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35年目の湖池屋スコーン——物語への対照概念としてのリズム

YouTubeでCMが流れ始めて驚いた。なぜ今頃!?と思ったら、35年ぶりに「かつて佐藤雅彦氏が手がけ、1988年に公開された『スコーン スコーン 湖池屋スコーン♪』の歌メロでお馴染みの『社交ダンスCM』が復活した形だ」とのこと(アドタイから。リンクは下記に)。当時、佐藤雅彦氏が切り拓いた境地にやられたCMプランナーは多かったと思う(自分を含めて汗)。懐かしい。※記事のサムネイルはオリジナルのCMから。

でもこの投稿を書いているのは、単に懐かしさから、じゃないんですよ。最近(というか以前から)広告やマーケティングの世界では、ふた言めには「物語が大事」みたいな言説が飛び交っていて、それはコミュニケーションにおける大事な要素であるし、自分自身もたびたび持ち出す概念ではある(なんせ名刺のタグラインが「そのプロジェクトに物語を」ですから滝汗)。

ただし「物語」という装置は、諸刃の剣という性格をもつものでもあると思う。極端な例を挙げると、ある種の陰謀論とか。なので、コミュニケーションにおける別の切り口みたいなものの必要性を感じていたのだが、それが今ひとつ見えなかった。

そんなとき、たまたま千葉雅也さんのツイートで見かけた「物語の反対はリズム」(言い方はうろ覚えです)にハッとなった。情報伝達においてストーリー性を必要としないアプローチの指摘だと思ったのだ。

ひっくり返せば、佐藤雅彦さんの仕事は、それまで単に「連呼」としてテクニカルにとらえられていた広告の手法を、コミュニケーションのシステムとしてとらえ直して再提示したということではないかと思う。「作り方を作る」という佐藤さんの視点は、既にこの頃から立ちあがっていたのかもしれない。

ところでこのCM、もちろん緻密な戦略の上に発信されたもので、その辺はメディアでも報じられて、なかなか興味深い。なんせ社長はあの佐藤章さんですから(これも下記にリンクを貼っておきます)。

その一方で、「広告コミュニケーションにおける物語」みたいなことをずっと考えている自分にとっては、かなり気になる手がかりになりそうです。久しぶりに『佐藤雅彦全仕事』を読みかえそうかな。


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