2023年10月20日の回跨ぎ登板でホセ・ルクラークに何が起こっていたのか

●概要


テキサス・レンジャースの投手 ホセ・ルクラークが、2023年10月20日のALCS第5戦とい重要な試合のラスト4アウトを取るべく、2点リードの8回2アウトから登板し、その回は危なげなく投げ切った。
しかし、その次の9回のマウンドに上がるまでに、乱闘や相手監督の抗議などがあり、30分以上待たさせる形となった。
そして、その9回に逆転3ランを打たれ敗戦投手となった。
この逆転を許した9回の投球を、直前の8回やレギュラーシーズンとTableauを使って可視化し比較して、30分以上待たさせたことで投球に何か変化があったのかを見ていきたい。

●データ概要


期間:2023年レギュラーシーズン(3月30日~10月1日)、ALCS第5戦(10月20日)
選手:ホセ・ルクラーク(テキサス・レンジャース)
Baseball Savantより取得:
https://baseballsavant.mlb.com/

●分析結果


・ホセ・ルクラークの2023年レギュラーシーズンの球種別変化量


球種は、4シーム・シンカー・チェンジアップ・カッター・スライダーとリリーフ投手としては比較多い5球種を多彩に使い分ける。4シームはシュート成分の少ない所謂“マッスラ”系である事が分かる。

・10月20日の球種別変化量


10月20日は30球を投じているが、持ち球種を全て投げている。特徴的な4シームはレギュラーシーズンと変わらない“マッスラ”系の変化をしているが、チェンジアップはレギュラーシーズンと比較するとシュート成分が多い球が目立つように見える。
深堀していくために、イニング別毎に分けて変化量を可視化してみる。

・10月20日の球種別変化量イニング別


イニング別に可視化してみると、殆どの球種でイニング別の差はないが、唯一チェンジアップの変化量が8回と9回で大きく異なり、9回はシュート成分の多い変化になっている事が分かる。

・レギュラーシーズンと10月20日9回のチェンジアップの変化量を比較


チェンジアップの変化量をレギュラーシーズンと比較すると、10月20日の9回は普段投げている球よりシュート成分の多い球になっていた事がよく分かる。
また、このシュート成分の多いチェンジアップをホセ・アルトゥーベに捉えられ、逆転3ランを献上している。
そこで続いては、このHRにされたチェンジアップの投球コースを確認してみたい。

・HRとなったチェンジアップの投球コース(捕手視点)


投球コースを見ると普段よりシュートしたことによって、ストライクゾーンの隅(インロー)という素晴らしいコースに決まっている様に見える。
しかし、HRを打ったアルトゥーベの得意コースと重ねてみると・・・

・HRとなった投球コースと打者の得意コースを比較


ヒートマップはアルトゥーベの緩い球の得意・不得意コースを表しており、赤ければ得意、青ければ苦手コースを表している。
そして、投球コースと重ねる事によって、普段よりシュート成分の多いチェンジアップのせいで、不運にもアルトゥーベの得意コースに丁度収まってしまっている事が分かる。
普段の変化量のチェンジアップであれば、真ん中低めに決まり、少なくともHRになる可能性は低かったと思われる。

●まとめ


今回のルクラークは30分以上待たされてから回跨ぎ登板をしたことによって、チェンジアップの変化量が普段とは違うものとなってしまい、そのせいで打者の得意コースに入ってしまった事でHRとなった可能性が高い事が分かった。
素人が試合を見ているだけではなかなか気づく事が難しいものだが、可視化する事によって明確に確認する事が出来た。


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