見出し画像

ニホンミツバチ保護捕獲群の逃去!?

保護捕獲の経過報告です。

ニホンミツバチの飼育が困難とされている理由の一つがその逃去のし易さにあります。
分蜂群を取り込んだはずがいつの間にか忽然と消えてしまう群、これまで営巣していたのに巣落ちを機に飛び去ってしまう群、などなど、一つ一つの理由を探る事も大変興味深いのですが、養蜂家にとっては悩ましい習性です。

ミツバチの分泌する”プロポリス”という物質を、「なんとなく体に良さそう」などザックリとしたイメージを持っている方も含めてご存じの方も多いのではないかと思います。
プロポリスとは、植物の樹脂に蜜蝋をはじめとするミツバチの分泌物が合わさった物質です。巣房を雑菌などから守るその効果から『天然の抗菌物質』とも言われます。また抗菌作用だけではなく、樹液を主成分とするその粘着性と固着性によって巣板を強固にします。

一方でニホンミツバチはこのプロポリスを分泌しません。その為、西洋ミツバチのそれと比べて巣板はとても柔らかく、衝撃や熱には弱い傾向にあります。

養蜂という人間目線ではなく、見方を変えれば
『新しい場所で生きていける力』
『転居を容易とさせる簡易な営巣』
と考えることも出来ます。
身軽であるが故の環境適応性の高さを感じずにはいられません。

プロポリスは特有の揮発性の強い香りがあり、西洋ミツバチの蜂蜜からはその香りが強く感じられます。
対してニホンミツバチのハチミツはとても柔らかく華やかで優しい風味です。ニホンミツバチのハチミツの味に慣れている私の家族は西洋ミツバチのハチミツの香りは少し刺激が強すぎるように感じてしまう程の違いがあります。

私はコーヒー豆の焙煎を本業としておりますが、コーヒー豆の焙煎同様に、こうして真剣に取り組んでいるニホンミツバチのハチミツも販売しておりますので、お試しいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

前置きが長くなり過ぎました(笑)
時系列を整理しておきます。

2022/6/25 駆除のご相談・現地調査
2022/6/28 保護捕獲実施
2022/6/29 ハチマイッターの設置
2022/6/30 逃去未遂

強制入居の翌朝、巣箱を観察してみました。
私の巣箱は信頼する師匠の巣箱の構造をベースにしながら、サイズや構造にオリジナルの改造をしたものとなっております。

巣門の前でホバリングする働き蜂。これは新しい環境を確認して危険の有無や居心地などをチェックする警戒行動でもあり、自身の居場所を確認する位置情報のリセットのような行為でもあります。

この時点で本能的に、このままでは逃去のリスクが高過ぎると察し、私の養蜂の師匠から”ハチマイッター”をお借りすることにしました。

ハチマイッター。養蜂家でなければ聞いたこともない、気の利いていないダジャレのようなこの器具は、巣門の入り口に設置して、働き蜂は通過できるが女王蜂は通過できない3.8mmという絶妙なクリアランスで女王蜂の逃去を防ぐための専用道具です。気が利いてます(笑)

動画を見て頂ければその絶妙な隙間をやっとこさ通り抜ける働き蜂の健気さを感じて頂けるのではないでしょうか。

そして翌日の午後、俄かに巣箱が騒がしくなりました。
明らかに逃去行動です。

捕獲した時に確認していた通りの大群が、一目散に裏山の奥へ飛んで行ってしまいました…
あまりにあっけなく、そして後ろ髪をひかれることもなく飛んで行ってしまった大群に、ハチマイッターの効果を疑いを感じながら、本巣を確認します。

すると、、、見る見るうちに巣門の前が賑やかになってきました。

これはつまり、働き蜂の集団が合意形成を経て逃去を試みたものの、肝心の女王蜂がついて来なかったために本巣に戻ってきたという状態です。
この後ももう一度逃去的に飛び立つ行動をしましたが、程なく戻って来ました。

お帰りなさい

この事象で確認できたことはハチマイッターの効果だけではありません。
保護捕獲として吸引機で連れてきた働き蜂大群と共にに、女王蜂を無事に連れて来れたという確信を得たのです。

女王蜂のいない群れは、遅かれ早かれ崩壊してしまう運命です。
巣枠式の巣箱ではその存在をくまなくチェックし、無王が疑われるならばそれに対して人為介入によって新女王の誕生を促すなどの処置を講じることが可能になります。

年々深みにハマっていく感のあるニホンミツバチの養蜂。
毎年新しい経験と感動的な出来事と出会い、そして新たな気付きがあります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?