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『永寿総合病院看護部が書いた 新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録』読んだ

読みました。

これはダイヤモンド・プリンセス号とは違う意味で地獄だったと思われる。

永寿総合病院は、東京都台東区、墨田区をカバーする、呼吸器疾患に強い総合病院らしい。

昨年3月初めにどうもまずいことになっているらしいと噂になっていたが、そうこうしているうちに新型コロナウイルスの大規模クラスタが発生したということで連日ニュースになってしまっていた。

現在と違って、情報も準備も不十分なまま、この異常に感染力が強いウイルスのクラスタが発生したらどうなるか。想像するだけで胸が痛くなる。

病棟で陽性者が次々発生する中、看護職員が出勤停止を余儀なくされる。そもそも準備しないうちにで新型コロナウイルス陽性者が発生しているのだから、どこが清潔エリアでどこがレッドゾーンなのかもわからない。したがって、徹底的な消毒、人や物の出入りの制限など、過剰な対応をとるしかなくなる。全体像がわからない中での作業はとんでもないストレスだったであろう。

さらに清掃業者の撤退、新卒看護師の採用断念、転院先を確保できないなどどんどん問題が降ってくる。悪いときには悪いことが重なる。

これらを業務のフローや情報共有を見直すなどして乗り切っていくわけだが、あれで良かったのか今でもわからないと感想が付け加えられているのが印象深い。

極めつけは、風評被害、差別などである。中でも今でもたまに聞くのが、子供が保育園への登園を断られるなどである。マスコミの執拗な取材依頼については酷すぎてここには書けない。保育園は、上述の清掃業者と同じで、難しい判断であったと思われ、私は批判する気になれない。彼らとてクラスタを出してしまったら、マスコミなどから厳しい指弾を浴びるからである。

なかなか転院先が見つからなかったことも同様である。転院先だって、誰もがクラスタを出すことを恐れていた時期である。いや今もそうかもしれない。

色々な意味で参考になる一冊であるし、そして、このような本を出版し、誰でも読める形にしてくださったことに感謝しなければならない。貴重な記録である。特に院内で差別があったことなど、非常に書きにくかったと思われるが、それも公にした勇気は称賛されるべきだ。

まだ感想はあるが、続きは先日のこの記事の末尾に付け足した。購入済みの方がごらんいただきたい。


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