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土岐先生ワロタ(外科医そら少なくなるよ)

ここ数日、医師らのSNSでこんな日本醫事新報社の記事が話題である。外科医減少を憂うみたいな話だ。

1年半も前のものがなんで今さらとも思うが、可燃性の高い内容である。

ちょっと引用してみようか。

昭和の学生は異性目当てに海やスキーに出かけ、彼女を乗せてドライブするのが夢だった。今の学生は合コンもしないらしい。一体、何のために辛い受験勉強を戦い抜いたのか?雄は雌を追い求めるという生物のセントラルドグマは崩壊するのだろうか?手術は狩猟や性行動に酷似しており、目的のために五感六感のすべてを駆使し、得られる快楽は無限のものである。これでは外科医が減るはずである。

(太字は引用者)

外科医の仕事は(色々な意味で)男性的なのであり、社会が草食化しているのだから外科医が減るのは当然だという理屈である。ジェンダー構築主義の人からめっちゃ怒られそうである。

この記事を書いたのは土岐祐一郎大阪大学教授である。

この記事でも取り上げたが、わりと本音ポロリしちゃう傾向があるんだろうか。

それともネタでふざけたことを書いているだけなのだろうか。

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一番手前の額の広いおじさんが土岐先生である。

土岐先生がふざけているかどうかはともかく、現実として外科医のほとんどが男性なのは事実である。そもそもこんな怒られそうなノリだから女性が寄り付かないのではないか、というお叱りも当然あるだろう。

そういうことについては以前に長編の記事にしたので繰り返さない。

てゆうか、これもう2年前なのか。ということは上掲の日本醫事新報社のアレはこれより少し後ということになるな。まだ入試における女性差別問題が燃えていた時期にあんなん書くって土岐先生は確信犯かもね。

まあどっちでもええけど。

そんなことよりも、同記事で個人的に気になったのは別の箇所である。

私はこの10年間、教室の人事異動を行ってきたが、どうも労働環境やお金が本質ではないような気がする。彼らは暇な病院に行け、というとむくれるし、給料が高いよ、といってもさほど嬉しそうではない。勿論、努力の甲斐あり、どの病院でも過重労働は減っているが、それでも人気があるのは手術が多く忙しい病院である。

(太字は引用者)

外科医が足りないというのに、大阪北部一帯を支配する阪大の関連病院に暇な病院があるのはどうしたことか?

答えは簡単。日本では手術件数に対して外科医の数が多すぎるのである。暇というのは文字通り暇なのではなくて、執刀数が少ないという意味である。助手は嫌というほどやらされる

執刀できなければ給料が高くてもむくれてしまうのが、外科医というものである。

執刀医が足りているのに外科医が足りていないというのは矛盾しているようだが、そうでもない。一番マンパワーがいるのは、休日夜間も手術できる体制を維持することなのだ。24時間365日つねに二人以上の外科医を緊急手術に備えて待機させておくのは半端なことではないのだ。そしてこれが女性にとって敷居が高くなる原因のひとつでもあるが、怒られそうなことは無料エリアに書くべきではないのでやめとこ。

緊急手術要員として確保された外科医どもは、緊急手術以外の、彼らが一番やりたいはずの癌の手術の執刀にはなかなかありつけない。助手ばっかりさせられる。それでも忙しい施設(つまり症例数のめちゃ多い病院)にいけばおこぼれに与れるチャンスも増えるというわけだ。

だから、暇な病院よりも、たとえ給料が悪くても忙しい病院を喜ぶのである。

こういう問題を解決するには手術する病院を集約化していくしかないのだが、まあ近くで手術を受けたいというニーズも確実にあるわけなので難しいとこですな。

個人的には、やりたいやりたい、なんで俺にやらせないんだと思ってた時期もあったけど、いつの間にかやらざるをえない立場になってて、今はそんな時期も過ぎてやらせないといけない立場になっている。なるべく若い人のやりたがる衝動を邪魔しないように指導していこうと思うのであった。

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