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田野大輔『愛と欲望のナチズム』読んだ

積読解消シリーズ。

9年以上積んでた、、、もはやなんで購入したのかも思い出せない。

そのころ私がなにを考えていたかはともかく、個人の性愛に国家が介入することのおぞましさを確認することは、現代日本においてことさら重要であるように思われる。

本書はナチスの性‐政治についてである。多くの一次資料を用いて面白く解説してくれている。

ナチスの性策の根本は、人種の純血を維持しつつ出産を奨励することであった。

そのために旧来のキリスト教的な禁欲性に反発していた。性に関しては、同性愛の抑圧をのぞけば、わりと進歩的だったのである。

あるいは青年の健全な性欲、ギリシャ彫刻的な裸体美も称揚した。

婚外交渉も正当化された。ヒトラー自身が死の直前まで愛人を妻と認めていなかった。

性欲の称賛は兵士たちを慰撫する意図もあったし、ポルノにも比較的寛容だった。

これらの政策は当然ながら風紀紊乱をももたらした。特に開戦後は、戦争捕虜や外国人労働者が大量に流入し、彼らとドイツ人女性の交流という、血の純血という観点からは好ましからざる事態を招いたのであった。

しかも趨勢的な出生率の低下をわずかに押し戻す効果しかなかったのである。

国家が性=生をコントロールするなどしょせんは絵に描いた餅だったのだ。

以下感想。

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864字

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