PICK☆3感想レポ!最近のLDH舞台のクオリティが高すぎる!

PICK☆3〜それは〜君が見た光〜僕が見た希望〜

青雲♪


【最近の舞台に当たりが多すぎる件】

慎くんは海外演出家による超有名な古典ロミオとジュリエット。今回の三人は熟練のコメディ作家による現代喜劇。陣さんは岸田國士戯曲賞にノミネートされた新進気鋭の作家によるソロ舞台。2.5次元界隈からのファンも多い佐藤流司さんが初めて制作する舞台には樹くん。韓国でヒットしクオリティが保証された輸入ミュージカルに陸さんと翔平くん。吉本芸人の作り上げる舞台に放り込まれた山彰さん。

「よっこらせ、推しが出てるから見にいくか〜」だけではない。「その舞台は一体どんな感じになるの!?」と興味をそそられる演目に好きなグループのメンツが出ること、ぜいたくが過ぎる。今のLDHの舞台部門に敏腕社員がいるって!!!見てよこのバラエティに富んだ企画!企画の時点で良すぎるんだもん!!!上半期のTHE RAMPAGE舞台、「配信と円盤の保証がない」ということ以外は、完璧だ!

【ストーリーについて】

このPICK☆3という舞台、大枠としては「恩師の葬式で再会し物語が動き出す感動ドラマ」を題材にしたコントの形をしている。それでいて、大量に生産され消費される安直な感動ドラマの無意味さくだらなさを嘲笑するニヒリズムな笑いにはとどまらなかったところが最高すぎる。

感情を激しく揺さぶるような、ドラマチックなことはあえて起こさない。この物語はドラマで飾り立てられた特別な宝箱の中ではなく、セットに大量に使用されている特別でない段ボール箱に納められている。ドラマチックな事件で登場人物の人生が一変することはない。そういう特別さではなく、個々の人生の特別さにフォーカスしている。タマちゃんにはその価値が分からないがらくたの詰まった段ボール箱こそがアッチョの宝箱である、ということだ。人生の宝物は、誰が見ても特別な宝物だとわかるものではなく、人がそれぞれの人生を生きていく中で見つけていく、特別な宝物であるということを描き出している。

輝かしい「特別な」人間でなくたって、それどころか「普通」ではないアニメ好きの引きこもりだって、君は人生の中に宝物を見つけることができる。だからこそ、今は嵐の中やいつ晴れるかもわからない曇り空の下を生きているかもしれないけれど、これから先の人生は生きてみるに値する。すべての人に向けて、温かい視点により描かれた、人間讃歌を感じさせる作品だった。

「ガキは夢を見て終わるが……大人は夢を叶えることができる」
……せ、関ちゃんのおとーさん!?!?!突然脳裏に関ちゃんのおとーさん(HiGH&LOW THE WROST)がカットインしてきた。

作中では、三人が楽しかった子供時代の思い出を振り返っている。しかし、ただノスタルジーにひたって過去を美化しているだけにとどまらない。あの日、子供の彼らは曇り空の下で地面⤵︎ ︎を掘っていたが、ついに宝物は見つからなかった。そして大人になった彼らの人生はまるで毎日が曇り空のようだったけれど、ふとあの場所で晴れた夜空を見上げると⤴、美しい星空があった。十年以上経って「つまらない大人」になってからやっと、あの頃の彼らが探していた「宝物」が見つかったのだ。歩いていれば、生きていればそのうち見つかるかもしれない。人生の宝物は必要なときに見つかるものだ。

エピローグ。彼らの立っている場所は物語の始まりと変わらない。例えるなら、星の見える山の頂上。しかし、同じ地点に立っていても、物語の始まりと終わりとでは違うものが見えている。彼らは恩師の死を経験してがらりと変わったわけではない。アッチョは大学時代にキモいと言われたアニメオタクのまま。ポーは売れない歌手のまま。タマちゃんも相変わらず挑戦的な企画を上司に出し続けている。ただ、唯一変わったことと言えば、うつむいていた三人は遠くに希望の星を見つけ、顔を上げて歩き出したということだ。それだけでこんなにも晴れ晴れとした気持ちになるとは。この先の彼らがどうなるかは、作中では描かれていない。それでも、なんだかいい未来が待っているような気がする。

