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定年後 100 日目 8mmフィルムとビデオテープの話

定年から 100 日目。

「定年100日後にyoutuberになりたいヒト」というマガジンだけど、結果はご覧の通り。
目標は達成できず。すみません。

私の youtuber のイメージは、一定の動画を定期的にアップしていて、ある程度のフォロワーから、「あの人のチャンネルはこんな感じだよね」と認知されるような人。

定年退職から 100 日あれば、そんな人になれるかもと思ったけど、そう甘くはなかった。リタイアしても現役のときと同じ気合いが必要だったと反省。

それでも新しいことについて調べ、思考を巡らせ、試行錯誤を繰り返すのは、やはり面白い。

きっと皆さんは遅々とした展開に呆れ、「100日たってもダメだったじゃん」と思われているに違いないけど、続けてみようと思う。


編集についての古い話

今日はちょっと現実逃避。

現在の動画制作の環境は、iPhone12 + FiLMiCPro + Capcut と、 α7S3 + FinalCutPro。特に工夫はなく、皆さんがイメージする標準的な状態で使用している。

これらで4K動画を撮影して、ソフト上でノンリニア編集をしている。
いまどきリニア編集をする手段はないので、「ノンリニア編集」と言ってもピンとこないかもしれない。

簡単にいうと動画データをパソコン上で編集することをノンリニア編集という。動画がコンピュータのデータになっているので、自由に並べ替えたり切ったり繋いだり伸ばしたり縮めたりすることができるところから、こう呼ばれている。


40 年前の動画メディア

40 年ほど前に動画作りを始めたとき、メディアは大きく二つあった。
一つは 8mm フィルムで、衰退期に入っていたものの、ちょっとした街の写真屋に行けばフィルムを入手することも現像を依頼することもできた。
もう一つはビデオテープ。こちらも私が幼い頃からあったが、最初はオープンリールテープだったものが、四角いプラスチックケースに入ってベータや VHS といった規格として普及し始めていた。

自分の作品はビデオテープが中心で、フィルムカメラも何台か持っていた。フィルムの質感にこだわる仲間も多く 8mm フィルムの作品の手伝いもよくした。

フィルムカメラ



8mm フィルムの編集

8mm フィルムの編集は力ずくなところがあるが、理屈はシンプル。

・OK テイクの切り抜き
8mm フィルムは一本が 3 分 20 秒程度。現像から上がってくると、小さなスクリーンがついた編集機にかけて、リールを手回ししながら OK テイクを選んでいった。

8mm フィルム編集機

OK テイクが決まるとその前後をハサミで切り取った。

一辺が 4〜5mm 程度のコマの中の画像は肉眼で確認できないので、シーン・カット・テイクを書き込んだドラフティングテープを、カットしたフィルムに貼り付けて整理した。

これを繰り返して OK テイクを選び出していくのだけど、わかりやすく並べるために部屋の隅から隅まで紐を張って、絵コンテの順番になるようにフィルムをクリップでぶら下げていった。

この時、別の紐に NG カットも同じ順番になるようにぶら下げた。繋いでみたら別のカットの方がよかったというときに、探しやすくするため。

・テープで貼り付け
OK テイクが揃うと、スプライサーで繋いでいくのだけど、ちょうどコマとコマの間で切り取ったフィルム同士を突き合わせて、セロハンテープのようなものをくるっと巻きつけて繋げていった。

スプライサー

私の場合はカットの最初と最後を少し長めに繋いでおいて、通して見た結果を確認しながら数コマずつ切り取って調整するようにしていた。

この時も切り取った数コマの破片は、フィルムの順番を守って紐にぶら下げていった。後になって、切り取ったコマをやっぱり復活させたいということもよくあった。

・つぎはぎだらけの完成版
容易に想像できると思うけど、出来上がったフィルムはつぎはぎだらけ、テープだらけになる。

パソコン上でデータを切ったり伸ばしたりする作業に比べて、膨大な時間と労力が必要だった。もちろん画像は現像から上がってきたものがすべてで、画質を補正することもエフェクトをかけることもできなかった。

