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情況2022年春号お買い上げ

由緒正しい左翼雑誌『情況』を約20年ぶりに購入した。

もちろん我らが山内雁林氏が寄稿しているからである。

特集の1つ目はキャンセルカルチャーである。由緒正しい左派にはキャンセルカルチャーに眉をひそめる人も多く、情況がこういう特集を組むのは自然なことと思われる。

面白かったのは笠井潔氏のインタビュー。『テロルの現象学』の著者だけあって迫力がある。

しかし、責任を認めて謝罪をしている人間を、それでもまだ名前を挙げて叩き続けることが何を意味するのか、それについて無自覚な批判が多すぎるように思います。これはおかしいんじゃないのか。敵を抹殺することもやむを得ない状況があり得ることについて考えてきた人間からすると、そこの甘さがとても気になる。微温的に、常に正義の側に身を置いていたいと思って、そのことを疑おうともしない安直な精神の連中こそ、ゴツンとやってわからせた方がいいんじゃないか(笑)。

というような感じで。

さらにマルコムXや小山田圭吾問題に関連して、歴史意識の希薄さを指摘する。

次に山内雁林氏の論考。キャンセルカルチャーの流れ、問題点をわかりやすくまとめたもの。小山田圭吾らの五輪にまつわるキャンセルと、呉座勇一氏のそれとの対比はなかなか興味深かった。


2つ目の特集は、プーチンの戦争を止めろ、である。非常に左派らしい。まあそのようなことは関係なく、勉強になった。特にチェチェン紛争については通り一遍のことしか知らなかったので、読んでよかった。


しかし一番おもしろかったのは3つ目の特集、実話情況『仁義なき戦い』50年、であった。美能幸三のインタビュー、飯干晃一の原作についての論考など読み応えがあった。

どうでもいいことだが、仁義なき戦いシリーズ撮影中に警察から嫌がらせを受けた東映社長岡田茂が頭にきて、傑作『県警対組織暴力』を製作したのは知らなかった。

もうこういう作品は撮れないよね。


というわけで20年ぶりの『情況』おもしろかったです。

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