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YouTubeゆずの日常(ショートショート)

 21世紀後半、各種動物の発する言語の解読に成功した。発明された翻訳機を使えば、犬でも猫でも、ライオンでも、ある程度の知能がある動物であれば、何をいいたいのかがわかる仕組みになっている。
 早速俺は愛猫のゆずのために翻訳機を買った。安いものではないが、ペット愛好者から人気が殺到し、商品が不足する事態にもなっていたが、運よく手に入れることができた。
「ゆず、御飯をお食べ」
『やったー』
 翻訳機から声が聞こえた。
『なんだよ、またこのキャットフードか。たまにはもっとうまいもの食わせろよ』
 翻訳機はこんな下品な言葉使いも平気でするようだ。
「どんなのがいいんだい」
『霜降りの肉とかさ。ネズミの生肉でもいいな』
「そんなのどこで食ったんだ。食ったことないだろう」
『いってみたかっただけだよ』
『マタタビねーのかよ、マタタビ』
「あるけど、ラりっちゃうからダメだよ」
『つまんねーな』
「食事が終ったのなら運動しようよ」
『運動?またビデオで撮ってYouTubeにあげるんだろう』
「そうだよ。それでカネ儲けて、お前も贅沢できるんだぜ」
『しょうがねーなー』
「愛想よくしてくれよ。可愛くね。文句いうなよ。声も入るからな」
『わかってるよ。万事OKだよ』
 俺とゆずは運動したり、じゃれあったり、可愛いポーズをしたりして、いつものようにYouTubeに動画をあげた。お陰様で俺のチャンネルは人気が出て経済的にも余裕がある。正直言ってゆずのおかげで、儲かって仕方がない。
 それを本人もどうやら理解していたらしく、だんだん横柄になっていくのがわかった。ただカメラを向けると、可愛い猫に変身する。猫じゃらしなんてカメラを向けないと無視、だが、カメラを向けると必死で遊ぶ。
「お前、演技が上手いな。カメラ向ける時と向けない時と極端じゃないか」
『当り前じゃないか。本物の猫だけに、猫かぶるのは得意中の得意さ』

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