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高級食パン

 一時期、高級食パンがもてはやされた時期があった。人がズラリと並び、通常の食パンの10倍近い値段で売れに売れまくっていた。
 御多分に漏れず、我が家、というか僕も並んで何度か買ったことがある。定年退職するお世話になった先輩にも送ったことがある。奥さんが大層おいしいと評判だったそうだ。
 柔らかくてほんのり甘くて、それだけで食べてもおいしいパンであった。
 真似をする業者が後をたたなかった。従来のパン屋さんもいつもの食パンより1ランク上の食パンを売り出した。
 僕がいつも買っていたパン屋の隣にも同種のパン屋が出来た。いくらなんでも隣とは、勝負を賭けたな、と面白がってみていた。
 しばらくすると、高級パン屋は下火になってきた。あんなに行列ができていたのに、いまは閑古鳥である。
 普通の食パンに砂糖を増やしただけじゃないか、という話になり、やっぱり普通の安いパンのほうがいい、となってきたのである。(本当かどうかは知らないが)
 隣同士に店を構えたパン屋は共倒れになって客足は遠のいた。新しいほうは早くも店を閉じた。古いほうはまだやってはいるが、お客さんが入っているのを最近は見たことがない。
 例のヨーロッパでの戦争で小麦の価格が上昇して、ますます逆風である。
 よくいくドラッグストアコスモスの食パンも値上がりした。値段の割にはおいしかったのに。買うのを控えるようになった。
 日本人はやはりコメを食うのが一番だ。コメを食え、コメを。
 ところが統計によると、最近はコメ離れが進んで、好んでパンを食べる人が多いらしい。特に高齢者。高齢者はパンが好きなようである。例の高級食パンも並んでいたのは高齢者が多かった。
 どうして高齢者がパン好きなのかは、当人に訊いてみないとわからない。簡単に食べられる、一人住まいの場合、コメを炊くのは面倒臭い、等々考えられるだろう。
   その高齢者にソッポをむかれた高級食パンの運命やいかに。
   そして小麦の価格上昇によるパンの値上げはどこまでいくのやら。ただでさえ今年から年金がなんぼか減らされている。年金暮らしの人たちの生活に響かなければよいが。
 
 

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