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赤らんたんに灯を入れて最終夜

今、貴方には逢いたい人がいますか?

ある時間にある事をすれば今はもう
逢いたくても逢えない貴方の大切だった
人と話す事が1時間だけ出来る不思議な
キャンプ場がある。

" 赤らんたんキャンプ場 "

今宵、最終夜のお話は………

「おばあちゃん、あの現象が起きている
事であちこちから連絡がくるけど、実際の
ところ、あの不思議な現象はこの土地に
関係しているの?それとも私達、明神家の
巫女体質のせい?」
結衣は長い間疑問に思っていたある種の
" 謎 " とも言えるこのキャンプ場に存在して
いる一区画、

" 赤らんたんサイト "

の事について希衣ばあちゃんに改めて
尋ねてみた。

「結衣、あそこの場所には何の秘密もなく、
何の変哲もない普通の土地さ。
ただ、1時間だけとはいえ久しぶりに逢って
話をするんだよ。人に聞かれたくない事も
あるだろうよ。だからあのサイトは少し
離してあるんだよ」
意外な答えに戸惑う結衣だった。
「えっ、て事はやっぱり私達の……」
「だけじゃないよ。あの " 赤ランタン " も
重要な、え〜何だっけ、現代風に言うと?」
「ア…イテム?」
「そう、それ。アイテム!元々は私の母親が
イギリスの外交官を占った事があってな。
その占いが当たったというので御礼に
この部屋の中の気に入った物を持っていって
良いと言われたので、あのランタンにした
そうなんだよ。母親は部屋に入った時から
あのランタンに " 気 " を感じていたそうな」

いつの時代の物なのかは分かる術もないが、
相当な古さを感じさせる事は間違いない。
イギリス大使館でも古くからそのランタンが
置いてあったという。

「そんな理由でさっきの結衣の答えは半分
だけ正解。決して私達だけの力じゃなく、
あの " 赤ランタン " の持つ力も大きいのよ」
確かに明神家の女性に宿る巫女体質は本物で
かなり強烈な力があるが、故人の魂を現世に
黄泉帰らせるほどの力はない。
やはりイギリスに古くからあったとされる
赤いランタンの力もプラスされての事象なの
だろう。

「ねぇおばあちゃん。このキャンプ場って
明神家の土地なんでしょ?だよね?」
「それがどうかしたのかい?
おや、その顔は何かを言いたそうだねぇ」
希衣にはすでに答えが分かってはいた。
「うん。ここで何組かの人達を見てるうちに
思ったの。もう逢う事の出来ない大切な人に
また逢いたいって思う気持ちは単に懐かしさ
だけじゃなく、遺された人が前を向く為の、
上を向いて歩いていく為の決意だったり
踏ん切りだったりするんじゃないかしら。
どちら側の方にも思いだけが一方的に
残るのは良くないんだろうなぁって」
「そうじゃな」
「それでね、そんな人達って日本中にいると
思うんだ。だから私達が行って叶えてあげる
って言ったらおこがましいけど…どう?」
「まぁ私達とランタンの力さえあればね。
しかし霊力から3組同時が限界じゃぞ!」
「うん、私頑張る!私達を待ってくれている
人達がいる所へ…行こう、おばあちゃん!」
「しょうがないねぇ。結衣も私に似て頑固な
ところがあるからねぇ。よし、行こう結衣」

こうして二人は旅立つ事に決めました。
二人と一つのランタンの不思議な旅です。
悲しいですが " 赤らんたんキャンプ場 " は
普通のキャンプ場となってしまいました。
しかし今までと変わらずの人気です。

ある時間にある事をすれば今はもう
逢いたくても逢えない貴方の大切だった人と
話す事が出来る不思議なランタンを持って
明日には貴方の街に二人がやって来るのかも
しれませんね。

今、貴方には逢いたい人がいますか?

【完】

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