよ?君は今、私じゃなくて彼女の方を先に置いたでしょ?社会人になったら重要だからね。こういう些細な所。君の為にもこのお店のためにも言ってるんだからね?」
「失礼しました!」
笑顔を装っているが、明らかにむっとした表情になるのがわかる。
「君大学生?」
「いや、フリーターです。」
「そうかそうか。男は定職につかなきゃだめだよ!
今は何言ってんだおじさんって思ってもちゃんとした仕事をしたら僕の言ってることがわかるから!」
「はぁ。。。では、注文は何にしますか?」
もう笑顔を装うさえやめてしまった。
「うーん、じゃあ日替わり天ぷらで。石川ちゃんも同じでいいよね?」
天ぷらの気分ではないのでは?リトル石川がツッコム。
「はーい」
店員は気だるそうにテーブルを去っていった。
「石川ちゃん。ああいう風にはなっちゃいけないよ?今の若い人は自分が悪くなるとああいう行動をとるんだ。こういうのは信用に関わるからね。社会はそういうもんだから。」
はあ。石川は少し返事に戸惑った。
「そんなことより、高城に教わってるけど大丈夫?あいつハラスメント気質あるから。」
あなたの方が・・・とは口が裂けても言えない。
「そんなことないですよ。」
笑顔がひきつってしまったかもしれない。
「本当~?あいつってミスばっかりするから。A社とも取引もあいつのミスを俺が被ってやったのに感謝もしてこないし。いつもは感情的にならないけど今日は怒っちまったな。」
いつも感情的だろ!リトル石川がツッコ厶。
「そうだったんですね。」
無難な返事でお茶を濁す。
「ま。石川ちゃん、わかんないことがあったら聞いてね。なんかあったら俺が守るから。気軽に言ってね。」
「ありがとうございます。」
佐藤の眼差しを見ると、早速、何から守ってくれるのか?という疑問が起こったが、聞くことができなかった。
「お待たせしました。日替わり天ぷらです。」
「待ちましたー。」
店員はわなわなしているのはわかったが、もう店員の方を見ることができなかった。
「じゃあ、食べよっか。」
「部長いつもありがとうございます!いただきます!」
この言葉が聞きたかったのか満足そうに蕎麦をすすり始めた。

3話へ続く



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