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筋トレ(ショートショート)

 年末年始で飲み食いに明け暮れて、ベルトの穴の位置が緩いほうへと移動し、スラックスのスナップも届き難くなったので、DAISOで売っていた、離れたスナップを届くようにしてくれるアイテムを買って間に合わせた。
 しかし腰回りは、何とかそれで収まったが、太ももがいつのまにやらパンパンになっていた。最早スラックスを買い替えないといけないほどにまで至った。
 あわせてジャケットのボタンも留めづらくなり、上下ともに買い替えないと不細工である。妻が余計な出費だと嘆く。太ってしまったものは仕方がない。
「なわとびするとか、ジョギングするとか、何とかして体重を戻しなさい。このままではメタボになって成人病になって糖尿病になって、早死にするわよ」
 そういわれると気が弱いので、心配になってくる。メタボなんて会社の健康診断でいわれたら恥ずかしい。妻の言う通り運動をすることにした。
 だが、仕事帰りは、疲れていて、出勤前は、ギリギリまで寝ていたいので、なかなかできない。
 そこで週に1度、市民スポーツセンターのジムで筋トレをすることにした。
 まずはランニングマシンで20分、走る。5分もたたないうちに汗が出てくる。20分予定が、7分程度でリタイア。煙草も喫っているので、持久力がない。
 大胸筋を鍛える器具で、腕を動かす。体重はあるので、意外と負荷を重くしても動かせる。
 ガチャーンガチャーンガチャーン
 動かすたびに重りが下に落ちるので音がする。係員がやってきて、やり方を教わった。要するにうるさい音を立てるな、ということらしい。
 それから1つ1つ器具を代えるたびに係員がやってきて説明してくれるようになった。ドシロウトだと思われたらしい。その通りなのだが。
 2時間はあっという間に終わり、久しぶりにいい汗を掻いた。スポーツセンターの向かい側に、角打ちがあった。丁度開店する時間のようだ。丁度トレーニングをして喉が渇いていたので、ビールを飲んだらさぞ美味かろうと思って、フラッと寄ったのが、間違いであった。
 家に帰り、体重計に乗ったら、哀れ体重は増えていた。妻はあきれて何も言わなかった。

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