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第四話 もっちべーしょん

 

前回までのあらすじ


 荒れ果てた庭を前に憤然としながらも草を分けいって進むと、足元に見覚えのある葉をみとめた。それは今は亡き人見知りの叔父が食後の種を植えたアボカドだった。根元で切り取られてはいたが、生きていて横から生えた新芽に緑の葉を従え、垂直に伸びようとしていた。よし、まずは雑草抜きからだと鎌を片手に鼻息を荒げた。

第四話 もっちべーしょん

     

近所の海岸に自生していた植物たち

 庭を綺麗にすると決めたものの、草が伸び放題になった庭には蚊もたくさんいて作業の腰を折ってくる。ただ片付けることだけが目標ではこれは続かないぞと改めて確信した。庭を再生する。想像力を使って新しい庭を頭に描き、適当さをスパイスにしながら新らしく草木を育てる必要がある。道中には何度も草刈りや虫の退治やゴミの処分など煩わしい作業もあるだろう。何か、モチベーションがなければ簡単に諦めてしまうかもしれない。チョキチョキしながら考えた。何かないだろうか。そうだ、日誌を書こう。適当に植えた草木がその後どうなっていったかメモをとり、花が咲けば写真に写し、実を収穫し、蒔いた種を忘れないように図に書き起こそう。船乗りが風向きや行手を阻む困難のあれこれを航海日誌に記録するように、ぼうぼう庭の再生を日誌に記す。そうだ名前はぼうぼう日誌がいい。

 

最初は鉢植えだったらしい漆、断面が焦げている

 ところで、この切り株は漆の木なのだけれど、根元に近い窪みに別の種類の芽が生えている。まるで宿木的な寄生の仕方だけど少し低すぎやしないか。そして君は誰なんだ。赤い実が似合いそうな気はするが。


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