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「仕事に関する9つの嘘」を読んで、個性を寄せ集めたチームが強いと実感した時の話

表題の本はマーカス・バッキンガムとアシュリー・グッドールの著作です。世間で正しいと言われている人材評価やマネジメントの考え方の多くが間違っている!と断言してしまう本です。


その中で私が特に好きな主張は、最高の人材は「オールラウンダー」であるという"嘘"。例証として、サッカー選手のメッシがほとんど左足しか使わないことが挙げられます。最高の選手は、苦手を克服することで最高の選手になるのではなく、自分の尖った部分をさらに伸ばすことで最高になる、というわけです。

でも尖った人材ばかりでは収集がつかないのでは・・・と思ってしまいますが、著者は"尖った選手を組み合わせて個性的なチームを作ることで最高のチームができる"とします。

ここを読んだ時、あ、これは実体験したことがある、と感じました。


前にいたチームは、とても個性的なメンバー揃いのチームでした。だからこそ色々な成果が出ましたが、ここで書きたいのは華やかなエピソードなどではなく、当事者だけが知る地味なお話。


チームには、あるベテランの職員がいました。超合理的な考え方の人であり、最短距離で仕事をします。だから常に時間を持て余していて、周りからは「いつも暇そうにしている」とむしろ良くない評価すら受けるような人。ここでは仮に彼女を「合理化さん」と呼びます。

ある時メンバーの一人が退職し、補充に社員を雇いました。合理化さんに、新しく来た方への業務の指導をお願いしましたがどうもしっくり行かない。新しい職員は、合理化さんの指示が理解できないと言います。

合理化さんに話を聞くと、新しく来た彼女は「業務に例外が多過ぎる」と感じているようだと言います。確かに船舶の貿易実務をやったことがなければ、なぜそういう例外が起きるのか理解するのは難しいかも知れない。

合理化さんはやや愚痴気味に「今度の人は電卓で計算するのは苦手だけど、エクセルに入力して計算式で計算はできる」と言います。


電卓では計算できないけど、エクセルなら計算できる・・・メッシ??


「易しい業務と入れ替える"担当替え"をしましょうか」と、合理化さんと相談します。仕事は、普通はジョブとして中身が決まっているので、担当替えと言っても販売先とか商品アイテムを入れ替えるだけになってしまいますが、今回は担当先や商品を替えて何とかなる気がしない。

そこで合理化さんは「電卓さん」がどうしたら業務を行えるか考えます。彼女は業務プロセス自体を分解し、ある工程についてエクセルに入力すればあとは単純作業の後工程に行ける表を作って電卓さんに与えたら、電卓さんは俄然として業務に取りかかります。

こうしたやり取りを経て、全く異なるキャラクターの合理化さんと電卓さんの最強タッグが実現します。


多くの人は、与えられた仕事をこなすことはできても、その業務プロセスを"分解"し、他の人でもできるような仕事に"再構築"できるスキルを持つ人はそれほど多くいません。合理化さんにはそれができた。

一方の電卓さんは、例外の少ない大量の仕事をこなすことに喜びを感じるタイプ。そのガッツは、猛禽類が獲物を狙う時のような気高さを感じます。合理化さんの業務プロセス分解により電卓さんのガッツが解放され、今や彼女の守備範囲は、同じチームにいるオールラウンダーをはるかに凌駕しています。


マネジメントは"組合せのパズル"であること実感します。メンバーの特異性に関心を寄せ、その組合せでメンバーの能力を解放できるかどうかのゲーム。メンバーが能力を発揮するかは、メンバーのコンピテンシーがオールラウンドかに依るのではなく、マネジャーこそがメンバーの活躍する"場"を発見し提供できるかどうか。それはマネジメント側の責任だと感じます。


当事者の3人だけが知る、最高の人材はオールラウンダーとは限らない、との実例でした。


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