劇場を出た観客は、ぞろぞろと二時間前と地続きの日常に戻っていく。少しだけいつもより前向きな気持ちになって。前向きになること、ただそれだけのことで、なんだか自分にもいい未来が待っている気がしてくるから不思議だ。

【ビジュがいいッ!!】


……というのも、イケメンということではない(いやイケメンだけど)。

三人に視覚的な面白さがあるのがよかった。イタズラ好きのクソガキワルガキ三人組といえば、ズッコケ三人組。デカいの、細長いの、小さいの。やんちゃ、おとぼけ、まじめ。カブト虫とテントウ虫とナナフシが脳裏を過ぎる、黄金比。

彼らの短パンスタイルは、ジェラードンの角刈り小学生ならぬ、ムキムキ小学生、細長小学生、元天才子役成人男性小学生、的な面白さがある。個人的には昂秀くんの細長さがクリーンヒットした。膝から下が、妙に長い。それでおもしろい動きをする。アンガールズ、ノンスタイル、ジョイマン的な……長いのがお笑い的にイイ!愉快な昆虫みがある(ないか)。エア自転車に乗ってる姿、羽化するかと思った(ペダステ、御堂筋くんではない。)。ポーの細長くてぐにゃぐにゃ動くところ、リアル小学生みもあるうえに、大人が小学生ムーブをするのは視覚的におもしろく、笑ってしまう。これもLDHフィジカルのなせる技なのだろう。筋肉はすべてを解決する!子供時代のあの髪型、床屋の「ババア」に切りそろえられてるのかもなと思う。ちびまる子ちゃんorバリカンしか選択肢がなくて。

マッチョな海青くんがイメージと真逆のオタク的言動をしたり、「らしくない」動きをするのはギャップでおもしろかった。髪ちょい長めなのもひきこもり感ある。小学生時代は、つばを後ろ側にするというキャップの被り方にクソガキポイント10点。絆創膏も幻視えた。山彰さんなどのわかりやすい比較対象がいなくとも彼が今この現場の中で一番総合的にデカいのは一目瞭然、そんな彼が舞台の上で動いただけでおもしろいってのは判定甘すぎか。それにしても、ヤンチャな子供時代もひきこもりのオタク時代も変わらない、大きな笑顔がとてもかわいい。ふと、笑顔可愛くないマッチョって逆に居ないのかもなと思ったよ、ヤー!  はー、笑顔でアニメを語るアッチョかわいい。武知海青くんの笑顔デカすぎて射程距離Sだな、特大スマイルでグリフィンドールに10点!!!だ!!!

翔吾くんのビジュアルは三人の中で一番小学生らしい大学に見える。もともと少年みが強く、生まれながらにしてお坊ちゃまクン的な洋服がやたら似合う男。クリクリの髪の毛は天パかもしれない。そのビジュアルに名探偵コナンの腹立つ(いい意味で)白々しい小学生モード(あれれぇ〜?おじさん、どうしてこんなところに○○が落ちてるのかなぁ〜〜?のアレ)的な、こども店長的な、天才子役演じる小学生的なブリブリ感がベストマッチしていた。そういう演技指導をされたにしろ、演技の仕事をメインでしてるわけではないし、本人のレパートリーの中からブリブリ小学生が出てきたんだよな……。これは数え切れないほどのおじさんが手のひらの上で転がされてきたんだろうな……。

【ギャグのレパートリーが豊富】

コメディ調の作品とひと口に言っても、それぞれの作品に個性がある。微笑ましい小学生ドラマをはさみつつ、大人の苦悩を描写し、「普通に感動」しそうな話を作っておいて、合間にギャグを差し込んでいく。そんくらいの割合かなと思っていた。

が、蓋を開けてみれば、チェックリストでもあるのか!?ってくらいギャグの種類が豊富で、コロコロとサイコロやルービックキューブを転がすように多種多様なネタで笑わせてくれて、とても満足度の高い舞台だった。

