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エッセンシャルワーカーの賃上げ

岸田首相、選挙も終わって独自色を出しつつあるね。

介護士や保育士の月給を5千円から1万円ていど引き上げる方針らしい。介護報酬などを単純に上げても事業主のふところに入るだけなので、なんらかの手立てが必要なのだがどうするつもりなのだろうか。なにかうまいてがあると良いのだが。

ところで以前に低賃金カルテルについて書いたことがある。なぜエッセンシャルな労働ほど低賃金に維持されなければいけないかだ。

この点は、上掲のニュース記事でも指摘されているとおりである。

岸田首相は分配重視の政策を進める姿勢を打ち出しており、介護職らの処遇改善を民間企業の賃上げの機運醸成につなげるとともに、非正規の女性が多く働く医療・福祉分野の処遇改善を図り、人手不足の解消や格差是正につなげる狙いもある。

相当数の労働者がいると思われる介護職の賃金上昇は、彼らの消費が急増すること、単純なアナウンス効果などによって全般的な賃金上昇につながる可能性がある。

それはそれでけっこうなことだが、全般的な賃金上昇はインフレを招く。あるいは他業種の賃金が上昇すれば、せっかく上がった介護職の賃金は魅力的なものではなくなる。これに負けじと再び介護職の賃金を上げるととめどないインフレに突入するだろう。

果てしないインフレになって困るのは誰か?実物的リソースをもたない金利生活者である。ケインズが安楽死に導こうとした人々だ。ケインズが気づいていたかどうか知らないが、金利生活者には年金生活者も含まれる。というかケインズの時代には年金生活者は一般的じゃなかったのかも。

このようなインフレであるとか、エッセンシャルでない労働への移動を防ぐには需要を引き締めるしかない。社会保険料や消費税の引き上げだ。特に社会保険料はやばい。雇用主からみると、賃金の30%を問答無用で徴収されるのである。なるべく人を雇いたくないなあと思うだろう。そしてあぶれた労働者はどうなるか、わかるよね。

結局どこまでいっても労働者と金利生活者のwell-beingは対立するほかないのだ。もちろん俗流MMT論者が言うような貨幣バラマキはなにも解決しない。


まあインフレといっても消費者物価が単純に上がっていくようなインフレはもうおこらないのかもしれないな。局所的に価格が高騰することはあっても。木材価格が急騰しても家賃などにはなかなか反映されないという現象はすでにおこっている。

こういう物価や物価指数の歪み、賃金、金利との関係性はかつて考えていた以上に複雑で思考停止してしまっているのだが、まあそのうちゆっくり考えようと思っている。


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