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カレー狂の店主があり得ん熱量で語る"ダルバートの魅力"

ダルバートとは、ネパールのポピュラーな食事スタイルで、ダル(豆のスープ状カリー)とバート(ライス)を基調とし、そこに季節の野菜の漬物、炒め物、煮物などの副菜を混ぜ合わせてお召し上がりいただく料理です。 

  
当店では、初めてのお客様には“ダルバート”のご注文を強くお勧めしています。  

その理由は、当店の各種カリーが全てダルバート付属の副菜と一緒に味わっていただく前提で作られているからです。  

当店には“合いがけカリー”というメニューもございますが、こちらはあくまで補助的な役割のメニューです。
ですから、当店の味を初めてお識りになる方には、ひと先ず“ダルバート”をお試しいただきたいのです。

ダルバートのお召し上がり方は様々ございますが、ここでは店主お気に入りのお召し上がり方について、熱量を込めてご説明致したいと思います。  

ダルバートが到着したら、その色合いや配膳のデザインを目で愉しんだのち、カリーやダルの入った小さな容器(カトリといいます)を全てプレートの外に出します。

そして、先ずはそれぞれのカリー、ダルの味をひと匙ずつ検分致します。ライスとともに味わうも可です。

続いて、副菜をざっくりと見渡し、味わいが想像できない目新しいものがあれば、少量ずつ味を確かめていきます。ここまでは確認の作業です。  

それぞれのカリーや副菜たちは、ライスや他の食材との出会いを切望しています。

様々な取り合わせでライスとともにカリーとダル、副菜を複数種混ぜ合わせてみて下さい。単体でお召し上がりいただく際とは全く異なった、新たな味わいがお愉しみいただけるはずです。

ここまでの工程で消費して良いライスの量は、全量の半分までです。  

**そして、ここからが本題となります。  **

残った全てのカリー、ダル、副菜を全てライスに混ぜ込んで、“混ぜごはん的何か”を作って下さい。荒く混ぜても、緻密に混ぜても、各自お好きなようになさって下さい。

ダルやカリーが半量以上残っている場合、シャバシャバした混ざり具合になります。半量以上残っていない場合は、ドライな混ぜごはん的何かになります。お好みの仕上がりに合わせて、冒頭の検分作業をおこなって下さい。

全てが混ざった状態でお召し上がりいただくと、ひと匙ごとに異なる食感や味が重なり合って登場します。この、渾然一体となった味わいこそが、ダルバートの真打とでも申しますか、兎にも角にも、この作業をせずしては「ダルバートを経験した」とは言えないのです。
失礼ながらこの過程を経ていない方、貴方は未だ"ダルバート童貞"と言っても過言ではない。

全ての要素を混ぜ込んだ先に広がる宇宙に恐れを棄てて身を投じ、没頭していただければ、我々は“共通の言語“を得たも同然です。

つまり、当店で提供したいのは、それぞれの食材の食感や塩気、甘み、酸味、辛さなど各要素が渾然一体となったこの"宇宙"を作り上げ味わうという、体験なのです。  

カレーを混ぜて食べることは行儀が悪い、と教わった方もいらっしゃるかもしれません。では、ここでひとつ、カレーを混ぜることの意味合いについて考えてみましょう。
所謂"欧風カレー"や、一般家庭で食べられている"ルウカレー"の場合、混ぜ合わせる要素はライスとカレーのみです。混ぜ合わせることによって、カレーの味がライスによく絡み、喉の通りも良くなると言えるかもしれません。然しながら、見てくれの悪さから、この行為は卑しいものとされてしまうことが少なくありません。

当店のダルバートの場合、混ぜ合わせる要素は2種のカリーの異なる旨みやスパイス構成、ダルの優しい味わい、10種の副菜の甘みや酸味、食感など、多岐にわたります。  

これらをお召し上がりの直前に混ぜることで、全ての要素が緩やかな繋がりを作りながらも、口の中でそれぞれの主張をする訳です。ひとつの要素として結合させる訳でないのだから、味が完全に混ざってしまって、よく分からないという状態にはなりません。あくまで、ひと匙という同じ座標軸にありながら、それぞれの数式が交わったり平行であったりするだけなのです。

"混ぜる"という行為によって、これほど味わいが膨らむのですから、日本的な「お行儀」をここでは棄てて下さい。いくら周囲が眉を顰めようと、負けられない闘いが、ここにはあります。

当店にご来店の際は、是非とも傍にこの記事を携えながら、ご自身なりの宇宙に没入していただければ、この上なく幸せに存じます。  


テイクアウトでもダルバートが体験できます!



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