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#638 蹴球論58|2005年 高校サッカー選手権 〜セクシーフットボール旋風〜

これまで時系列バラバラに、サッカー界の冬の風物詩である高校サッカー選手権について紹介してきました。

僕の記憶にある選手権は、川口がいた93年度、森崎無双の94年度、柳沢がいた95年度、俊さんがいた96年度、本山と中田浩がいた雪の決勝97年度、宮原がいた98年度、市船が無失点優勝した99年度、大久保無双の00年、徳永がいた01年、小川佳純の02年、平山無双の03年、岩下がいた04年…と覚えていますが、その中でもセクシーフットボールの05年度はかなり強烈に、センセーショナルに自分の中で強く印象に残っています。


第84回全国高校サッカー選手権大会

イメージキャラクターは大久保。
選手権優勝&得点王はそういないので、起用されるべくしての起用です。

そんな2005年大会は、年代で言うと1987年4月2日生まれ以降の学生が対象となる、僕から見て「4つ下」の世代の最強を決める大会です。

この世代は、後に2007年のワールドユースカナダ大会の主力となるメンバーが多いのですが、そのチームの主力だったのは柏木槙野梅崎安田理、マイク・ハーフナー etc…と、クラブチーム出身が中心となっており、この辺から選手権とユースの比率が変わってきた感じがしています。

選手権出場で注目を集めていたのは流通経済大付属のGKで世代No.1キーパーと呼ばれていた林彰洋、滝川第二のエースでセレッソ大阪の入団が決まっていたデカモリシこと森島康仁、その辺が注目されていた気がします。
(この時期は注目されてなかったですが、後に川崎のエースとなる小林悠も出場していましたね)

チーム単位では、1999~20003年の5年間続いていた「国見」「市船」の2強時代がようやく終わり、04年大会は鹿実が優勝していたので、この2005年大会は群雄割拠、どこが勝ってもおかしくなかった下馬評だった記憶がありましたが、ディフェンディングチャンピオンである鹿児島実業、夏のIHを制した小澤率いる青森山田などが注目されていた気がします。

その中で異彩を放ち、ダークホースとしてスイスイ上がってきたのがセクシーフットボールを信条とする野洲高校でした。


野洲高校とは?

滋賀県の野洲高校が快進撃を続けていたこの年・・・
僕は滋賀の大学に通っており、もっと言うとバイト先の1個下のクソ仲良かった後輩が野洲高校サッカー部出身でした(この後輩の代も選手権出場)

なのでそのOBである後輩が「今年の野洲はヤバいっすよ」と、大会前からかなり熱く豪語していたので、「お前は何も分かってないな!選手権優勝するってのは、川高とか、掛高とか、本条高校とか、そういうレベルの高校じゃないとできないんだって!」と一蹴したものでしたが・・・
とにかく本当に強く、あれよ、あれよと勝ち上がり、決勝に進出。
かなり僕等も熱く盛り上がってました。


セクシーフットボールとは?

そんな野洲高校のサッカーは「セクシーフットボール」と呼ばれ、軽くムーブメントが起きていました。
ドリブルを使いまくり、横パスや意表を突いたパスを使いまくり、ヒールなども使いまくるブラジリアンスタイル。
この年にバロンドールを受賞したロナウジーニョ・ガウショのような相手を欺くトリックプレーは非常に見ていて面白かったですね。

そのセクシーフットボールの司令塔であったトップ下の平原の正確なスルーパスに、両サイドハーフの楠神がテクニックで翻弄し、最後はエースの青木が決めるというスタイルで、そして更にはスーパーサブの瀧川というカードもあり、とにかく見ていてワクワクするサッカーでした。

野洲の山本監督はサッカー経験がないながらも柔軟な考えを持ち、ただのヤンキー高校だった野洲高校を選手権優勝校にまで育て上げた功績は称賛されるべきですし、この野洲スタイルも面白かったですね。


決勝戦|野洲 vs 鹿実

この決勝戦は、選手権の歴史においても有数の名勝負であり、後世に語り継がれるベストバウトだったと思っています。

上記の通りのセクシーフットボールで、出場2回目に関わらず決勝まで勝ち上がった野洲と、前年度の覇者でフィジカル&パワーで勝ち上がった鹿児島実業はまさに対照的なチームであり、言うならば柔と剛
完全にストロングポイントが違うチーム通しでの決勝です。

先制は野洲でした。
FKからDFの荒堀2年生がヘッドで決めて野洲がリードするも、すんなり逃げ切らせてくれないのが鹿実ですね。後半したたかに追いついて1-1のドローで延長戦突入。

延長になるとフィジカルが強く、スタミナがある鹿実が有利とオフサイド読者であった我々はどうしても思ってしまいましたが、ここでドラマが待っていたのです。

選手権決勝で最も美しいゴールとも思いますが、自陣でボールかッとして左から右に豪快にサイドチェンジがあり、右サイドでボールを受けた乾は中にドリブルして惹きつけてヒールで平原にパス。
平原は右サイドにスルーパスを送り、右からのクロスを最後にスーパーサブの瀧川!
美しすぎる、セクシーすぎるゴールでした。

そしてその1点を守り切り、2-1で試合終了。
野洲高校の初優勝に、僕等もメチャクチャテンションあがりましたね。


最後に

その1年後の選手権で、最高学年になった乾は10番を背負い検討しますが、選手権では3回戦で敗退。
それ以降はプロで酸いも甘いも経験します。


そして何と言っても2018年ワールドカップですね。
10数年の時を超えて、左サイドで14番をつけて躍動するスタイル。
野洲高校でも、日本代表でも変わらないスタイルは最高に盛り上がりましたね!


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