□じゅげむじゅげむ(アニメキャラの長い名前)
□ショートコントVR内観(エンタの神様?)
□言葉遊び系(「不」謹慎、ファッこも)
□サウスパークのケニー枠的なかぶせギャグ(1話に1回こうなるヤツ)
□不謹慎な笑い(お葬式で笑えてくる)
□暴力的なギャグ
□ものまね
□歌ネタ(ポメラニア音頭)
□ボケがひたすらバカな奴
□ズレてる(ズコー!)
□キレ芸
□ナレーターのメタなネタ、第四の壁
□タクセンが音声をさばいてくピン芸人コント的な
□小学生あるあるネタ
□LDHあるあるネタ(内輪ネタ)
□下ネタ(ポーが担当)
□感動のシーンで茶化して笑いとってくる
□変顔
□変な動き
□「ババア」←コロコロコミックの笑い

などなど、まるでチェックリストを埋めていくかのようにあらゆる角度からネタ出しをした上で、演じる中の人に合うようなネタに調整し、出力されている。ストーリーを進行しつつ多くのネタを差し込み、笑いの流れもストーリーの流れも途切れさせない手腕に驚かされた。ショートコントの引き金的にPICK UPというゲームが機能しているのも面白い。


【二次創作的な勘所を掴んでいる】

事前にプロフィールシートでも提出したのだろうか?各人にぴったりのギャグを当てはめてくれている。作家によってあらかじめ用意された脚本をメンバーが演じた、のではない。キャラクターとギャグと本人の混じり合いが見事で、彼らのために脚本が調整されていることがよくわかる。それはとても贅沢なことだと思う。作家の方は、素材の味が生かした料理が上手すぎる。その人物のどの部分を使うとどういうギャグが映えるか。次回の刀剣乱舞の映画版で長谷部の仮の主が「福岡から夜行バスでやってくるギャル」みたいな、二次創作的な笑いの勘所を掴んでいる。

少年らしさを残している翔吾くんは、120%ぶりぶりぶりっ子でもかわいいし、とはいえ成人男性なのでなんか笑える。名探偵コナンとかこども店長的な白々しさ、その笑顔の若干の不気味さが笑える。彼の「笑顔」はチャームポイントだが、トラックに轢かれて大怪我をしてもニコニコの狂気スマイルという笑いになっている。元気になってYATTA!YATTA!みたいな舞をキレッキレでにっこにこで踊り始めるの不気味きも面白さでクソワロタ太鼓ドンドンだよ!普段が「真面目」なので、ファンには失礼芸や乱暴芸が面白く感じる。「びびり」でお化けが苦手、動物が苦手、脅かされるのが苦手、みたいなところも、おもしろく表現されていたと思う。

昂秀くんはまずあの細長さが若干の不安定さ不気味さを感じさせるので、気味の悪い発言がフィットしている。不思議ちゃん系なところや、すっとぼけたおバカキャラもぴったりだった。普段の「ポンコツ」扱いされてしまうキャラも意識しているのだろう。いざというときの無茶ぶりに応じるタイプということも取り入れられていて、ここでも無茶ぶりをやり切っている。歌が歌えるということも、プロフィールを加味していたのだろうか。顔が濃くて顔芸が映えるので、それも生かされていてよかった。もっと彼の変顔を見たい。

海青くんはマッチョでストイック。マッチョなのにひきこもりオタクムーブをするところがギャップで笑いを生む。ムキムキ小学生って小学生の好きなギャグだよ。筋肉芸。とにかくステージ上での動きがでかいのが笑えるし、暴力ギャグが本当に強そうで勢いがあり、映える。フィジカルを生かしたステージでの動きは本当に彼の強みだ。

最後に……。ダイノジの大地洋輔さん演じるタクセンが、アドリブが生かされているこの舞台の要になっていた。お笑い芸人という、お笑いライブのプロがステージにいてくれることの心強さといったら。なんでもおもしろくしてくれるからすごい。彼がいなければ成り立たなかった作品だ。四人の作り出す舞台をもっと観たかった。叶うことなら複数回鑑賞したかったが、それは叶わなかった。自分は一度しか観劇できていないし、多くの方が一度も目にすることなくこの舞台が過去になっていくのが悲しい……。円盤か配信か、何かしらの形でより多くのファンに届いて欲しい舞台だった。どうすればいいんだ……?ETERNALですら1も2も円盤になっていないのに……!!!!???

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