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秘密兵器(ショートショート)

 トンネル工事をしている現場で、硬い金属にぶち当たった。まわりを掘り起こして、その金属を取り出してみると、直径10mほどもある球状の塊であった。
 早速しかるべき研究所に持って行き、調査することになった。
 特殊な光線で中の状態を確認してみると、どうやら操縦席のようなものがあり、人らしきものが映っていた。
「どうにかこれを開ける方法はないものかな」
 研究所の一番偉い博士がいった。助手が冗談交じりに「合言葉でもあって、それで開いてくれると楽なんですけどね」といった。
「開けゴマ」
 ためしに助手はそういった。すると金属の塊に反応があった。揺れだして、バイブ音が鳴りだした。
「なんてことだ。反応したぞ。それも日本語で」
 博士は驚いて食い入るように金属の塊を見つめた。しばらくすると、そいつは動きを止め、やがて塊の一部が開いて、中から大量のゴマが出てきた。
「なんだ、これは」
 博士も助手も最初それがゴマであるかわからずに、放射性物質か何かと思いひるんだ。だが、調べてみると、普通にスーパーでも売っているゴマだった。ただし相当古い。放射能もない。
「何でゴマが出てくるんだ」
「もっと何かいってみましょう」
 博士はうなづき、助手は適当なことをいろいろいった。
「ビーフステーキ」「餃子」「ラーメン」「ニラ」「タマネギ」「とうがらし」「わさび」「味噌汁」「もち」「カレーライス」「うんこ」「〇▼△」
 だが反応はない。
 疲れた助手は最後に「山」といった。すると向こうから「川」と返事がきて、宇宙船のようなもののなかから人らしきものがでてきた。
「わっ、出てきましたよ。どうしましょう」
 博士も助手も周章狼狽した。まさかこんなに簡単に出てくるとは誰も思わないだろう。
「き、きみは、だ、だれだね」
 博士が震える声で訊いた。
「はっ、自分は大日本帝国陸軍アンドロイド三等兵であります」
 ぎょっ。返事が返って来た。しかも1世紀近くも前の大日本帝国陸軍と名乗ったではないか。日本語が通じるわけだ。
「君は何で山の中に埋もれていたのだ」
「敵に見つからないためであります」
「敵とは何だね」
「鬼畜米英であります」
「ごまがでてきたけど、あれは何だ。食料か」
「この戦闘機の燃料と私の燃料であります」
「どんな任務が与えられていたのだ」
「はっ。本土決戦になった時に、この飛行機で敵と戦うためであります」
「これは戦闘機なのか。攻撃能力があるのか」
「もちろんです」
「どんな能力なのかい」
「お見せしましょう」
 そういうなりアンドロイド三等兵は戦闘機のコクピットに戻り、いきなり、球型の戦闘機が動き出した。
「大変なことになりましたね」
 助手があわてていった。そして警察、自衛隊に連絡をすぐ取った。どんな攻撃をみせてくれるというのであろうか。
 警察、自衛隊も連絡を受け、急いで、対応した。戦闘機は空中に浮かんでいる。そのまわりを自衛隊の戦車やヘリが囲んだ。
 いきなり球型戦闘機からスピーカーで声が発せられた。
「八百万の神よ、皇国の危機である。神風を発生させたまえ。カミカゼを発生させたまえ。神よカミカゼをおこしたまえ」
「神風があれでふくんでしょうか」
 助手が博士に訊いた。博士はつぶやくように「さあ」とだけ、答えた。
「八百万の神よ、皇国の危機である。神風を発生させたまえ。カミカゼを発生させたまえ。神よカミカゼをおこしたまえ
 八百万の神よ、皇国の危機である。神風を発生させたまえ。カミカゼを発生させたまえ。神よカミカゼをおこしたまえ」 

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