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16の思いも天にのぼる④恵美(3)

 家に帰ると暗くなっていたが、電気も点けずに、ベッドにダイブした。
 自分の力の無さと、広の死への悲しみとで、感情がぐちゃぐちゃになっていた。
 今自分がどうすべきかを見失った。
 友だちをどう慰めればよかったのか、彼女の気持ちは、本当はどんな気持ちだったのか、今更後悔が襲ってきた。
 恵美は、悲しみとイライラと後悔に押しつぶされそうになった。しかし、恵美はいつも相談される役でこんな時、話す相手がいなかった。
 両親も夜遅くまで仕事のため、両親にさえ話せない、もどかしさでおかしくなりそうになっていた。
 考えても、考えても、どうしていいか分からず、次に虚無感が恵美を取り巻いた。
 その時、バックから担任に渡された、広へ書く手紙の用紙が目に飛び込んできた。
 恵美はベッドから立ち上がり、その用紙を鞄から取り出し手にした。
「広君への想いを書くだけでも、少しは違うかな。」
 そう独りごとを言い、机に向かいペンを持った。
【広君へ

広君が急にいなくなって、驚きとショックで、いっぱいです。
 私の友だちは広君が好きだから、泣きじゃくって仕方がありません。
私は、こんな時どうすればいいのか分かりません。
 広君ならどうしますか?
 初めて広君を知ったのは、友だちが広君のことを好きだと打ち明けてくれた時です。どんな人か気になり、クラスまで見に行ったことを今でも覚えています。
 その時の広君は、男女隔てなく、多くの子に囲まれ、楽しそうに笑っていました。
 私はその時、恋愛ではないけれど、広君に対して好意をもちました。だから、友だちから聞く広君の話は楽しみの一つでした。
 それから友だちから広君の話を聞くうちに、自分と重なる部分があり、勝手に親近感がわくようになりました。
 私にとって広君は憧れでした。私が目指す、みんな仲良く過ごせて、困っている人を助けてあげる、ということができる人物だったからです。
 もし、広君が死んでいなくて、他の人が死んで友だちが悲しんでいたら、広君はどうしていたのか、私は考えてみることにします。
 でも中々、思いつきません。
私は友だちを更に傷つけてしまいました。
 もしかしたら、広君の彼女のことも傷つけたかも知れません。
 私の正義感は広君と違って、強引なんだなと、今回のことで思い知りました。
 と、お別れの手紙が懺悔の手紙になってしまってすみません。
 広君、私も広君のようになれますか?
 とりあえず、私は友だちに何もせず、見守ってみようと思います。
 広君もどうか彼女だけではなく、みんなのことも見守ってあげてください。
 みんな喜ぶと思います。もちろん私も。 
 広君、今の気持ち、聞いてくれてありがとうございます。
 向こうにいっても人気者の広君でいてください。
                         大沢恵美】
「なんか、変な手紙になっちゃった。でも、少しだけ落ち着いたかも。広君効果絶大なり。亡くなっても、助けてくれるなんて本当に凄い人だな」
 恵美は手紙を書き終わると、ペンを置き、またベッドにダイブした。
「はぁ、今日は疲れたな。いったい私は、今日誰を助けて、誰を傷つけたんだろう」
 恵美は思っていた以上に疲れていて、そのまま、深い眠りについた。

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