アビガン

このような記事があった。

いくつか問題があると思われる。

①アビガンは一般名をファビピラビルというが、この薬には先天異常という危険な副作用があり、実はこれまでにも特別な規制の対象になってきた。安倍氏は5月4日の記者会見で、その副作用は1950〜60年代にかけて何千もの奇形児を生み出した「サリドマイドと同じ」だと述べた。

⇒催奇形性があることをわかって使用することが重要である。なので、十分に検討がなされないで使用されていたサリドマイドとは次元が違う話だと思われる。しかもサリドマイドは多発性骨髄腫に現在でも使用されており重要な薬剤である。

②トランプ氏が抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを推奨したように、安倍首相がアビガンを宣伝することで、慎重に行われるべき医薬品の承認プロセスが国家のリーダーによる異例の介入によってねじ曲げられるのではないか、との懸念が強まっている。

⇒ここはある程度同意はするが、医療者もそこまで馬鹿ではない。正義の番人と思われる先生方は多数いらっしゃる。

③これら機関の多くは、無作為抽出による二重盲検やプラセボの使用といった厳密な対照実験を行っていない。アビガンを投与している医療機関は、先天異常が問題になる可能性が低い高齢者では、リスクに対し潜在的なメリットが特に大きくなると主張している。

⇒ここも同意はする。しかし、COVID-19患者に効く可能性がある薬剤があります。ただし効果は確定しておらず、プラセボ対照試験で確認したいと思います。あなたはどちらにあたるかわかりません。しかし、あなたがこの試験に参加されなかった場合、アビガンが別の臨床試験で投与可能です。と説明されたら試験に同意する患者さんはいるだろうか。

④承認プロセスはこれまでとは「異なる形」になる可能性が高いと述べた。開発者が実施する従来の臨床試験に依拠するのではなく、薬は有効だという判断を専門家が下せば承認が出るというのである

⇒臨床試験も最終決定は規制当局の判断なので、専門家の判断である。単アームでも結果で有効そうであればいいのではないか。アビガンが使用されていない群との成績比較である程度は言えるだろう。このような緊急事態ではやむを得ない対応ではないかと思う。

⑤安倍氏はなぜここまで強くアビガンを推すのだろうか。その理由は定かではないが、日本の一部メディアは安倍氏と富士フイルムの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)との親密な関係に触れている。首相の動静記録によると、2人は頻繁にゴルフや食事を共にしており、最後に会ったのは1月17日だった。

⇒ではギリアド社とはもっと親密な関係にはないのだろうか?なぜ富士フィルムのみこのような取り上げられ方をするのか?非常に恣意的である。

⑥3月、アビガンが軽度から中程度のCOVID-19患者の回復を早めたことを示す論文を中国の2つの研究チームがオンラインで発表したことで、アビガンにはさらなる追い風が吹いた。

新型コロナウイルスの感染が広まった事実を初動で隠蔽したとして批判にさらされていた中国政府は、この研究結果を中国のウイルス対策の成功例として宣伝し始めた。が、論文は基本的な対照実験が行われていないとして、科学者から即座にこき下ろされる。査読を受けていなかった両論文は修正され、結論は一段と不確かになった。

⇒政府の宣伝のための論文の可能性は否定できないが、中国政府の対応と、中国人研究者の話は区別して考えるべきである。症例報告として効果があった⇒もう少し数を増やして検討⇒対象研究という流れに問題はないだろう。

対照試験のない研究はいくらでもある。control群の設定がなされていなかったことだけをもってこき下ろされるは言い過ぎと思われる。実際そこまでこき下ろされているとは思わないが。STAP細胞の方がよほどこき下ろされたであろう。

⑦アビガンは日本でも2014年に条件付きで使用が許可されたにすぎない。医療監視団体は、これを「極めて特殊な状況」と呼んでいる。

⇒それはそうかもしれないが、現在も極めて特殊な状況であろう。

⑧規制当局の評価では、アビガンは季節性インフルエンザに対し「有効性が示されていない」ため、インフルエンザへの使用は承認できないとされた。ただし、既存の抗ウイルス剤が有効でないと判明した「危機的」状況においてのみ、新型または再興型インフルエンザに対する使用を認めている。

⇒インフルエンザではないがCOVID-19に変わっただけで、既存の抗ウイルス薬が有効ではないとされる状況と思われる。

*全体としてアビガンが承認を受けたことと、アビガンが使用されることがごっちゃになって書かれている。

アビガンが使用されることが問題なのであれば、レムデシビルもオルベスコもプラケニルも、ナファモスタットも全部そうだろう。対照試験うんぬんかんぬん書いてあるが、質・量とも満足に満たす試験を迅速に行うことはできない。なのである程度特殊な使用方法を行わなければいけないだろう。

アビガンが承認を受けたことが問題と指摘しているなら、それはそうなのかもしれない。しかし現在のやり方では臨床試験に参加している施設とそうでない施設で使用できる薬剤が変わってくる。それが許容できるかどうかだ。ある程度現場が効果を実感している薬剤ならどこでも均一に使用できるようにする、それも特定の医療機関への負担を避けることになると思う。

「けいゆう病院(横浜市)で感染症を専門とする菅谷憲夫医師は、もしアビガンが新型コロナウイルスに有効だとしたら、病気の初期段階で役立つ可能性が高いと話す。」

まさにここである。ホテル・自宅で療養されている人に内服いただけばいい。そうすれば重症者が減る可能性がある。

安倍憎し、が前面に出来すぎて、そのためにいろいろ後付けした感は否めない記事であった。

別に個人的には安倍マンセーでもなんでもない。

アビガンの承認がレムデシビルより後であったことは問題だと思うし、軽症者から内服できるシステムを構築するのが遅すぎる。

これは医療の素人の安倍さんには無理だ。専門家委員会が行うべき仕事であろう。そんな判断は当たり前にできる方ばかりであり、きっといろいろな壁があったんだろうと想像される。

この経験を必ず検証し、次に同じような事態が起きた時のために備えるべきだ。この事態が落ち着いた後、日本が、世界が必ず行わなければいけない。





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