0901 『百年と一日』と『怪談びたり』

9月になった。
2020になった実感があまりないまま新年を迎えて、あれよあれよと春が来て夏が始まってもうなんとなく秋。梅雨明けして金沢に行ったのが8月1日で、起きてすぐ秋を感じたのが今日、9月1日といい感じで綺麗に季節が巡ってる感じがする。9月。何回繰り返してみても実感がわかなくて、仕事でスケジュールを切ったり引いたりするたびに違和感を覚える。

飲食店が22時までしかやってない関係で、健やかな時間に集まって健やかな時間に解散するような遊び方が増えた。これはこれでいいなあと思いつつ、やっぱりちょっとだけ物足りなさを感じる。緊張がほぐれたとはいえ意識も人によってまちまちで、外に出るにしてもうっすい緊張感が張り詰めていて楽しさとか外に出る面白さが20%offになってるなと思う。映画館は両サイド空いた状態で見られるからずっとこれでええなと思う。

最近もあまり眠れないので、本を読む。ゲームも飽きたし映画は疲れるしで、本か漫画を寝る前に2,3時間読む日々。最近読んで面白かったのは、柴崎友香の『百年と一日』と、深津さくら『怪談びたり』。

柴崎友香は大好きな作家で「かわうそ堀怪談見習い」をきっかけにほぼ全作品追ってる作家なんやけど、”ここにいない誰か””どこかで起こったかもしれないなにかの出来事”を描く天才やなと思う。だいたいかなり日常的な話なんやけど、そのつぶさなやりとりの中に、人が普通に生きていくことがいかにドラマチックというか、ロマンチックなことか、っていうのをあらためて感じさせてくれる。


深津さくらは、実は大学の後輩で、喋ったことはないけどFBで見かけて可愛いなと思って友達申請した覚えがある(しょうもな)。それが卒業から数年立って、怪談師になったとは聞いていたけど本まで出てるとは思わなかった。“怪談と結婚した女”として色々なイベントに出たりしていて、今は実際に結婚もしてるらしかった(それはどうでもいいんやけど)。
友達に、飲み屋で出会った人に、知り合った人に“なにか不思議なことに出会ったことないですか”と聞いて採集した怪談を集めた本。これがめちゃくちゃ面白くて、この1年で読んだ中で一番おもしろい本やったかもしれん。こういうのが読みたかった!みたいな怪談がたくさんあった。


柴崎友香の小説と、深津さくらの怪談。なのにこの二冊はなんとなく通底してる部分があって、それは「ここにいない誰かを想像する」ことやったり「自分の知らない理で動いてる世界がある」ことやったりするのかな。かたや創作、かたや編集された語り、なんやけどめっちゃ近いところで呼応しあってるように感じる。誰かが体験した不思議な出来事、説明のしようのないつぶさな物語、それらはもちろん小説であって怪談であって、誰かの人生の一部である、みたいなところが強く描かれてる。 あと二冊とも関西弁やから余計近く感じるのもあるんやろうけど。

こうやって平行して数冊読んでると全く別の本どうしが不思議な線で結ばれる瞬間があって、気のせいかもしれんけど、これは読書の楽しみのひとつやなと思う。山のような積ん読もあるけど、臆せずどんどん気になったものは買って手元においておきたい。

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