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布袋様

 母方の実家に布袋様がいた。30㎝くらいの高さの陶器で出来た人形である。これが幼い頃僕は苦手だった。あのにやっと笑う笑顔が不気味で怖かった。僕が悪さをする度に爺さんが、その布袋様を僕に近づけてきて叱った。僕は泣き叫んで逃げた。
 母方の実家は大宰府にあった。僕は当時福岡市の大橋というところに住んでおり、何かあれば、母親はすぐ実家に僕を預けた。その家の水が井戸水を使用しており、それで炊くご飯は非常に不味かった。僕の舌は肥えていたのだろう、酸性系の井戸水であったと思う。食べないと叱られるし、それも嫌だった。
 とにかく2歳くらいの子供だったので、悪さをするのは仕方ない。爺さんが精魂溜めて育てたチューリップは花の部分を全部ちょん切ったし、イヤホンでTVを見ていた爺さんのイヤホンを抜いたり、禿げ頭をポンと叩いたり、悪戯三昧であった。その度に布袋様が出動するのである。
 それにしても暇だったのだろう、性懲りもなくとはこのことだろう。布袋様が襲ってくるのがわかりながら悪戯するのだから。
 今ではあの布袋様はどうしているのか、爺さんがいなくなって、別の場所に建て替えた家にあるのだろうか。それは確認をしていないが、意外と結構な値打ちものだったりして、と思ったりすることもある。
 

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