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#333 読書論12|69-Sixty Nine-(村上龍)

この小説を初めて読んだのは中学校を卒業する位でした。
このnoteでも何度も紹介している5個上の従兄弟が、「俺の一番好きな小説だから、今こそ読みなさい」と卒業祝いにプレゼントしてくれたんですね。

で、読んで、俺も暫くは一番好きな小説になりました。
やっぱこういう小説は、いつ読むのかが大事だと思ってますが、従兄弟が絶妙なタイミングで紹介してくれました。



69-Sixty-Nine- あらすじ

村上龍の自伝的小説と言われています。
1969年に高校3年生だった主人公・ケンの青春を描いた内容ですが、とにかく面白い。

こんな感じの冒頭で始まりますが、どう考えても面白いです。

一九六九年、この年、東京大学は入試を中止した。
ビートルズはホワイトアルバムとイエローサブマリンとアビーロードを発売し、ローリングストーンズは最高のシングル「ホンキー・トンク・ウイメン」をリリースし、髪の長いヒッピーと呼ばれる人々がいて、愛と平和を訴えていた。
パリではドゴールが退陣した。
ベトナムでは戦争が続いていた。
女子高生はタンポンではなく生理綿を使用していた。

一九六九年はそんな年で、僕は高校の二年から三年に進級した。
九州の西の端の、基地の街の、進学普通高校である。

そんな感じで、主人公ケンの高校生活最後の1年について語る内容なんですが、大きくは「バリケード封鎖」と「フェスティバル」です。
その上で、テーマになるのは当時の時代背景ですね。

そして、当時の時代背景と切り離せないのがは学生運動ですね。
僕は漫画でしかその知識を知りませんが、島耕作や小林よしのりは冷ややかな目で見ており、今作も学生運動に触発されてバリケード封鎖はしたものの、そこに特に思想はなく、「誰もやってないから」「目立つから」「かっこいいと思うから」的なチープな考え、もっと言うと惚れた子がバリケード封鎖にちょっと興味があったからという理由で実施して、本家のような「ベトナム戦争反対」「インターン制度への反対」などは一切ない笑
故に、あっさりバレるんですが、その辺の勢い任せなところがいい。

ちなみに僕は今の価値観だと「親に養ってもらっているのに文句言うなよ」とか、「日本の学生がベトナム戦争に反対して何の意味が・・・」とか思ってしまっていますが、価値観や思想は変遷しますし、僕は流されやすい面もあるので当時に生まれたらバリバリやっていた可能性もあるし笑
もっと言えば、「なんであの時あんな法律通したの?」とLGBT推進法についてのちの世代から突き上げを喰らう可能性は大いにあります。
ただ、いつの時代も問題を起こすのは左巻きの人間ですね泣

話が逸れましたが、そんな感じでケンとその仲間「婆娑羅団」はバリケード封鎖で無期停学を喰らうんですが、それでもフェスティバルの開催を目指します。

フェスティバルはバンド演奏やダンスや自主映画制作の映画鑑賞など、とにかくなんでも楽しいものを集めるというノリでケンが企画し、この実施に向けて色々なトラブルがあるも、無事開催できて大団円。

そして、それぞれの後日談を描いて物語は終了。
最初から最後まで全力で、とにかく面白いです。


69-Sixty-Nine- 魅力

1.フォントの遊び方

とにかく全体的に遊びが効いていて面白いんですが、1ついいのはフォントの遊び方ですね。
PUSHしたいワードのQ数を上げて、強く押し出すスタイル。
僕もboldとかでよくやりますが、それを小説でやるのはかなり前衛的ですよね(漫画だとGTOもやっていて、それも好きでしたが)


2.一人称・口語体による無駄なギミック

上の画像でもありますが、無駄な言い回しがすごい好きです。

「***と言うのは全て嘘で・・・」とか、
「***と言うのは友達に話した作り話で・・・」とか、本編にとって最高にどうでもいいフェイクを入れたりして、それが実に無駄で良い。
この辺のエッセンスは金城一紀の小説とかでも見られて、俺は金城一紀の小説も好きなので、なかなか良いですね。

この手の「無駄が良い」と言うフレーズをなぞると、いつも下記の人造人間17号のセリフが浮かびます。
「そのムダが楽しいんじゃないか」
このセリフめっちゃ好きでしたね。


3.「楽しむ」ということ

この小説で村上龍が主人公のケンを通して伝えたいことは、とにかく「楽しむ」と言うことで、読者には「楽しめ」と言いたいのでしょう。
ケンはバンドのドラマーをやったり、バリケード封鎖をやったり、フェスティバルを主催したり、そしてお気に入りの天使と恋をしたりと、かなり充実したハイスクールライフを送る、今でいうリア中なんですけど、それだけの努力だったり、行動をしているので、その結果が楽しい高校生活を送れたということですね。

なので、楽しみたいなら行動しろということをこの小説は教えてくれます。


69-Sixty-Nine- メディア展開

村上龍がずっと映画化を断っていたみたいですが、2004年にクドカン監督で実写化します。僕は見てないんですけど、妻夫木&安藤政信主演でなかなか面白そうですね。


このタイミングか忘れましたけど、ヤンジャンで漫画も連載してましたね。
あの人の書いてた短編の「パンティストッキングみたいな空」が面白かったですね。


まとめ

久しぶりに読みましたが、1時間くらいで読めるし、何より読んでいてワクワクする。

太田のこのコメントもすごくいいですね。

この小説を読んでいるとあの時のどうしょうもなく何かやりたいというしょうどうがまざまざと蘇ってくる。それも物語の力だろう。

是非、読んだことのない方はチェックしてみてください!

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