新庄耕『狭小住宅』読んだ
都心で戸建てを買うことにまつわる小説である。面白かった。
不動産営業の主人公がパワハラ上司にしばかれつつ、自由が丘とかあの辺に戸建てを購入するにまつわるあれこれを体験するというストーリーなのであった。
都心の良い場所だと普通の勤め人なら、それが大手商社であれなんであれ、狭小住宅しか買えない。それを当然のこととして受け入れられる人も、受け入れられない人もいる。腕のいい営業マンなら受け入れさせることもできなくはない。
本作に複雑な趣を与えているのは、主人公が不動産業に対して蔑む感情を持っていることである。その一方で周囲から低く見られることへの反発もある。
このように単純ではない通奏低音があるから、突然彼女ができるというご都合主義な展開も許せてしまう。その女性との関わりにおいて重要なのは、馴れ初めなんかではなく、主人公の不動産業へのアンビエントな感情を反映していることだからだ。
しかし個人的に刺さったのは、売りたいならまず路地を覚えるみたいな、当たり前のことをちゃんとやるってことである。どんな仕事でもそれが大事だよね、、、外科医ならまず解剖を覚えるみたいなものだ。
などということに想いを馳せながら読み終えたのであった。
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