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勢古浩爾さんの『定年バカ』

定年ものの本を読みました。


勢古浩爾さんの『定年バカ』です(2017年 出版)。


ちょっと、おもむきの違った定年ものの本でしたので紹介します。


勢古浩爾さんについて


1947年大分県生まれですから、現在は70歳代。


明治大学政治経済学部卒業。


洋書輸入会社に34年間勤務ののち、2006年末に退職(59歳)。


以後、執筆活動に専念されてます。


『定年バカ』の内容


結論

世の中で言われている、定年に対する考え方をひとつひとつ取り上げて、ちょっとそれってどうでしょうと批評を加えておられます。


『好きに生きたら良い』ということだと思います。


『好きにすればよい』ということは、『なにもするな』ということではない。定年後に豊かで充実した生活をしている人がいるなら、その人たちもまた『好き』にしているのである。とくにこれといってしたいこともないし、友人も少ないけど、まあ『好きにするわ』といって、多少うら寂しく、それでいてそこそこ楽しい1日1日が過ごせれば、それで良いではないか。そんな自分を卑下しなくていいのである。好きでする、なにもしない生活は、自由の生殺しではない。自由そのものである。(前書きより)


前書きのこの部分が、そのまま言いたいことだと思います。

しかし、実際はディテールが豊富で、楽しんでも読めますのでお勧めです。


では、具体的内容の一部をご紹介します。


生きがいバカ


定年後は8万時間が自由に使えるので、無為にすごしてはいけないと言われたりします。


定年後を有意義に過ごす人を紹介する定年本も多いですし、情報もたくさん入ってきます。


何かしないといけない様な、充実した生活をおくらないといけない様な不安にかられます。


私も、定年に向けて準備しないといけない様な気になることも多いのが本当のところです。


大学で勉強、書道、川柳、英会話、城巡り、気象予報士、マジック、登山、スキー、盆栽、鉄道、田舎暮らし  などなど


世間の定年退職者は、こんなに生き生き活動してます。


あなたも老け込まないで、自分なりの定年後を愉しんではいかがですか?と擦り込まれている感じです。


しかし、なにか不自然というか、無理やり感が感じられるのも実際のところではないでしょうか?


ひまだひまだと言いながら生きてゆくのもまた良いのではないでしょうか?


何もしないで良いということに一定の理解を示している人が紹介されてます。


老年精神医学者の 竹中星郎 さんです。


なにもしない生活が精神的に良いとは言えないし、豊かとは言えない。しかし、働くことが是で、何もしないことが悪であるということを老年期に持ち込むことは検討の余地がある。自分のために生きるというなかには、何もしないでぼんやりと時間を過ごすという選択肢も認められるべきである。


と述べられてます。


とにかく、『何もしないのは悪』というふうになってはいけないということでしょう。

社交バカ


会社を辞めて、社会との繋がりがなくなって、公園や図書館などしかゆくところが無くなる。


定年後は地域のなかに溶け込んだり、趣味やボランティアで社会と繋がることが必要などと、良く言われます。


確かに、そんな気がしてきますが、これも自分に合わないことを無理やりしてもどうかなーというのはあります。


勢古さんも、『しない方が良いとも言わないが、した方が良いとも言わない』 と述べられてます。


定年になったからといって、性に合わないことをしても続かないしうまくゆかないでしょうから、私も勢古さんに賛成です。


自然に関わってゆけそうなら、関わってゆくといった程度で良いのではないでしょうか。


未練バカ


これは私ははじめピンときませんでしたが、たとえば現役の時の役職にこだわる人。


大手企業の専務までした人が、地域の組合でもやたらと場をしきりたがる。

高級レストランで、相席を頼まれて『俺を誰だとおもっているんだ』と激昂する元役員


現役時代の役職に未練がある人だけでなく、モテていた若い時に未練のあるバカも紹介されてます。


結論


余計な不安を抱え込む定年バカにならないよう、戒める内容です。


具体的心構えまで記載されてますので、感銘を受けました。


定年後に悩む人にお勧めです。





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