Modern Monetary Theoryと私

 Modern Monetary Theory(MMT)がこのところ話題だ。2016年米大統領選挙で民主党のバーニー・サンダースがMMT論者をブレインに迎えたころから、この異端の理論は米国で議論の遡上に登るようになった。以来、連邦債務上限問題などと絡んで徐々に存在感をましてきた。というか無視できない存在であり多くの主流派経済学者が批判せざるをえない情況だ。

 日本のごく一部で話題になりだしたのは2013年ころと記憶している。僕がMMTを知ったのもそのころだったが、当時は日本語の解説書がなく(今もないけど)、Wrickyさんという人のYahoo知恵袋Blogをみなで四苦八苦しながら読んでいた。Wrickyさんの文章はなんせ難解だったもので。

 MMTに転向する人が増えたのには理由がある。リーマン・ショック以降、各国の中銀がマネタリーベースを果敢に増やしたのにインフレも財政破綻もなにもおこらなかったからだ。主流派の理屈はなにか間違っているのではないかという懐疑の広がりとともにMMTが脚光を浴びることになったのである。日本でもアベノミクスの成果がいまいちなことに失望した市井のリフレ派のみなさんもどんどん転向してきた。僕もその一人だ。

 まあ脚光といってもたいしたものではないし、特に日本では翻訳がまともに進んでいなかったので異端のまま終わると思われていた。ところが先日の国会でなんと安倍総理や麻生財務相がMMTという単語を口にしたというではないか。おそらく彼らは理論の要諦をまるで理解していないと思われるが、大きな進歩だと思った次第である(ただしMMTの紹介者の多くもWrickyさんなどを除いて正しく理解しているとはいいがたい)。

[東京 4日 ロイター] - 安倍晋三首相は4日午前の参院決算委員会で、日本の財政政策の運営において、MMT(現代金融理論)の論理を実行しているわけではないとの見解を示した。



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