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森博嗣『お金の減らし方』読んだ

今月の意識高い一冊だ。

小説家森博嗣のエッセー、意識がたいへん高まるとの評判を聞いて読んでみた。

なお著者は小説が売れすぎてお金がなかなか減らないみたいなので、タイトルに偽りありだ。

本当に欲しい物にお金を使いなさい、承認欲求はダメ、自己満足が代示、お金を使わないと満足できないわけではない、などなど、わりと普通のことが書いてあった。

普通のことでも説得力があるのは、著者の人生とからめて描かれるからである。

もともと工学部の教員で研究が大好きだったらしい。当然薄給なのだけど、研究が楽しかったから満足だったと。

しかし助教授にまで出世すると、研究よりも事務的なこと、政治的な仕事が増えてくる。このへんのトレードオフについては『喜嶋先生の静かな世界』で語られている。

研究で満足しているうちはよかったが、満足できなくなると、国立大学の教員の薄給をコスパが悪く感じだしたとのことだ。

そして模型とか鉄道とかを作って家で走らせたいという欲求を実現したくなり、バイト感覚で小説を書いたらヒットしてしまい、そして大学も辞めて現在に至るというわけである。

小説で稼いだお金は、模型の類とそれを収納するための広い家のために使ったそうだ。すごいなあ。

さらには飛行機の模型にも沼っていたようで、それがきっかけで、出版社に依頼されて渋々書いたのがスカイ・クロラシリーズらしい。

スカイ・クロラは押井守が映画化している。押井ファンからたいへん評判が悪いが、原作者としてはとても嬉しい出来栄えだったようだ。

それについては文庫版のあとがきに書いてあった気がする。


原作と映画化、テレビドラマ化について最近さわがしいから、なにか書いておこうか。

問題の作品については、TV版はもちろん、原作の漫画もみていない。だから、こちらのブログに書いてあることを参考にしている。

タイトルからわかるように、このブログによれば、漫画は登場人物の自立を、テレビは登場人物たちの解放を描いたものではなかったかと。
そして自立と解放は、重なる部分もあろうが、異なるものである。大衆受けするのは解放のほうだ。自立は字面のごとく、自らの足で立つことであるから、ラクではないし、大衆受けしにくい、、、
この構造は本邦の無責任な衆生と重なるのではないかと。。。

ということらしい。ありそうな話だと思う。

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労働者の解放を新反動主義、左派加速主義に則って論じる。その過程で生命至上主義、生権力、過剰医療を批判することになるだろう。

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