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人生で初めてロン毛から坊主にした日 ~断髪式~

僕は高1の三学期までほぼロン毛だった。えりあしは肩までついていた。


会ったことがある人は全員知っているが、現在はアイコンの通りほぼスキンヘッドである。

坊主歴は10年以上で、もはやアイデンティティの一つと言っても過言ではない。

ただ、坊主にする前は、坊主にしたら人生の終わりぐらいに思っていた。


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高1にさかのぼる。

学校一厳しいと言われていたハンドボール同好会で

2年以内に県ベスト8を目指してひたすら練習に明け暮れていた。


高校に入ってからの僕は、中学の時以上に部活も勉強もダメだった。


レギュラー7席のうち先輩と経験者で6名埋まり、残り1席は勉強スポーツともにトップクラスのHが当然のごとく座る。
元々運動ができなかった僕にとっては予想外の展開。

問題は勉強だ。
中学時代は中間をずっと取っていたが、
入学当初から完全に授業についていけず。

280人中260、270番あたりを言ったり来たり。
一番ダメな時は下から5番目の時もあった。

不登校も数人いたから、実質の最下位だっただろう。

欠点を当たり前に取るようになり、
毎度の長期休みで補習を余儀なくされた。

高1の3学期の授業が終わり、通知簿が届く。

相変わらずの欠点だらけ。

英語、数学、理科、技術、家庭。。。全教科のうち半分は欠点だった。


「しゃあないやん。部活の練習めっちゃ厳しくて勉強できる時間ないねん。」

と何度も言いたくなることはあったが、絶対通用しなかった。

なぜなら、同じ部内に毎度学年1位を取るHがいたからだ。

性格も真面目で来年の部長は間違いなくH。

彼がいる以上、部活を理由に勉強ができないと言えなかったのだ。


通知簿が配られた後、担任に職員室に呼ばれる。

内容は春休み中に欠点の人限定のテストがあり、テストに合格にしなかったら留年になるというものだった。

高校で留年した話を聞いたことがなかっただけに、
それぐらいヤバイ成績を取っていたんだと、その日初めて危機感を覚えた。


これはやばい。部活の顧問のR也先生にシバかれるだろう。

冷や冷やした気持ちを持ちつつ、部活に向かう。

その日はR也先生は学期末の対応で忙しく、部活には来なかった。

部活後、R也先生がいる教官室前に部員全員集合するようにと部長からお達しがあった。

部活が終わり着替えを終えて教官室前にてR也先生を待つ。

数分後にR也先生が出てきた。
出会い頭にシバかれることはなかったのでまだ欠点の話の共有がないのか?とほっとした。

今、同好会から部に昇格する話が職員間でかなり前向きに出ているそうだ。
部に正式に昇格すれば、公式大会に出ることができるので、
当初の目標だった県ベスト8到達に向かってスタートラインに立つことができるのである。

部員一同、喜びとともに身が引き締まるのが伝わる。


留年のことで頭がいっぱいで話半分で聞いていた僕に、

R也先生に「ちょっとこっちこい」と静かめに言われる。


ビクッとなった僕は恐る恐る先生の元に近づく。

僕の肩に片腕で抱き寄せつつ、笑いながら耳元で話す。

先生「お前、頭丸めへんのか?」

僕「ぜ、絶対いやっすよw」

急に何を言っているんだとおどける。

すると先生は神妙な面持ちで話し出す。

先生「部に正式に昇格するという話と同時に、お前の留年の可能性の話も出てきてるんや」

あ、知ってたのか。。。 そのまま話を続ける。

先生「これから部で頑張りますっていう中に、留年しそうな奴いるんですってなったら、文武が両立できてへん部活ってどうなん?ってツッコミが入る可能性がある。もしそのせいで部に昇格できませんってなったら、どう責任をとってくれるんや?」

