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【小説】ケータイショップのヤバい奴ら④論破王の外国籍スタッフ

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「じゃあ今日は、接客をする前にケータイ業界についてざっくり教えるね。」
指導係の上村は、僕と中嶋に向かって言った。
「はい!」
「まず、ケータイ業界はフランチャイズだから店舗によって運営している代理店が違うの。例えば、隣の○○店は××って会社が運営してる。」
「そうなんですね!じゃあ、売っている商品とかも違うんですか?」
中嶋が質問をする。
「基本は同じ。ただ、スマホケースとか充電器とかが多少違ったりすることもある。」
「初めて知りました!じゃあ、客のふりして偵察したら面白そうですね!」
「そうだね!接客技術を盗むって意味でも偵察はいいと思うよ!木村君からは質問はない?」
「じゃあ、直営店ってどのくらいあるんですか?」
「それも気になるよね。実はほとんどないんだ。全国で3~5店舗くらいかな。」
僕と木村は同時に驚く。
「そんな少ないんですね!びっくりです!」
「あんまり知られてないからね。
じゃあ、次はスタッフの役割を教えるね。
どのお店も大きく分けると、フロアとカウンターに分かれるの。
フロアは、お客様がお店に来た時に最初に受付をする人のことね。」
「この店舗だと、孫さんがよくやってますよね?」
「中嶋君よく見てるね!正解!フロアは基本的に責任者がやるケースが多いのよ。」
上村に褒められて中嶋は嬉しそうに照れている。
「次はカウンター。カウンターは接客をして登録作業をする人。みんなには、操作案内が慣れたら、まず、カウンターをやってもらうから。」
「わかりました。」
「おい!!!なんでこんなに待たないといけねぇんだよ!!!」
バックヤードにまでお客様の声が響きわたる。
三人は店内を見ると、中年のお客様が孫さんに激怒している。
「上村さん、何があったんですかね?」
「ああいうお客様もいるんだよね。」
上村は、蔑むように孫と客の会話を見ている。
「おい、なんで、こんなに空いてるのに、2時間も待つんだよ!」
「ご予約の方があと3名いるのと、お客様の前に、5人発券して外出している人がいるんです。もし、待ち時間が嫌でしたら、明日以降でご予約できますがいかがでしょうか?」
「うるせえな!今2人しか待ってねぇじゃねーか!」
「皆様お昼時なので、発券だけして外出しているんです。」
「いないなら俺を受けろよ!」
「もちろん、このまま前のお客様が帰ってこなかったら先に受付しますが、確約はしかねます。」
「なんだお前!俺は10年ここ使ってんだぞ!優遇しろよ!」
「10年もご利用下さりありがとうございます。」
「そうだろ?だから受けろよ!」
「ただ、お客様は病院に行った時も同じことを言えますか?待ち時間に怒りますか?怒りませんよね?ケータイショップと病院は違いますが前に人がいたら待つというのは同じはずです。」
「生意気だな!てめえなんて名前だ!あ、外国人だろ!」
「はい、私は韓国出身です。しかし、国籍は関係ないと思いますが。」
「いいから日本人呼べ!」
「現在交代できるスタッフはいないので無理です。
もしいるのなら最初からそのスタッフに接客をさせます。
それに私は責任者です。大声で他のお客様に大変ご迷惑をかけているので、これ以上何か言うようであればお受付できません。」
「く、く、くそだな!この店舗は!二度と来るか!!」
おじさんはイライラした様子のまま外へ出ていった。
「中嶋、孫さん凄いね。」
「うん、あんな変わった人に接客するなんてすごすぎ、、!」
二人で感心していると、上村はにっこりと言う。
「フロアって一見簡単そうだけど、実はそんなことないんだよね。みんなの接客の進捗を見ながらお客様に適切な待ち時間を教えたり、ああいうお客様と対応したり。」
すげぇな。
新卒二人は同時に同じことを思ったのだった。

【ケータイショップあるある⑤待ち時間に怒るお客様が多い】
【ケータイショップあるある⑥フロアはただの受付しているだけで簡単そうに見えるが一番大変】

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