・音声トラックもあったけど
ちなみに音声は幅が 1mm ぐらいしかない磁気部分に収録することが可能だったが、音質を語れるようなレベルではなかった。


ビデオテープの編集

ビデオテープは現像をしなくてすむというだけで画期的だった。

ビデオテープの編集はダビング(コピー)が基本になる。
ビデオデッキを 2 台用意して、片方で撮影したテープを再生して、もう一方で OK 部分を録画していくが、根本的な課題がいくつかあった。

・画質の問題
ダビングすると、必ず画質が悪くなった。民生機でも高級なビデオデッキでは画質劣化を避ける機能がいろいろとあったが、軽減するだけだった。

特に複数人に配ろうとすると、一度ダビングして編集した完成版をさらにダビングしなければならない。つまり人に渡すテープは元のテープの孫コピーになり、画質もかなり劣化した。
8mm フィルムに比べれば、自宅で複製が作れるようになっただけでもすごいことだけど。

・タイムラグの問題
私が使いはじめた頃のビデオデッキは、再生・録画のスイッチが機械的なレバーではなく、電気的なスイッチになっていた。
これが曲者だった。

録画側を一時停止状態にしておいてダビングを始めたいところで一時停止を解除するのだが、スイッチを押してから実際にテープが回り始めるまで 0.5 秒から 1.5 秒ぐらいのタイムラグがあった。

再生側の画面を確認しながら、「ここから使いたい」と思った場所の 1 秒ぐらい手前で録画ボタンを押さなければならない。これが極めて困難だった。しかも録画が 0.5 秒後に始まったり、1.5 秒後に始まったりした。

・プリロールデッキの導入
しばらくそんな編集をしていたが、我慢ができなくなってプリロール機能のついたビデオデッキを 2 台購入した。

Victor HR-S10000

プリロール機能とは、あらかじめダビングを始める部分をそれぞれのデッキに指示しておくと、開始点の数秒前までテープが巻き戻ってから同時に動き出し、安定した状態で正確にダビングができるという機能。

それでも民生機レベルでは数フレームの誤差が生じることがあり、8mm フィルムの時のような正確な編集はできなかった。

・遡れない問題
最初のカットから順番にダビングを繰り返して繋げていくので、編集済みのカットを遡って再編集することができなかった。
編集するたびにその部分を決定していくようなイメージで、後から一切修正できず、これは致命的な問題だった。

カットごとに最適値を判断したつもりでも、編集後の全体を通したチェックで修正する必要が生じることは珍しくない。それでもそのまま完成版にするしかなかった。
どうしても遡って編集し直す必要がある場合は、そこから後のカットはすべて編集をやり直すことになった。

・音声の問題
ビデオテープには音声を記録する部分が二つあった。一つはテープの端に映像とは独立して記録する部分。ステレオになってはいたが、あまり音質は良くなかった。

もう一つは映像を記録する部分と同じ場所に記録するもの。こちらは記録容量が大きく、音質も優れていた。
しかし、この部分は映像と同時に録音しなければならず、動画編集後に音声を記録することができなかった。


昔もノンリニア編集はあった

昔の動画編集を思い出してみると、現在のパソコンによる編集がどれほど簡単で、効率的で、経済的で、高機能で、可能性に溢れているかを再認識する。この環境を活用しないとね。

ちなみにビデオテープの編集に四苦八苦していた頃にも、ノンリニア編集はあった。
ポストプロダクションの中には数百万円、数千万円という機材を並べて、ノンリニア編集をしているところがあった。

業務用ビデオデッキ

一度だけ、自分の作品の編集をそんなポスプロにお願いしたことがあった。
そこでは一流どころのコマーシャルや、大河ドラマなんかの編集を請け負っていたらしい。
お仕事されていた方々は失敗が許されない日々の業務の合間に、ド素人の作品を扱うことが新鮮だったのか、なぜか受け入れてくれた。
もちろんリニア編集だったと思うけど。


2022/7/9

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