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ビル・ミッチェルがやって来た その2

昨日11月4日、京都市国際交流会館にて薔薇マークキャンペーン主催でビル・ミッチェル教授のセミナーが行われ、またしても聴講してきた。

今日は松尾匡教授と朴勝俊教授よりいくつか質問が事前に提出され、ミッチェル教授がMMTのアウトラインを話しつつ、質問に答えていくというスタイルであった。ただし通訳を介してすべての質問に詳細に答えるのは不可能なので、仔細は順次ブログにアップしていくとのことでした。誰かがきっと翻訳してくれることでしょう。

まず一昨日と同じくMMTの歴史をさらっと述べられたあと、金融政策の非効率性、就労保証プログラムとベーシックインカムの対比などについて話された。

自分としてはその次の財政制約についての話が面白かった。日本やオーストラリアのような主権通貨を発行する政府は基本的に貨幣的な制約はないただし完全雇用のときは実物的な制約はある。これは一昨日の記事で書いた、税は貨幣的な意味では財源ではないが、実部的な意味では財源であるとほぼ同じこと。

一方、ユーロ圏のような主権通貨をもたない国の政府は、常に貨幣的な制約がある。さらに完全雇用のときは実物的な制約もあります。主権通貨か否かでこうした違いがあるのに、主流派経済学はそこを区別しないので、完全雇用のときは貨幣的な制約と実物的な制約が両方あるということになるし、非完全雇用のときは貨幣的な制約が常にあるということになる。だからMMTが適用できるような主権通貨国については主流派経済学は常に間違え続けることになる。

そして主権通貨をもつ国では実物的な制約に突き当たるときにインフレリスクが顕在化する。ちなみにジンバブエは実物的な制約に勝手に突進していったのである。アフリカで最も生産的だった白人農家から農地を取り上げて、農業のスキルなどもたない黒人の兵隊に与えてしまったからである。ちなみにインフレ期のジンバブエは財政黒字だった、とミッチェル先生が言ったところでどよめいた。

ジンバブエ

出典は世界経済のネタ帳である。インフレが本当に酷かった2005年から2008年のうちプライマリーバランスがプラスだった年が2回あるってとこかな。赤字の年もあるが、日本と比べるとまあかわいいものである。

松尾先生の質問のうち、「雇用保証プログラムは、景気がよくなると自動縮小することがその長所とされています。しかし、景気が良くなったら縮小しても差し支えない事業とはどんなものでしょうか?そのような、市民生活にあまり影響のない事業で、景気の自動調整が可能でしょうか?」は非常に良いなと思った。

ミッチェル先生曰く、政府の作る雇用のプールは2つの成分に分けられる。景気循環に関わらず安定的で継続的な雇用と(コア成分)、民間需要の増減により変動する一時的成分。一時的成分の変動はそれほど大きくなくて25%ほどの幅と見積もられている。2008年オーストラリアで地域で必要とされる仕事でコア成分のものと、一時的成分のものをリストアップしたとのこと。300ページのPDFでちょっと怯んでしまったが、近いうちに目を通そうと思う。講演では、失業しているミュージシャンに音楽の先生をさせればいいし、失業しているサーファーにはライフセービングをさせたらいいとおっしゃっていた。え?そんなんでいいのって少し思ってしまった。

あとはグリーン・ニューディールについての朴先生の質問について、グリーン・ニューディールという言葉は好きではないということだった。FDRのニューディールは景気の呼び水の要素が大きかったが、環境問題は継続して取り組むべきことだと。そしてグリーンテックへの移行で落ちこぼれる人達への配慮も必要だということで、公正な移行(Just Transition)と呼んでおられた。

とまあこんな感じで3時間はあっという間に過ぎてしまった。またこういう機会があれば参加したいし、それまでに英語のリスニングを鍛えておかねばならないと思ったのである。

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