どんどん僕の顔が青ざめる。

先生「かといって生徒やからどうこうできるわけじゃない。ただ、頭を丸めるなりなんなり、お前なりの責任の取り方があるんちゃうか」

僕「・・・・・・・わかりました。。。」

もはや断れなかった。。。


R也先生から僕が坊主にすることを言ってもらい、
最後に気合の正拳突きを腹に一発もらって解散した。


丸めると言ってしまった。。。

留年するかもしれない怖さより、

坊主をすることの恐怖が圧倒的に勝っていた。

坊主は野球部や柔道部がやるもの。

僕には一生無縁のもの。似合わないし、ださいし絶対やりたくない。

坊主にしようものなら、一生周りから笑われ、彼女が一生できないまま生涯を閉じることになるんだ。

考えれば、考えるほど震えが止まらなかった。
明らかに手が痙攣していた。

部員たちは笑いながら大丈夫やろと言ってくれたが、全く耳に入らなかった。

一通りマイナスの妄想をしまくった後に大声で「っしゃー!!!!丸めたらぁあ!!!」と部室内で叫ぶ。

学校を出た足でそのまま理容院に向かった。


理容院は閉店間際だったので客は自分一人だった。

20席以上ある店だったが、客がいないのもあって
店員は少しふてこい(愛想の悪い)おっちゃんが一人だけだった。

おっちゃん「髪型は?」

勇気を振り絞って言葉を出す。

僕「…丸刈りで」

特に驚いた様子はなく、質問を続ける。

おっちゃん「長さはどんぐらい?」

そうか。坊主にも長さはあるのか。

僕「普通ってどれぐらいの長さなんですかね?」

自分で言っときながら坊主の普通ってなんやねんと心の中でツッコむ。

おっちゃん「まあ、、、五枚にしとくか」

言われてもわからなかったが、五枚=1センチということは後で調べてわかった。

※イメージ 出典①


僕「…じゃ、じゃあそれで」

おっちゃん「はいよー」


と言ってバリカンを取りに店の奥に入っていく。


ああ、これで伸ばしてきた髪ともおさらばか。

明日学校でどれだけ笑われるんだろうなあ。

すぐ春休みに入るけど、2年生になってもずっと笑われながら生きていくことになるんだろうなあ。
自分がアホだったばかりに。

と色々回想してる間におっちゃんが戻ってきた。

おっちゃん「どこから剃ろうか」とつぶやいて僕の頭を見回す。



ついにきたか。多分こういう時って右から左にかけて、もしくは左から右にかけて徐々に剃っていくんだろう。
ということは頭頂部に来た時にはセンターマンのようになる。

そんなみすぼらしいところ見たくないから中盤は終始目をつむっておこう。


と頭の中で会話しているうちに

おっちゃんがバリカンをオンにして剃り始める。


僕「え。」

小声で思わずつぶやいた。


おっちゃんはど真ん中から剃りこんでいったのである。


大胆すぎる!なんで中央からなんだ!

僕は心の中であたふたする。

真ん中を剃りこんだ後には、ものの見事な落ち武者ができていた。

※イメージ  出典②


呆気にとられている間に、

おっちゃん「あ、そういえば。。」

とつぶやいて店の奥に入っていく。

理容院には自分一人のみ。


鏡には、落ち武者がいる。敗北感がどんより漂う。


おっちゃんは数分経っても帰ってこない。


なんでだ。

なんで客を落ち武者にしてから忘れ物を思い出す。


せめて剃る前に思い出してくれ。

いや、剃りきった後でもいい。

落ち武者を、1人にしないでくれ。

落ち武者と向き合いたくないんだ。

いやそもそも僕は落ち武者じゃない。

※イメージ 出典③


頼む。

これから頑張っていこうという時に、

なんで負けた恥ずかしさのような感覚を味わわなければならない。


どんどん切ない気持ちになってきた。

これは荒手の洗脳だろうか。

敗北感を味わわせるマインドコントロールか。

一体誰が得するんだ。

坊主にする人は皆この試練を乗り越えてるのか。


あれこれ考えて5分経つ。
ようやくおっちゃんが戻ってきて、何事もなく手を進める。


なんの5分だったんだ。
そう思っていることも彼は露知らず、
全部剃りきった。

シャンプーも合わせて15分程度で済む。

一応ドライヤーを使ったみたいだが、一瞬で乾く。


おっちゃん「はい、お疲れさんでしたー1000円ね」

お金を渡して退店。

退店した瞬間おっちゃんはシャッターを閉めた。

どうやら営業時間が過ぎていたようだ。


終始放心状態だった僕は、どうやって帰ったのか覚えていない。


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次の日。終業式前だったので、午前中だけ学校に行く必要があった。


ああ、クラスの皆からバカにされるんだろうな。。。
これから後ろ指刺されながら生きていくんだなあと億劫な気持ちで教室に入る。

よくつるんでる友達は「急にどうしたww」と案の定わらっていた。

一瞬教室でどよめきがあったような気がしたが、終業式前のドタバタで僕に対する注目に消えた。

終始せわしなく時間が過ぎ、午前の時間が終了。

そのまま部活に向かう。


部室に入ると、同期は笑いながらもバカにする奴はいなかった。

先輩にも「ええやん」と言ってもらう。


何よりも驚きはR也先生だ。

先生「お、いいねええ。スッキリした」


と褒めてくれる。


あれ、バカにしてくる人がほぼいない。

次の日も、また次の日も。

バカにする人はいつになっても現れなかった。


何よりも、シャンプーが楽すぎる。

部活中よく髪の毛が目にちらついて鬱陶しかったのが全くなくなる。

良いことばかりだった。


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こうして10年以上経った今も坊主だ。※坊主というかハゲというかスキンヘッドというか…

今となっては、髪がある自分がもう想像できない。

坊主を、愛してやまないのである。


つづく


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【当noteの発信内容】

当noteは、

占い師からただのフリーターになった何者でもない32歳の男が、

自分史を通じて

自身の人生のミッション(役割)を見つけだすことで、

自分探しの旅を終わらせるまでの軌跡をつづっていく。

人気占い師から、ただのフリーターになった男の話

今後も「気になる」、「応援したい」とほんの数ミリでも思った方は

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出典①:カットスペースKより
出典②:海原はるか 講演の達人 より
出典③:movtewalker 三谷幸喜、『ステキな金縛り』の深津絵里と西田敏行が特別な理由は? より

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