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防災の新資格「緊急時避難誘導責任者(誘導員)」を通じて、日本全国の人的な防災インフラ構築を目指す。

2022年4月1日、不特定多数の人々が災害・人災により危機的状況にある際に、正しい判断基準をもってして民間人・施設利用者の避難をサポートする『緊急時避難誘導責任者(誘導員)』資格(略称3E:Emergency Evacuation Expert)が新設されました。BOSAI SYSTEMは、一般社団法人 日本防災教育振興中央会が設立したこの資格を広めていく役割を担います。歴史的に大きな被害を生み出した関東大震災から来年で100年、首都直下地震が必ず発生すると言われて久しいこのタイミングで、なぜ「災害時の避難誘導」の資格が重要になるのか、立ち上げの背景についてBOSAI SYSTEM株式会社代表取締役 新妻 健将にインタビューしました。

発災の瞬間に動けるリーダー人材を育成する

ーまずは『緊急時避難誘導責任者(誘導員)※以下3E』資格の内容について、具体的に教えてください。

3Eとは、災害時における危機的状況下において人々の共助を促し、その現場での避難を円滑にする減災のエキスパートです。発災が起きた時に最も重要なのは、いかに迅速に冷静さを取り戻すかです。周囲の人々を導く為には、災害・防災について学ぶだけでなく、人間行動学や心理学に及んで把握する必要があります。3Eは「防災に詳しい人」ではなく「発災の瞬間に動けるリーダー」であり、現場力を伴った防災のプロフェッショナルを育成するための資格です。

ー資格取得者は具体的にどのような活動を行うのでしょうか。

平時においての役割として、様々な状況下における避難経路の策定や、施設内の避難における講習などが期待されます。有事においては、パニックな状況下で在館者の安全な避難誘導や、負傷者および逃げ遅れた者の確認、非常口の開放や障害物の除去などが期待されます。

資格自体は基本的に個人単位ですが、企業が集団として取得するケースも増えています。我々の想いとしては、職業や年齢を問わず、どんな方にも習得いただきたい知識やスキルだと考えています。

日本の防災教育を底上げしたい

ー今このタイミングで資格を立ち上げられた背景について伺わせてください。

根底にあるのは、日本でもっと防災教育を広めていかなければいけないという危機感です。10年以内に首都直下地震が必ずくると言われて久しいですが、私たちが覚えている防災教育といえば、「災害時は防災頭巾をかぶって机に潜りましょう」というものくらいです。災害の性質上、どうしても接触回数が少なく自分ごとにしづらいため、私たちは

①まず危機意識を持ってもらうこと
②正しい教育で災害時の自助力を高めること
③上記土台のもと、共助を活発にすること

の順番でアプローチしていきたいと考えています。今回の資格は①②を担うものです。

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(参考:BOSAI SYSTEM事業ポートフォリオ)

ー防災士などの既存の資格などもありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

プロフェッショナルとして専門的に対応する範囲が異なります。前提として、防災士の資格は全国のボランティアの方々にも幅広く浸透している、非常に実際に機能している有用な資格だと考えており、自助・共助を機能させるための教育要素として共通する部分もあります。

その上で、大災害が発生した際のプロセスを以下のように仮定すると

発災の瞬間 → 初動対応 → 応急対応 → 復旧 → 復興

3Eは「発災の瞬間→初動対応」に特化した資格です。具体的には、災害が起きた時に自身や周りの方々が生き残る確率を上げることに焦点を当て、既存資格とは異なる独自のナレッジを構築しています。救えるはずの命を守るという目的のもと、日本の防災教育を底上げしていくという意味では、代替・競合関係でなく、他の専門資格と一緒に市場の啓蒙を行っていきたいと考えています。

「人が集まるところ」から導入が進んでいく

ー災害発生の瞬間に役立つ知識ということで、どんな方にも意味があると思うのですが、具体的にはどのような方々、シーンで活用される想定でしょうか。

具体的なイメージとして、法人の場合、人が集まるアミューズメント施設の管理者や警備会社など、災害発生時に多数の人に向けた対応を求められるような業種で導入が進み始めています。野外での被災はその場ごとの対応力が求められるため、平時での学びと訓練がとても重要になります。災害発生時に専門的に動けるリーダーがいることは、来訪者への安心にも繋がります。

また、イベントや大型商業施設など、人口が過密になってしまう場所での被災は事態が悪化しやすく、当事者のその場での判断によって大きく状況が変わります。Withコロナ×大人数×災害では一つの間違いが大きな事故や二次災害に繋がりやすいため、より一層の配慮が求められています。

他にも、普段地域の方々のもとに伺うことの多い生命保険・損害保険の外交員の方から取得したいという意向をいただくことも増えています。顧客との接点が多い保険外交員の方に専門的な知識を持っていただくことは、防災教育の発信の中核を担っていただくことにも繋がり、防災インフラを作っていくという観点でもとてもありがたい取り組みです。

ー個人だけでなく、法人での取得も進んでいるのですね。

はい、個人の方は全国200箇所のCBTテストセンターで、コンピュータを利用して受験をいただくのですが、法人のようにまとまった人数を短時間で取得させたいニーズに応えるために、5名以上で1日で完結する講習会プログラムを用意しております。また、新型コロナ感染症の環境下ということもあり、講習会をWEBで完結させるeラーニング形式のサービスも用意しております。

ー実際に取得された方の声などあれば教えてください。

小売店を複数展開する企業で経営者の方、店長の方が取得された際に、「人命に関わる分野ながら、知らないことばかりで今まで自分は防災についての認識が甘かった」と仰っていただいたのが印象的でした。顧客はもちろん、ご自身含めた社員の方々など、一人でも多くの命を救うことに繋がるお手伝いができればと考えています。

資格取得者30万人、防災の人的インフラを作る

ー最後に今後の展望などについて伺わせてください。

近年、「持続可能性」という考え方がより一層大切になっています。3Eの資格を通じて、災害時の被害を最小限に抑え、救える命を増やすことが第一義というのはもちろんですが、この資格がもたらすのは、まさに企業や個人にとっての持続可能性なのではないかと考えています。

有事に安心安全に対応できる知識やスキルを備えることは、法人にとっては顧客・社員・取引先・近隣住民、個人にとっては家族・隣人・友人知人など、様々なステークホルダーと良い関係を持続的に構築することに、大きな価値をもたらすのではないかと考えています。

中期の目標として、資格取得者30万人を目指しています。日本全国で資格取得者が分散して活動し、防災の人的インフラが築けている状況を目標に、多くの方を巻き込んでいけるよう尽力していきます。今後も「本来救える命を救う」というミッションに向けて一緒に取り組むパートナーを増やしていきたいと考えています。

緊急時避難誘導責任者/誘導員
https://ee-expert.com/

BOSAI SYSTEM株式会社
https://bosai-system.co.jp/

プロフィール
BOSAI SYSTEM株式会社代表取締役 
新妻 健将(にいづま けんすけ)
青山学院大学経営学部卒業後、みずほ証券株式会社本店営業部入社。新規開拓営業、コンサルティング営業に従事。その後、運送会社の起業で独立し、複数の事業立ち上げを経験。2021年4月「救えるはずの命を救う」ことを目的に、BOSAI SYSTEM株式会社設立。代表取締役就任。株式会社EVA取締役。一般社団法人EV100ラストワンマイルを実現する会理事。国連NGO JACE上席研究員

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