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定年退職

 本来なら今年の10月で、定年退職をし、店から花束と記念品なんかをもらったりして、別れを惜しむようにして拍手で送られ、その日を迎えていたのだろう。
 ところが57歳の時にうつ病を発症し、休職して、そのまま休職期間を全うせずに辞職した。退職の挨拶に店に出向いてもいない。とても今年の10月まで仕事をするなぞできるはずもなかったし、その間、いろいろ勉強し、自分にとって一番有利な方法を考えた。それには、あのタイミングで辞めることが必要だった。もっと前でもよかったくらいだ。
 お陰様で何とか経済的には暮らしが成り立っている。勿論家族全員が働いてくれているのもある。
 今更店に挨拶に出向く気はない。第一車が無い。列車でいけないことはないが、遠い。体調面も考えれば無理だろう。だが店もあそこで僕が辞めたおかげで代わりの補充があったようだし、僕に恨み言をいう人もなかろう。
 会社の先輩たちは、そのまま定年後も会社で安い給料で働いている人が多いようだが、もし健康で辞めたのなら、多分僕も同じ道を歩んだかもしれない。
 今は働かずとも何とかやっていけそうなので、働く気はない。毎日が日曜日だ。結構暇である。何かいいことないだろうか。この病人でもできるようなことが。
 

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